Who gave the gifts?
12月25日
「わーい!サンタさんからプレゼントもらったよ!」
「えー!よかったじゃん。海翔お利口さんにしてたもんね」
「うん!」海翔は走って、リビングでプレゼントの箱を破いていた。
「あなた!いいとこあるじゃない!」母は父に耳打ちをした。父と母はダイニングテーブルで朝食を食べていた。
「俺はそんなことはしてないよ」父は朝ごはんのパンを食べながら母と話している。
「うっそだー」
「だから本当に違うって!君じゃないのか?」
「私じゃないわよ。私は昨日、海翔にクリスマスケーキをあげたもの」
「それだけか?」
「そうよ。だって、海翔ったら欲しいものがないっていうんですもの」
「だとしたら、誰が海翔にプレゼントを渡したんだ?」
「わからないわ。私はずっと海翔と寝室で寝ていたもの。」
「俺も自分の部屋で寝ていて、君たちの部屋には入っていないよ。」
「わからないから海翔に聞いてみましょう。かいとー!」母は海翔を呼んだ。
「なーに?」海翔はサンタからもらったプレゼントの中身を開けようとしたが、それをやめ、母のところに行った。
「海翔、サンタさんの顔は見た?」母は海翔に優しく尋ねた。
「見たよ!」
「本当か?」父は驚きながら言う。
「うん」
「どんな顔してた?」母も驚きながら海翔に聞いた。
「んー。お兄ちゃんだった」
「お兄ちゃん?」母は困った顔をしていた。
「うん!」海翔は笑顔で頷く。
「誰だか知らないが、そもそもどうやってこの家に入ったんだ?」父はコーヒーを飲みながら言った。
「海翔、サンタさんはどこから来ていたかわかるか?」父は海翔の顔を見て言った。
「んー」海翔は困った顔をしている。
「わからないか?」父は優しく言った。
「うん」海翔は頷く。
「わかった」父はそう言うと皿を洗いにいったようだ。海翔はプレゼントが置いてあるところに戻り、プレゼントを開けた。海翔は中に入っていたものを取り出し、母に見せた。母はそれを見て驚いていた。プレゼントの中に入っていたモノとはこの家族の写真だ。そこには母と父の若い姿が写っている。その写真の母はお腹が膨らんでいる。
「これ誰?」海翔は写真を指差し、母に尋ねた。
「これはね、お母さんとお父さんの若い頃の写真だよ」
「えー」海翔はびっくりしている。そのあとに父は皿を洗い終わったのか、母と海翔のところへ駆け寄った。
「どうして、この写真が?」父は不思議そうに言った。
「わからないわ」母はそう言いながら、窓を何となく見た。
「うわっ!」母は驚いた。
「どうした?」父は母の方を向く。
「窓が割れているの!」母は目を大きく開いている。父も窓を見た。この家族は夜でもシャッターを閉めない。
「つまり、ここから入ったのか!」父は少し怒っているように見えた。僕はそろそろ、ここの押し入れから出ようと考えた。押し入れは和室にあり、和室からはリビングの様子が丸見えである。僕は押し入れの襖に穴を開け、そこから彼らの動向を見ていた。
僕は彼らの子供である。僕の母は20歳に初めて子を授かった。しかし、彼らは夜中に酒を飲むといつものように僕に虐待をした。僕は学校でも人とうまく付き合うことができないでいた。つまり、この世に僕の居場所はなかったのだ。そして、僕は高校2年生のときに家出をした。それから僕は色々な家に泊まらせてもらった。もちろん、ただでは無理だと思ったので嫌な思いもした。それでもあの家に帰るよりマシだと思った。そんなとき、散歩をしていたらたまたま母と父を見つけた。子供も一緒にいた。つまり、僕の弟なのだろう。弟もきっと虐待を受けているはずだ。僕は彼らの後を着いて行った。そして、僕は彼らの家を特定した。僕がいた頃はアパートだったが、今は一軒家となっている。
クリスマスイブの夜に僕は窓から侵入した。方法はとても簡単で窓を割って鍵を開けて入った。気づかれると思ったが、まさかの誰も起きないという事実。昔から彼らは酒を飲むとぐっすり寝てしまい、音が鳴っても起きはしなかった。そのおかげで、家出も侵入も容易い。家に侵入すると、僕はスマホで明かりを灯す。リビングには家族の写真が置いてあった。もちろん、僕がいる写真ではない。彼らと僕の弟が写っている写真だ。触ってみると、もう一枚重なっていた。これは彼らが若い時の写真である。母はお腹が膨らんでいた。つまり、僕の生まれる前の写真だ。その写真の横には下手くそな父と母の似顔絵があった。多分、僕の弟が描いたものだろう。その絵の下に感じで本名が書かれていた漢字で書かれているため、幼稚園の先生が書いたのだろう。弟の名前は海翔というらしい。なぜ僕がクリスマスの夜に侵入したのかというと彼らを殺し、弟を救おうと考えたからだ。まずは彼らを探さなければならない。その時、二階から誰かが降りて来た。海翔だった。僕は海翔と目があってしまった。
「サンタさん?」海翔は目を擦りながら聞いてきた。僕の服装は赤いパーカーに黒いズボンだったので、サンタの格好ではない。しかし、子どもからみたらサンタなのだろう。
「そうだよ」僕はサンタのふりをする。「海翔君だよね?」
「そうだよ」海翔は上目遣いで僕の質問に答えた。
「今、幸せかな?」
「幸せだよ」海翔は笑いながら言った。海翔はリビングにあるソファまで行き、ソファの上で寝てしまった。海翔は幸せと言っていたが、それは彼らが酒を飲んでいない時だろう。酒を飲んだ彼らは化け物である。酒の悪いところは次の日になり、酔いがさめると本人たちは何も覚えていないということだ。僕も高校生の頃、虐待を受けた。しかし、次の日の朝になると昨夜とは打って変わって優しい人格になるのだ。それが恐ろしい。海翔もそんな日常を送っているのだろう。そんなことを考えていると2階から誰かが降りてくる音が聞こえた。急遽、僕は押し入れの中に入る。
「かいとー」それは母の声だった。母は海翔を連れて、2階へ行った。僕は彼らが2階の自分の部屋に行き、完全に眠りにつくまで1時間ほど待つことを決意した。完全に寝たところをナイフで刺し、殺そうと考えたのだ。それから30分くらいたったころだろうか。物音で起きた。僕は眠くてウトウトしていたらしい。襖を開けてみると、リビングに人影が見えた。多分、父か母だろう。まだ、寝ていないらしい。これでは2階に行くことができない。だが、その人影はすぐに2階に行った。階段を上っている音が聞こえたからだ。僕はあと30分待とうと考えた。それから彼らを殺すのだ。目を覚ますと、彼らと海翔がリビングでご飯を食べていた。今が何時なのかスマホで確認すると、午前7時だった。僕はやらかした。もう、奇襲することができない。そして、僕はどうやってこの家から脱出すればいいのだろうか。海翔はプレゼントをもらったとはしゃいでいる。きっと、父か母があげたのだろう。だが、会話の内容を聞いていると、そうでもないらしい。僕でもない。では、誰が海翔にプレゼントを渡したのだろう?だが、そんなことはどうでもいい。父と母は誰かが窓から侵入したことに気が付いた。もう、僕はやるしかない。このままではきっと、いずれ見つかってしまうだろう。
そして、彼らがリビングの窓に注意を向けているうちに僕は飛び出した。彼らはとても驚いていた。僕の右手にはナイフがある。それを父の腰付近に刺した。背後からの奇襲だ。父は痛がっている。次は母にナイフを刺した。母はお腹にナイフを刺した。父よりかは簡単に殺すことができたはずだ。海翔の表情を見てみると泣いていた。僕は海翔を家から連れ出し、警察に電話をした。
「海翔、メリークリスマス!」僕は海翔に言った。海翔は泣いていた。
その後、僕は現行犯逮捕された。警察に今回の犯行に至った経緯を話した。どうやら、母と父は生きているようだ。警察が言っていた。僕は海翔を守ることができなかった。悔いが残る。しかし、なぜか安心している自分もいるのだ。彼らは酒を飲めば、怒りやすくなる。僕はそれが嫌だった。けれど、酒を飲まなければ彼らはとても良い人だと思う。僕は女なのに一人称が「僕」だ。それが理由で学校のクラスの人にいじめられていた。いじめられるまではこれが変なことだとは思わなかったからだ。家でも当たり前のようにその一人称を使っていたのだが、生まれてから一度も親に指摘されたことがなかった。指摘してくれたら、学校でいじめられることもなかっただろう。だが、それが彼らなりのやさしさだったのかもしれない。
あの事件から数年経ち、僕は一人暮らしをしている。家族とは週に一度、電話をしている。海翔は僕が彼らをナイフで刺したことを知らない。サンタがやったのだと思い込んでいるのだろう。海翔は今、小学3年生だ。数年前のあの事件の際、海翔はサンタのことをお兄ちゃんと言っていたが、僕の見た目は短髪ということや声が普通の女性よりも低いということからよく男性と間違われる。そのため、海翔も勘違いをしていたのだ。
そういえば、今でもわからないことがある。あの時、若い頃の父と母の写真を海翔にクリスマスプレゼントとして渡したのは誰だったのだろう。サンタではないだろう。実際にいるとは思えないからだ。闇バイトの学生だろうか?
The end.