出逢い
初めは気にはなっていた程度だった。
だが、たまたま講義の合間に嬉しそうに本を読んでいる姿を見てからというもの彼女を意識するようになった。
名前もクラスも知らなかった。
まっ、今は俺は恋などと言うものに構ってる暇はない。卒論を書かなくてはならないからだ。
まだ内容は決めておらず、焦り出していた。
「どうせよみゃしないんだろうからテキトーに書いときゃいいんじゃね?」とダチは言うが、4年間の集大成がテキトーとは出来ない。
だが周りを見てみると卒論よりも遊んでるやつの方が多かった。
そんな中一人黙々と勉強してる奴がいた。彼女だ。
ダチが喋っているのにそちらを向いてしまったことに焦った俺は気付かれないうちにダチの方を向いた。
「なぁ、あの子、知ってるか?」
「ん?あ〜あ、あの子か。そういえば前からいたよな気がするけど名前は知らないなぁ〜。なになに、気になるの?調べてやろうか?」ダチはさも嬉しそうにニヤニヤしている。やめときゃよかったと後悔したが、ダチはもうノリノリで携帯のカメラモードで彼女をパチリと撮った。
こうなるともう探すのは早い。
こいつは情報網が広いのだ。
浅く長ーい付き合いが得意なので、知ってる?ってやつも何人いるのやら…。
俺はただ彼女の姿を見てるだけでよかったのだ。
それから数時間もしないうちに調べがついたようだ。呆気に取られるしかなかった。
この情報網、別の事に使えたら就職にも有利になるだろうに。
「えっとぉ、なになに?新入生ってか。一年だってよ。接点ねーわな。お?彼氏は無しだって。いけるんじゃね?お前にもってこいじゃん。」
「何言ってんだよ。俺なんかに合うわけねーじゃん。」
「じゃ、試してみる?」
そう言うとダチはどこかに電話をかけ始めた。
そして少し話をすると電話を切ってこう言った。
「会う段取りつけたからさ、あとはよろしく頼むよ。結果はちゃんと聞かせろよ。」ニヤニヤしながら離れて行った。
【ハァ〜】
こういうお節介がないといい奴なんだがなぁ〜。






