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3月30日 久しぶり

 私は、彼が電車から降りてくるのを待っていた。彼に会うのは、2月以来だ。私は、受験勉強で1月や2月は、ほとんど会えていなかった。毎日のように、図書館や塾で勉強をし続けた。それだけに、彼と会うのは、とても嬉しかった。

 耳が痛くなるような大きな音が鳴った。おそらく、電車が着いた合図だろう。第一声は、なんて話をしようか?久しぶりに会うから、上手く言葉が出るか心配になった。彼が階段から、降りてくるのを静かに待っていた。東京は、長野と違って多くの人が降りてくるから、誰が彼なのか、全くわからなかった。一気に降りてきた中には、彼は、いなかった。この電車じゃないのかなと思い、私は、スマホに目をやった。

あっ、、、、、。


 湯浅「久しぶり」


 彼は、黒いコートにジーパンの姿でやってきた。


 私 「久しぶりだね。元気してた?」

 湯浅「うん。忙しいけど、なんとか」


 1ヶ月ほど会っていなかったが、彼は、いつもと変わらなかった。


 私 「受験終わってからも忙しいの?」

 湯浅「バイトと野球でね」


 野球?どういうことだろう?


 私 「野球してるの?」

 湯浅「うん。部活行ってて」


 なるほど。


 私 「そうだったんだぁ」

 湯浅「今日は、どこ行く?」

 私 「もし、よかったらプロ野球観にいかない?」

 湯浅「えぇ、めっちゃ嬉しい」


 彼の嬉しそうな表情が見れてよかった。私たちは、階段を降りて、出口へと向かった。


 私 「今年は、強いの?」

 湯浅「淮南?」

 私 「うん」 


 出口から外に出ると、彼は私の手を握ってくれた。久しぶりのこともあり、胸の高鳴りが起きた。


 湯浅「春の大会は、すごくいい感じだったよ。準決勝で守田高校に8対2で勝って、決勝の聖徳にも6対0で勝てたからな」


 淮南高校は、市の大会で他校に負けなかった様子だ。確か、夏の大会では、聖徳高校もベスト8にいっていたこともあり、決して弱いわけではない。しかし、その相手に、完封するなんて強いのだろう。


 私 「じゃあ、これから県大会?」

 湯浅「そうそう。みんな気合い入っててさ」


 県大会になると、道和高校や白峰高校など野球の名門校とも対戦することになる。


 私 「そうなんだ。守は、もう野球しないの?」

 湯浅「したい気持ちは、あるんだけどね。もう膝がね」

 

 彼が、その後の言葉を言うことはなかった。私は、彼が握っていた手を離して、彼の着ていた長袖を持った。

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