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「フォーリック村の旅立ち」

「そろそろ旅に戻ろうかと思います」


「そうですか、良き旅路をお祈りしています」


 ルネさんはなんでもないことのようにそう言った。この人は引き留めるつもりはないらしい。さっぱりした旅立ちだな。


「それでは俺は行きますね」


「クロノさんのこのギルドへの貢献は確かに記録しておきます。さようなら」


 ルネさんに見送られてギルドを出た。ここは後腐れ無く旅立てそうだな。


「あれ? クロノじゃん、どっか行くの?」


 ああ、そういえばコイツがいたな。俺を興味津々に見てくるリーファに出会ってしまった。コイツとも縁があったことだし別れの挨拶くらいはしておこうか。


「村を発とうと思ってな、この村にも結構居たし、そろそろ旅に戻るんだよ」


 その言葉にリーファは猛烈な反応を返してきた。


「なんで!? なんで急に!? これから私一人でギルドの依頼をこなさなきゃならないんですか!?」


「そらそうだろ、冒険者にせよ旅人にせよそう言うのはパーティ組んでない人が珍しくはないだろ」


 ソロで依頼をこなしている連中は多い、何しろ俺もその一人だからな。勇者パーティに入っていたときは一人ではなかったが、あまり幸福とは言い難いものだった。ソロになって厄介な連中と縁が切れたので気楽な一人旅になってしまったため、誰かと組むのが面倒になってしまった。パーティメンバーに気をつかうような戦い方はもはや忘れかけている。


「私一人だと危ないじゃないですか! ドラゴンを倒したっていうから寄生して行こうと思ってたのに! あんまりですよ!」


 堂々と寄生を宣言するリーファに呆れた。普通は自分の実力だけでどうにかするのがあるべき姿だろう、力のあるやつにもたれかかるなど恥でしかない。


「お前だってそこそこくらいは戦えるんだろ? 俺は適当なところでさっさと次の土地に行くことにしてるんだよ、お前も旅人ならそのくらい分かるだろう?」


 定住をする気は無い。安心感は人を弱くする。だからこそ、よそ者やはぐれものが集まるギルドには危険な依頼がいつも貼られている。汚れ仕事担当の自覚は無いのだろうか? 冒険者なんて一山いくらで使い潰される存在だろうに、高邁なお仕事だとでも思っていたのだろうか?


「俺は出て行くからこの村の事は任せたぞ。なに、嫌になったら逃げてもいいんだよ、小銭のために命を張るようなこともないんだ、もっと気楽に考えていいぞ」


「そんな割り切れませんって! 私だってギルドに不義理はしたくないですよ!」


 コイツ意外と真面目だな。そんなもの放り捨てている連中が多いというのに、ギルドに対して真面目にしていようと思うのは立派なことかもしれないが、無意味に死ぬようなことはしない方がいいだろう。


「お前、そんな姿勢で依頼を受けてたらそのうち死ぬぞ」


 俺の忠告にもリーファは聞いた様子はない。この路線でがんばっていくつもりのようだ。


「私は危険な依頼は受けませんからね! 全く問題無いですよ! クロノこそ死なないでくださいよ!」


「ああ、お気遣い感謝するよ」


 俺はそうしてリーファと別れた。望むならどうかリーファが長生き出来ることを祈っておく。俺には責任を取ることが出来ないがまあまあ元気に長生きして欲しいとは思う。職業柄、長生き出来ないだけに関わったやつがすぐに死んで欲しいと思うようなことはない。勇者達だって助けてやることは出来ないが死なずに生きていってくれればなと思っている。


「じゃあな、死ぬなよ」


「死にませんよ、それじゃ」


 村を出ると草原が青々と広がっている。薬草はたっぷり回収したので金にはなるだろう。この村も薬草を輸出するならそこそこの金になるのじゃ無いかと思う。単価が安いので出来ないのかもしれないな。


 この辺の草はエリクサーの素材にも十分なるので加工して売れば金になると思うんだがなぁ……もったいないよな……まあ薬草酒が化け物じみた効き目をしているのでそちらに使っているのかもしれないけれど。あの酒はヤバかったなぁ……


 道を歩いていると魔物が少しだけ出てくる、『ストップ』で止めてそのまま先に進んでいく。


 次の目的地はまだまだ田舎になるので金はあまり使えないな。出来れば栄えているところだとありがたいものだ。まあ次の土地が栄えていないことは知ってるんだけどな……


 まあそれを俺の力で経済面を向上させるのが楽しいんだけどな。


 俺は気ままに草原の茂る道を歩いて行った。空には満天の星がきらめき、まるで、俺やその他冒険者達を祝福してくれているようだった。

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