「遺跡を見つけた」
それは荒野を徒歩で横断しているときにたまたま見つけたものだった。
荒野の地面に光っているものが見えた。そこに向かっていくとどうやらそれが金属板であることが分かった。
「なんだこれ?」
そのキラキラした場所に近づいてみたら金属板が地面の中に埋まっているのだと気づいた。興味がわいたのでそれに触って見るとひんやりした温度が指先から伝わってきた。
「自然にできたものじゃないよなあ……」
ふむ……試しに時間を戻してみるか。
俺は金属板の時間を戻すことにした。
『リバース』
驚くべき事にかなりの時間を戻したというのに一切の変化がない。千年くらい時を戻したところで一切の変化がないので諦めた。
おそらくそれだけ戻しても変化がないなら未来方向への時間送りも意味がないだろう。
俺は直感から収納魔法で遺跡の採掘道具を取り出す。おそらくこの金属板で見えている部分は一部のはずだ。
ピッケルで少し周囲を削るとすぐに金属板に当たった。その調子で削っていくとすぐにピッケルの方が削れていき、金属の方には一切傷が付かなかった。
全体を見せたそれはまごうこと無き扉だった。円形の扉の中央に取っ手が付いており、扉自体が開けてくれと主張しているように思えてくる。
この扉が千年の時間遡行に耐えたということは、この中には千年以上前から存在しているものがあると言うことになる。
しばし悩んだが好奇心には勝てず、俺はその取っ手に手をかけた。引っ張ってみたがびくともしない。その事に多少の安堵感を覚えた。開かないものはしょうがない、このままにして逃げ去ってしまえば……
『矢印』が目に入った。見えなければ気にもならなかったのに、取っ手のまわりに浅く彫り込まれたそれを目にしてしまった。それは取っ手を引くのではなく回すのだと雄弁に主張していた。
俺はそれを無視することがどうしても出来ず、取っ手を掴んで手をひねった。
引っ張ったときとはまったく違い、抵抗なくクルリと取っ手は回った。
カチャン
軽い金属音と共に取っ手は外れその穴の中にあるボタンが出てきた。俺は当然のごとくそれを押した、理由は自分でも分からない。ただそこにボタンがあったから押した。
ガコンという音がして扉は左右に開いていった。これは明らかに穴のはずなのにやけに穴の内部は明るかった。照明魔法の類いだろうか?
いかにもおかしい穴に入るべきか少し悩んだものの俺はその穴に見える階段を下りることにした。
その中は暑くも寒くもない丁度よい温度が維持されているようだ。
階段を下りながら壁に埋まっている照明に触れてみる。驚くべきことにそれから温度というものを感じず、普通のガラスと変わらなかった。
人間の作ったものとは思えない通路の行き止まりにドアがあり、読めない文字でプレートが一枚貼ってあるソレの前で足を止めた。
俺はその白地に黒で書かれたプレートの文字を読もうとしたがさっぱり分からずゆっくりドアを押し開けた。
その拍子に『%$%&#=$(実験区画)』と書かれたプレートはその衝撃で割れてしまい、誰も読むことが出来なくなったのだった。
 




