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「ある日の荒野」

「いい天気だ……」


 エルフ達から離れて現在荒野のまっただ中。見晴らしも非常にいい、地平線まで遮蔽物なしでいい眺めだ……いい眺めなのだが……


「ここじゃスキルも意味無いよなあ……」


 時間遡行のスキルで敵が出てきた後で時間を戻して攻撃を事前に警戒する事ができるが、こうも見晴らしがいいと敵が寄ってくればすぐ分かる。つまりわざわざ時間遡行しなくてもよく分かってしまう。


 そんなことを考えていると彼方の方に虎型の魔物が出てきた。


『ストップ』


 その方向に足止めのスキルを使い無視して先へと進む。


 やがて小川に当たったので小休止になった。水を汲んで煮沸しておくか……


 水は魔法で出せる、現に大量に必要なときはそうやって調達している人がほとんどだ。


 しかし魔法で生成した水はなんだか味気ないと思ってしまう。こういうのを「舌が肥える」と言うのだと教わった記憶だけはある。言葉は覚えていても誰が言ったかはすっかり忘れてしまった。


 火でエルフの里で買ったマメを煎る、豆は栄養が肉に近いらしいが、だったら素直に肉を食べたら? とも思うのだが対外的なイメージなどもあるのだろう、難儀なことだ。


 炒り豆を口に入れると確かにエルフが言うだけのことはあってなかなか歯ごたえを感じる。ますます本物の肉でいいじゃないかという気がしてくる。


 そうして一人で昼食を取っていると魔物が一匹近づいてきた。敵意を感じなかったので放置していたのだが俺と距離を取ったところから声をかけてきた。


「あの……旅人さん……食事を……」


 そこまで言って倒れてしまった。幸か不幸か収納魔法の空間内には大量の食料があったので助けてやることにした


「ほら、豆ならたくさんあるからやるよ」


 俺から豆の載った皿をひったくるとガツガツと食べ始めた。気持ちのいい食べっぷりだ。


「ぷはぁ……助かりました! 私は魔族のルーレルです! 気軽に「ルー」と呼んでください!」


 とりあえずここで行き倒れることはなさそうだ。魔族相手に戦い続けた身としては少し後ろ暗いものがある、早いところ別れよう。


「助かったようでよかったな、じゃあ俺はもう出るからお互い死なないようにな」


「ちょ!? 私の事情とか興味無いんですか! 女の子が行き倒れてたんですよ!」


「旅人の行き倒れなんて珍しくもないからな。じゃあな」


 俺はそれだけ言って立ち去った。


 それから野営を始めたところであの魔族をなんとなく助けてしまった理由に思い当たった。


「あいつ……勇者が殺そうとしてたやつじゃん……」


 勇者たちと共に旅をしていたころに幼い魔族を人間でないからという理由だけで勇者が殺そうとしたときに逃がしてやったことがあったのを思いだした。


「まだ生きてるくらいだしもう心配ないだろうな……」


 なんとなく、自分の繋いだ命がちゃんと生きていたことに安心した日だった。

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