4月21日 27センチ
日差しが店内に差し込んできた。あくびが出そうになったので、そっと右手で隠した。今日は、一日バイトということもあり、いつもより、拘束時間が長かったのだ。店内には、様々な色やデザインの靴が並べられている。赤、青、黒、白……。靴好きにとっては、ここはまさに靴の宝庫だろう。さらに、今日は、新しいデザインの靴も入荷予定だった。
そんな私は、まだまだ靴好きの一人とは言えなかった。いつも、お客様に理想の靴を提供できるよう、新商品の情報をキャッチアップすることから始める毎日だった。そして、今日も新しい貨物が午後から到着するらしい。というか、それよりも、先週きた箱の中身を店内に並べることができていなかった。というのも、まだ、他の品が残っていたからだ。先週と比べると減って入るが、なくなったわけではなかったのだ。
それでも、びっしりと箱に入っているのを見た瞬間、私はドキドキしてしまった。早くその靴を並べたい気持ちでいっぱいだった。その時、店内にカチャカチャという足音が響き渡った。顔を上げると、そこには大学生くらいの男の子が来たみたいだった。どこかあどけなさも残っていた。
「あの、この靴ってどうですか?」。ぱっと見た感じだといたってシンプルな革靴だった。靴底が厚く、デザインはユニークだった。こういうのを履きこなせるのはいいなと思った。しかし、仕事となると、長時間履くので、デザインよりも履き心地の方が大事なんじゃないかと思ってしまった。すぐに私は、それが彼に似合っていることを伝えた。しかし、デザインよりも履き心地も大切であることを同時に話した。すると、彼がもう一つ質問を投げかけた。「この靴、絶対欲しいんですけど、サイズがないんです。」奥にあったりしますか?本人としては、27のサイズが欲しいみたいだった。私は、急いで確認しに行った。
バックヤードに行くと、幸運にも1足だけ在庫があった。さらに、それが27センチであった。私は、彼に嬉しい報告を告げ、靴を渡した。渡した瞬間、彼は、とても喜んでくれたみたいで、瞳がキラキラと輝いた。どんなに良い靴であっても、自分のサイズがなければ購入することはできない。そんなところに、喜びと満足感があると思っていた。
最後は、代金を支払って店を出る瞬間、「ありがとうございました!」と感謝の言葉を伝えたのだった。すると、ありがとう、矢田さんと声をかけられたのだった。その男は、私のことを知っているみたいだった。




