2.
さて、殿下に婚約破棄されたあと、私は陛下のところへ向かっていたのですが、大変なことが起きました。
そのせいで、王宮内では兵たちが大騒ぎしています。
「大変だ! 殿下が刺されている!」
「いったい、どうしてこんなことに!」
「殿下! どうして……」
「まさか、王宮内でこんなことが起きるなんて!」
「誰か、来てくれ!」
「急いで陛下に報告しなくては!」
「病院へ運ぶのが優先だろう! 容体はどうなっている!?」
「誰か担架を持ってきてくれ!」
王宮内の広い廊下には、次々に人が集まってきました。
その驚くべき光景を見て、誰もが自分の目を疑っているようです。
にわかには信じられない光景が、彼らの目の前には広がっているのですから。
私の手にはナイフが握られ、動くことができませんでした。
そのナイフからは、真っ赤な血が流れています。
私は、なんだか意識がぼうっとしていて、夢でも見ているかのようです。
自分の体なのに、まるで自分の体ではないような感じがします。
えっと……、どうしてこんなことになったのでしょうか?
「とても正気の沙汰とは思えない! どうしてこんなことになっているんだ!?」
「こんなことをするような方ではないのに……」
「まさか、魔法か何かで操られているのか!?」
「こんな時に何を言っているんだ! 魔法なんて、そんなものあるはずないだろう!」
「虚ろな目をしている! 意識がはっきりとしていない!」
「殿下、お気を確かにしてください!」
「おい、逃げたぞ!」
「おれたちはどうすればいいんだ!?」
「とにかく、追いかけろ!」
「逃げられないように、包囲網を作るんだ!」
兵たちは大騒ぎです。
まあ、この状況なら誰だってそうなるでしょう。
「囲め! 全員で囲むんだ!」
「武器はもう持っていないようだ!」
「油断するな! まだどこかに隠し持っているかもしれない!」
「とにかく包囲するんだ!」
王宮内に響き渡る叫び声は止みません。
こんな状況なので、皆が必死です。
さて、私はいったい、どうなってしまうのでしょうか……。