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「村を案内された」

「さあクロノさんが持ってきたお肉を食べようか!」


 デックさんが良い笑顔で言っている。エルフの食糧事情は闇が深そうなので黙っておこう。


「父さん、はしゃぎすぎ」


 ミルの言葉に慌てて取り繕うデックさん。


「はしゃいでなどいない、客人をもてなすために命をいただくので緊張しているだけだ」


「そうですよ、ミルも命の重さについて考えなさい」


「ふたりともねぇ……」


 ミルは呆れながら料理を食べていた。ご両親はウサギの肉に満足しているようでいいことだ。


「クロノ、食べ終わりましたね? 里を案内してあげますよ」


「いいのか?」


「ええ、ここはなかなか入れませんけど入った人には甘いので」


 どうやら里の掟にも緩いところもあるらしい。しかしミルは何か言いたそうにしていた。そのうち必要なら話すだろうから聞くことも無いだろう。


 ミルに手を引かれて外に出ると木造建築物がほとんどだがそれ以外は人間の町とあまり変わらない。


「人間の町とそんなに違いますか?」


 おそらく珍しそうにしている俺を見ての言葉だろう。


「いや、あまり変わらないから少し驚いただけだ」


「へー……人間も変わらないものですね」


 ミルも人間の町に行ったことは無いんだな。それで森から出て初実戦は危ないぞ……


「とりあえずお茶でも飲みながらお話ししましょうか」


 その辺にあったカフェに案内されてメニューを渡された、ハーブティーなど植物関係のものは多いが、食べ物は野菜サンドや山菜の煮物、キノコを焼いたものなど肉の気配はなかった。


「野菜ばっかりだな……」


「肉を食べたくなる理由がわかるでしょう?」


「我慢してるんならやめればいいのに」


「伝統ってものがありますからね……クソみたいなものですけど……」


「窮屈だなあ……」


「そうですね……人はそんなものからも逃れられないんですよ」


 窮屈なのは人間の社会だけじゃないってことか。


「エルフでも肉を食べない人も多いのか? このメニューを見た限りいるようだが」


 でなきゃこんなに草ばかりのメニューにはならないだろう。


「としよ……高齢のエルフはそんな感じ、困ったことにそういうのに限って権力者なんだよねぇ……」


 高齢のエルフって何歳からなのだろう? とんでもない年寄りなのは分かるが。


「何かがあって肉食が増えたんだろう? きっかけはなんだったんだ?」


 ミルは俺の方に椅子を寄せてコソコソ喋る。


「昔ね、感じのいい旅人がきたらしいんだ。まだ里に結界とか無かった時代ね?」


「ほうほう」


 興味深い話なので俺も相づちを打つ。


「その人がね教えちゃったらしいの……肉の味をね」


「味を占めちゃったか……」


「そこからはなし崩しだったらしいよ、今は長老会が止めてるけどいなくなったらお肉も当たり前になりそうだね」


「それであんなに肉が欲しかったのか」


 偏見はよくないな、エルフでも肉は食べる、覚えておこう。


「お話はこのくらい! 帰ろっか!」


 ミルの家に戻ったとき、夕食用の肉を出すことになったのは言うまでもない。

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― 新着の感想 ―
[一言] >エルフでも肉は食べる、覚えておこう 別の里のエルフはまた違う食文化かもね。 別の里があればの話ですが。
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