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5月19日 整理

 もうこんな時間かぁ。時刻は、もう19時半を過ぎようとしていた。もう外は、薄暗くなっていた。私がバイトする靴屋のショーウィンドウには、きらびやかな革靴やパンプスが並び、店内にはかすかに皮革の香りが漂っているように感じた。バイトを始めた頃の私だったら、今よりもっと緊張しながら働いていたと思う。けど、もうそういうのはだいぶなくなった。私は、残り30時間と迫った時間で靴箱の整理をしていた。まだ不慣れなことも多いけど、だいぶわかるようになったから、全体の見通しがたった。

 すると、レジの音が鳴り、私は慌てて駆け寄った。レジの方には、男性が立っている。今は、表に立っている人が少なかったから私が行かないと。しかし、商品を買うわけでないみたいだ。長袖のTシャツに身を包んだ中年の男性は、向こうの方を指差した。「あそこにある靴、ちょっと見せてもらってもいいですか?」。男性の低い声に対し、私は少し高い声で返事をした。私は、男性が指差した方に近寄り靴を確認する。そして、トレーに靴を出し男性にサイズを確認した。丁寧に靴を手に取り、革の質や縫製をチェックしているみたいだ。

 男性が手に取っていた靴は、結構人気で私たちの店ではよく売れていた。そして、試着した後、男性は「これで」とトレーを差し出してくれたのだった。少しテンションを上げながら、私は包装を始めた。お金は、¥15800だった。男性は、財布から代金を探しながら私に話しかけてきた。「俺は、靴が好きなんだ」と微笑んできた。私は、すぐさま会話を盛り上げようと返事を返す。「好きな靴を履いているとさ、気分も上がるものだよ」と男性は言った。私は、ゆっくりと頷いた。「これからもいろいろ見に来るよ」と話をして、店を出ていくのだった。私は、しばらくは男性の言葉を思い返していた。たしかに、私はまだ靴が好きという思いはあまりなかった。なんとなくという思いでしか働くことがなかった。仕事にするというのは毎日続けることだと考えないといけないのかもしれない。このバイトを通して、お金をもらうだけでなく靴のことを知って楽しむというのを再認識するきっかけになった。

 後ろから、三宅がレジの対応をしてくれてありがとうと声をかけられた。「いえいえ、大丈夫です」と私は答えた。「また、いろいろ教えてください」と会釈をした。そろそろ閉店作業の準備を始めるように靴箱を再び整理し始めたのだった。

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