5月14日 後悔
私は、休憩がてら、バックヤードに戻って来ていた。
川崎「どうした?嫌なことあったの?」
私 「そういうわけじゃないんですけど」
今日は、川崎さんと一緒のシフトだった。もう4年ということもあり、就活の時期に入っていた。
川崎「なんかあったんだね。ハハハハ」
私 「なんか、うまくいかないんですよ」
すべて私のことを見透かされているようだった。
川崎「何が?」
私 「なんか、サークルの勧誘があったんですよ」
今でもあまり思い出したくない記憶だ。
川崎「まぁ、颯希は可愛いからね」
私 「いやいや、そんなことないですよ」
あの時、あそこに行かなかったらよかったのかな。後悔でいっぱいだった。
川崎「何のサークルに勧誘されたの?」
私 「バスケ部です」
バスケ部と言った瞬間、頭の中に友家の顔が浮かぶ。はぁ。やっぱり考えなきゃよかった。
川崎「颯希ってバスケ部だったの?」
私 「違いますよ」
私は、バスケ部なんかじゃない。バスケなんて、七海たちとの思い出だけでよかったのに。いらない思い出で上書きされた気持ちだった。
川崎「へぇー。そうなんだ。そのバスケ部入るの?」
私 「入りたくないんですけど、負けたんで」
あの後、負けて私は友家の言うことを聞かないといけない状態になった。あれから、友家と連絡もとっていないし、体育館にも行っていないから関わり自体はないんだけど。いつ連絡がきてもおかしくないと思っていた。
川崎「負けたの?」
私 「はい。フリースロー対決したんですよ。それで負けて」
そう。あんなの、最初から負けるのにやってしまった。それがダメだったんだ。たしかに向こうは経験者で私は初心者。球技大会で勝ったいいイメージが残りすぎていた。それがよくなかった。だいぶ近くからフリースローを打たせてもらえた。いいわけは今さらできない。
川崎「だって、相手バスケ部でしょ?」
私 「はい」
川崎は、ちょうどパソコンの打ちこみが終わった様子で、enterキーを強くタイプしたのが聞こえた。
川崎「そりゃあ、負けるでしょ」
私 「そうなんですよ」
川崎「負けゲームなのに、やるね」
私 「私がやらなければね」
後悔しかないけど、終わったことだし気にしても仕方がない。自分に言い聞かせながら水を飲み込んだ。




