「旅に出よう」
俺はそろそろ王都でやる事も無くなりつつあった。もう勇者に付き合う義理もないのだからそろそろあての無い旅に出ようと思う。勇者たちは……まあなんとかやっていくのだろう。
王国の地図も買ってきたが……自由にどこにでも行けるとなると逆にどこに行けばいいのか分からないな……北部の雪深い地域から南部の観光地まで自由に行ける、悩むなー……
現在いるのは王国中部、自由度の高さ故に悩んでいる。東や西には魔女が居るなどという噂があったりと、冒険者には楽しい地域だ。
「どこにいこーかなー……」
勇者たちは今どこに居るのだろうか? できれば連中と鉢合わせするのは避けたいところだ。
砂漠地域はあんまり用が無いしなあ……
よし! 西の森林にでも行ってみるか。エルフの村もあるらしいし観光にはいいだろ。
そうと決まれば食料の調達をするか。
エルフは肉を食わないらしいし、肉は持ち込みになるな。先に金策をしておくか。
何はなくとも食料を買うための資金調達からだな。賭場で稼げばいいか、ここから離れる以上荒っぽく稼いでもいいはずだ。
そうと決まれば賭博場に行きますかね……
しばし後……俺の手には大量のチップが入ったカップが載っている、換金すれば当面の路銀にはなるだろう。確かに何度かリセットはしたが、不正の証拠は何一つ残っていない。
「換金お願いします」
「は……はい、かしこまりました」
心なしか受付の人もドン引きしている。途中何度も不正がないかのチェックをされた、もちろん証拠など一切残していないので、「何かやっているのは間違いないが、証拠がない」という状態だった。
証拠がないので断るわけにもいかず、しぶしぶといった体ではあったがきちんと換金された。
金貨を全て収納魔法で保存しておく。生ものであれば時間停止を使用する必要もあるが、金貨であればそれが不要だ。
カジノから出て旅に必要な量を見積もった。途中にも町はあるので、そこで転売できそうなものも買っておこう。
王都で有名な彫金細工はいくつか押さえておこう。
カジノを出て宝飾店に入ると店員が不審げな目を向けてくる。ごく普通の冒険者が入るには高い店なのだろう。
一通り見て回って、王都特有の装飾がされているものをいくつか買い取った。向こうも俺が出した金貨の量には驚いていたが、出所を聞くほど無粋ではなかった。
次は肉だな、出来るだけ美味しいやつを集めておこう。
肉屋に行くといろいろな肉が売っているが、俺は考えることなく牛肉の良いやつを買い占めた。種類問わず買ったので売れ線でない肉を買った俺は何故か感謝され、おまけまでつけてもらった。
あまり好きではないが野菜も買っておいた、生ものは温度管理可能な亜空間へ収納魔法でしまっておいた。
馬車に乗ってもいいが、徒歩が旅の醍醐味だろう。
旅の用具は勇者たちが個人分は残しておいてくれた、その点はあいつらも立派なことだ。
俺は宿の中でまだ見ぬ旅路に夢を馳せた。