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女神(アイドル)たち舞い歌いて、邪を祓う  作者: 暇崎ルア
第1章 流るる水、歌声とともに

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三河島と水上 除霊終了後

第1章、14話。

除霊後のファンと最推しの話。

「——ほんっとうに、ごめんなさい」


 点滅することなく温かな電気がついた部屋の中、流奈様が深々と頭を垂れる。

 もう壁や天井を叩かれることはない。


「冷静になったら普通に傷害罪とかに問われますよね、これ……」

「いいですよ、全然! ていうか今、めちゃくちゃすっきりしてるんです。くったくたの汗みどろになって帰ってきてから直でシャワー浴びてさっぱりしたときと同じ感じなんですよ!」


 言いたいことはうまく伝わっただろうか? でも本当に言った通りの気分なのだ。


「シャワーはシャワーでも、冷水ですけど……」

「このあとお風呂入れば問題ないです!」


 神棚にブルーシートがかけられた理由はこれだったのだ。幸い濡れたのは私と、少しの範囲のフローリングだけだ。しかし、そんなことはどうでもいい。


「だけどめちゃくちゃ流奈様らしい除霊方法でしたね」

「確かにそうですね~。水を使うのは、実際にあたしにも効いた方法だったので」


 流奈様が朗らかに笑う。安心したのか、いつものゆるい口調に戻っていた。

 良かった、ちゃんといつもの推しだ。


「良かったです、律子さんが元気になられて」

「もう私には何も憑いてませんか?」

「はい、大丈夫です!」


 白い歯を見せた流奈様がウインクしながら、親指を立てる。それはあまりにも尊すぎた。


「三河島さん、アイドルって元々どういう意味か知ってますか?」


 帰りの玄関先、靴を履きながら流奈様が私に聞く。


「えっと、偶像、でしたっけ?」

「そう、神様を崇拝するために作られた像のこと。つまり神。三河島さんにとってのあたしですね」

「そうですね!」

「……あの、ジョークなんですけど」

「流奈様は正真正銘、私の女神様です!」


 地球が太陽の周りを回っていることと同じ、この世の真理だ。


「ありがとうございます、熱意は伝わりました——ならちゃんと生きてください」


 流奈様が正面から私を見据える。力強く、鋭い目で。

 今だけはアイドルとしてではない、一人の人間としての「水上流奈」として話をしているように見えた。


「毎日楽しく生きるために人間は神様を信仰するんです。なのに、神様のために自分の健康を疎かにしてたら本末転倒じゃないですか?」

「……はい、その通りです」

「もっと、自分のこと大切にしてください。ちゃんとご飯食べてます? ほっぺがこけてるように見えるんですけど?」


 反論できない事実を突きつけられて言葉が出ない。明智先輩にも言われた通り、食事の量は減っている。


「ダメですよ、ちゃんと食べないと。不健康な生活をして元気がなくなると、それこそ悪いものが寄ってきやすくなるんですからね」

「……はーい。でも、サプリで栄養は摂ってるんですよ?」

「栄養は食べ物から摂った方がいいですよ~。アイドルとして、ファンの皆さんには美味しいものを一杯食べてもらいたいですし」

「わかりました、毎日三食栄養バランスを考えて食べます! それで長生きして、一生流奈様を推し続けます」

「その意気です!」


 妙な勢いのまま、私と流奈様はハイタッチした。今日は人生で一番最高の日かもしれない。


「——あの、流奈様」

「何ですか?」

「これからも、私、あなたのこと推してていいですか?」

「もちろんですよ」


 流奈様の顔で完璧なスマイルが花開く。


「水の女神様は、この世界とファンのことが大好きなので!」

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