3月29日 デート
明日は、長野から湯浅守がやってくる。私は、守をどこに連れて行くか悩んでいた。最初は、遊園地や水族館などデートスポットにしよとしていた。だが、彼は、そういう場所が苦手なのを知っていた。それであれば、プロ野球も開幕したし、観戦しに行くのもいいかもしれないとスマホをスクロールしていた。
私は、観戦チケットがとれないかを探していた。彼の好きな蜂谷隆というプロ野球選手が明日、出場予定でもあった。私の家から、スタジアムまでは、電車で10分ぐらいの距離だった。スマホの画面から映し出される男女カップルの仲がいい画像を見ていると、私たちの関係が、これからもずっと続くのだろうか?私は、疑問を感じていた。
彼は、中学時代から、様々な高校からスカウトがくるくらい、野球が上手だった。しかし、中学校時代に発症した肘の違和感もあり、地元の淮南高校を選んだ。地元であれば、聖徳高校や守田工業高校の方が、野球部は強い。だが、どうせなら、弱い高校に行って、強い高校を倒したいと言い、淮南高校を選んだ。
淮南高校に進んでからも、私たちの関係が切れることはなかった。部活の練習が終わりに、いつも公園で会っていた。二人きりの時は、最近あったことをよく話していた。彼が話した中で、最も印象に残っているのが、"チャーハン事件"だった。俺たちの代の淮南高校の野球部は、とてもヤンチャな生徒の集まりだ。聖徳高校や淮南高校には、行けない学力が低い生徒や専門技術を学びたい生徒が集まることが多かった。
私の好きなチャーハン事件とは、淮南の野球部が数名、チャーハンを食べに行った時に起きた出来事だ。湯浅以外のチャーハンは、テーブルにきたが、湯浅のチャーハンがテーブルにこなかった。その時、同じ野球部の安村が、店長に向かってキレてケンカになったことだ。私は、そんなにキレなくてもなぁと内心思ってたが、彼らは血気盛んな野球部は違っていた。
ただ、そんなエピソードが毎日あったおかげで、彼の辛いリハビリ生活も耐えられたのだろう。高校に進学してなからは、3年生の春まで投げることができなかった。しかし、最後の夏の大会は、彼のおかげで、県大会ベスト4まで進むことができた。
大学は、長野の大学に進むらしい。野球は、もうしないとか。彼の愚直さ、真面目なところが好きだった私は、どこか寂しさを感じていた。彼の進む大学は、長野にあるため、私たちは、遠距離恋愛となる。これから先、私たちはどうなるのだろう?




