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「アンデッドを弔う」

 数日間、だらだら過ごしてからギルドに向かった。その数日間にも取り返しのつかない命がいくつか失われたのだろうが、俺は誰でも彼でも全員を救う事は出来ないと思っている。絶対的な力を持っていようと、(あまね)く全ての人を助けるのはやめてから結構な時間になる。


 以前誰でも助けようとしたときには自分の身体が先に音を上げた。総人口など知らないが、手が届かない範囲は諦めた。人間の数に対して時間が少なすぎる。


 勇者たちと合流する前には、もう俺は『村』程度の集団すら全員を死なせないなど不可能と諦めていた。そしてそれは勇者たちと一緒になっても変わらなかった、人にできる事などたかが知れている。だからこそ、少し顔を出さなかったギルドでの無情な通知に心が痛んだ。


『アンデッドの出現とその討伐について』


 内容は放置されていた墓地からゾンビなどのアンデッドが発生したので、昨晩に駆除をしたとの事だった。


 もしもの話だが、そのアンデッドにも俺が助けていればアンデッドなどにならなくてよかった死者がいたかもと思うとメンタルに堪えるので、俺はそれをねじ曲げる事にした。


 宿に帰り時間遡行をした。


『リバース』


 全てのものが逆行していく。太陽が逆さに二回転ほどしてからそれを止め、アンデッド発生前の墓地に向かった。


 アンデッドがどこから発生したのかは明らかで、瘴気の漂う空気の澱んだ区画へ行った。


 俺は助ける事ができなかった人たちのために、簡単なプリーストの真似事くらいはできるようになってしまっていたので、このくらいの浄化はできる実力はある。


 墓地に来る前に買っておいた花束を淀みの真ん中に置いて祈った。


『アセンション』


 浄化スキルを使って墓地の瘴気を取り去った。綺麗に晴れ渡った墓地に祈って去ろうとしたところで一人の年老いた人がやってきた。


「ほほぅ……なかなかの浄化スキルじゃな……ワシが出るまでもなかったか……」


「おじいさん、弔いに来たんですか?」


 死者の事ばかり考えているあいだに、いつの間にか、一人のお年寄りがこの区画にきていた。


「そんな所じゃな……昔出て行った娘がここに寝ておると聞いたんじゃよ、親不孝な娘じゃが……それでも……」


「それでも?」


「ワシの娘である事に代わりはないんじゃよ」


「そういうものですか……」


「ああ、お前さんにも子がおれば理解できるはずじゃ」


 そう言って老人は去って行った。俺には理解はできなかった、それでも自分のした事に意味があったと思うと達成感は残ったのだった。

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