lesson 6
から雨が降る日。
1台のワゴン車が社の地下駐車場に入ってきた。
私は、虎子部長と明葉ちゃんと出迎えに地下の出入口で待っていた。
降りてきたのは、Keys-1 の進藤啓人と安藤マネージャーだ。
「本日は、わざわざ名古屋までお越しいただきまして、誠にありがとうございます。どうぞ、足元、お気をつけて」
部長が招き入れる。
私と明葉ちゃんは頭を下げた。
その後は、明葉ちゃんがスムーズに会議室へと案内してくれた。
会議室ではチームメイトが準備を終わらせ待ち構えていた。なんと、支局長まで足を運んでいた。支局長は来客の2人に挨拶すると、部長の肩を叩いて、にこやかに部屋を出ていった。
"始まるっ!"
一瞬、緊張が走った。
チームメイトもスタンバイOKという顔で、こちらを見てきた。
私は軽く挨拶をすませ、進行を始めた。プレゼンターが前に出ると、啓人がキャップを脱ぎ上体を起こしたのが、目に入った。
部屋が暗くなり、練り直した企画案の説明をしている間、彼は真剣な眼差しで聴いていた。
"若いのに、仕事に対しては、きちんとしてるんだな"
そんな風に思った。
再度、スケジュールの確認や、撮影場所、衣装担当、フォトグラフ委託先など細かな予定を説明し終えた。
所々で、啓人と安藤マネがヒソヒソ話していた。気にはなるが、それは仕方ない。こういう場では、よくあることだ。
安藤マネが、口を開いた。
「ありがとうございました。企画内容については、本人は承諾しています…」
その言葉に、みなが胸を撫で下ろしたのが感じ取れた。
けれど、安藤マネの話しは、まだ続いた。
「しかし、まだ、社には確認をとっていませんので。後程お伝えする先に、本日の資料データを送っておいてください。正式な回答は後日。2、3日のうちにはさせていただきます。あと、申し訳ありませんが、フォトグラファーについては、本人の希望で、こちらの専任を連れていきたいのですが…」
そう言って、私を見てきた。
「承知致しました。必要な物等ございましたら、こちらで、ご用意いたしますので…」
私がそう返事をすると、彼は頷いた。
「では、また、ご連絡します。申し訳ありませんが、次の仕事が入っていますので。ここで我々は失礼します。」
そう言って、立ち上がり出口に向かって歩いていく安藤マネージャー。
啓人は、さっきまで口も開かなかったのに、立ち上がると私たちに向かって一礼した。
「よろしくお願いします。」
みなが、一瞬、固まった。
「あ、はい。よろしくお願いいたします。」
明葉ちゃんが、咄嗟の判断で、そう返し、頭を下げた。
それに合わせて、みなも頭を下げた。