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「腕(だけ)は確かな人」

「ほら、シルバーアクセ一式だ、検品しな」


 俺はゼシカさんが二日で仕上げた宝飾品をいくつか受け取る。細かい細工まで綺麗に仕上げられ美しく光っているものを一つ一つ確かめる。どれも高品質で結構な高値が付きそうな仕上がりだった。


「いい感じじゃないですか! この村で燻ってる人材じゃないですよ!」


「私はここから出る気は無いよ。銀細工をしたのも久しぶりだけど満足いったかい?」


「ええ、問題無いです。いいものをどうも」


 ゼシカさんは頷いてから俺に声をかける。


「満足いったなら追加報酬を頂きたいねえ」


「追加ですか……多少なら」


 俺が財布を出そうとしたところを手で止められた。


「金じゃないよ、アンタからは美味い酒の匂いがするんだ」

 

「その嗅覚は凄いですね」


 蒸留酒を一本取りだしゼシカさんに渡す。


「そうそう! これが欲しかったんだよ!」


 栓を引っこ抜いて瓶から直接飲んでいる、それは水で割って飲む酒なのだけれど平気でそのまま飲んでしまった。


「大丈夫ですか?」


「平気さね、私が何年酒を飲んだか知らないだろう?」


「そりゃ知りませんけど……ゼシカさんには頼みたいことがまだあるんですよ」


「私に頼みたいこと?」


「ええ、コイツの彫金をお願いしたいんですが」


 ストレージからミスリルのインゴットを取り出す。ゼシカさんの目が白黒しているのが見て取れる。


「えーっと、私が酔ってるせいかな……アンタが持っているものがミスリルに見えるんだけど」


「本物のミスリルですよ?」


「ふぇ!? 無理無理無理! そんなもの久しくやってないもん! 責任が重すぎるって!」


「そこを何とか! 前の銀細工は凄かったですよ! ゼシカさんなら出来ますって!」


 俺は彼女を励ましてなんとか加工をしてもらうためにご機嫌とりをする。


「いやー! 天才彫金師に是非加工して欲しいんですけどなー」


 ちょっと演技が白々しかっただろうか? しかし彫金スキル持ちは大抵結構な金がかかる。ゼシカさんの値付けは破格だ。


 俺はゼシカさんにミスリルのインゴットと金貨十枚を渡して「何日くらいかかりますか?」と聞くと「五日もあれば……」と聞いたので満足して宿に帰る。


 ミスリルは武器や防具にしても人気だが、宝飾品としても人気が高い。見る方向によっては光り方の変わる神秘的な色が人気の理由だ。


 ゼシカさんの方も金貨を久しぶりに見たという顔をしていた。通りすがった場所で金を使うことで経済が回っていく。この村も経済システムの一部だ……今にもはじき出されそうな末席だが経済活動はしている。俺のしたことに意味があるに違いない。


 金はまだまだあるので食堂に行って肉を食べておいた。この村が他の村より劣っているとは思えないが、地理的なものなど理由は一つではない。


 俺は宿のベッドに身を投げて、経済活動とはいいものだなと思った。

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