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「ドラゴンに襲われている馬車があった」

 俺はのんびり林の中を歩いていた。次に行くところは割と遠いので近道としてそこそこ強い魔物の出るという、『闇夜の林』を歩いていた。


 名前からして物騒だが、ちゃんと道も整備されており見た目は普通の木の少ない森程度の見た目をしている。問題は……


『ストップ』


 何度目になるだろう。襲いかかってくる敵を止めている。始めの方は止めてから狩っていたのだが、数が多すぎてギルドに卸すと相場が下がりそうになったので敵を止めて放置しながら先に進んでいる。


 前方の方にドラゴンが見えたのでこちらがやつの視界に入る前に『ストップ』をかけてのんびり歩いていく。いい加減止めるのもうんざりなんだがドラゴンなら素材も貴重だし換金のために素材をいくらか剥いでおこう。このくらいは許されるだろう。ドラゴンもやたらと襲いかかってくるのだから少しの反撃くらい構わないはずだ。


 そしてドラゴンの方へ歩いて行くとなんだか鉄分の匂いが漂ってきた。おかしいな? 俺が使った魔法は『ストップ』だけで血が出るような魔法は使っていないはずだが……


 現地にようやくたどり着いたところでその疑問の答えは出た。ボロボロにされた馬車が一台ドラゴンの前にころがっていた。文字通りころがっており、ボロボロのボール状にかき回された木と鉄の塊に幾らかの肉塊が入っているだけだった。


「このドラゴンは……」


 俺もコイツをどうしたものか考えた。殺してしまうのは簡単だが目の前の馬車だったものに、それに乗っていたものも含めて興味も関係も無い。そんな人を助けるためにドラゴンを一匹殺してなんになるというのか?


 ドラゴンだって生きるためにこの馬車を襲ったのかもしれない、あるいはこの馬車がドラゴンの討伐を目的にしていた可能性だってある。だから俺は……


『圧縮……破壊』


 ドラゴンは跡形も無く砕け散り、周囲に血の雨が降った。恨みは無いがここでアレを生かしておけば人間に大きな禍根を残すことになるような気がする。結局、俺は人間であってドラゴンでは無い。俺がドラゴンだったらこんな事はしないだろう、それでも俺は人間だから人間のために行動しようと思う。


「さて……大仕事の方もすませないとな……」


 馬車とそれに乗っていた人、それを守ろうとした人たちを把握してその範囲にスキルを使うか……見つからないように記憶が戻る程度の蘇生が必要だな。


『ディレイ・リバース』


 発動まで遅延魔法で時間を稼いで俺はさっさとその場を離れることにした。ドラゴンの素材はもったいないが、目立つことになるよりはマシだ。


『クイック』


 自身に魔法をかけて道になっているところから大きくそれてあっと言う間に馬車は見えなくなった。全てが終わったところで計算通り時間遡行が発動した。あの馬車に乗っていたのが誰だったかは知らない。知ろうとも思わない、ただ、出来ればあの馬車がドラゴンに襲われるようなことがもう起きなければいいなと思った。


 ――馬車にて


「私たちは……一体何を?」


「お嬢様、もう少し眠っておられても構いませんぞ」


「いえ、問題ありません。ところで先ほどからさほど進んでいないようですが日が随分と傾きましたね」


「そうですな……御者達がサボった様子はありませんが……何やら良くない予感がします」


「奇遇ですね、私もです」


「御者達を急がせましょう」


 その老人は御者達に速度を上げるように指示して何の問題も無く馬車は再度出発した。いや、彼らは止まっていたことにすら気づいていないのだから『再度』というべきかどうかも不明だ。しかし何にせよ、隣国の領主の令嬢を乗せた馬車は林を急速に離れた。つまり、ここで何があったかを知るものはクロノ一人であり、彼がそれを喧伝しないかぎりここでは何も起きていない、それだけのことだった。

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