生きることを追われたもの
デーリッヒのステータス
《デーリッヒ・バイスゴール Lv43》
HP 3200/3200 MP 530/530
AT 687 DF 410 SP 295
アビリティ[無し]
クエストの依頼人がいる村に向かう途中、龍儀は前を歩くデーリッヒの黒い噂を二人に話した。
「ライカ、グレン。どうやら、デーリッヒって男は結構やんちゃボウズだぜ。あいつはこうやって他の冒険者と同行してはその手柄を横取りしているらしい。しかも、セインフィーネのメンバーという肩書きを利用してやりたい放題ときた。」
「え!それって、むぐぅ!」
犯罪と言おうとしたグレンの口を塞ぎ、龍儀は話を続けた。
「あいつは力と権力はあるから他の冒険者が訴えても無駄だし街もあいつがすることを黙認している。俺達が何を言っても無駄だ。そこで、ライカ、これを預かってくれないか?」
「え、これって依頼書・・・」
「あぁ、俺とグレンで調査する。その間、ライカが依頼書を持っていてくれ。」
真剣な表情で頼む龍儀にライカは黙った依頼書を受け取った。その様子をエリサは見ていた。
依頼人のいる村に到着した一行は依頼人である村長に話を聞いた。
「きてくださり、ありがとうございます。私がクワイ村村長のヌテスじゃ。」
クワイ村は山の斜面に位置しており、石造りの家が建ち並んでいた。その中で最も上に位置している大きい家が村長の家であり、そこに泊まることになった。
村長の話を聞いた後、龍儀とグレンは村長の孫のズロックに被害にあった場所に案内してもらった。被害にあったのは主に鶏や豚など家畜で畑は荒らされた跡があるが食べられた跡はなかった。そして、畑には3本指の大きい足跡があった。
「これは?」
「恐らく肉食獣の仕業だろう。農作物には食べられた形跡はなかったしな。」
二人が調査している時、後ろから「頑張っていますか?」と声をかけられた。二人は声に反応し振り向くとそこには、龍儀と同い年ぐらいの青い髪と青い瞳をした少年が立っていた。
「はじめまして、栄龍儀さん。僕はセインフィーネのマックス・ラハナイトといいます。僕も調査しに来ました。」
「一人でか?」
「生憎、デーリッヒさん達は村長の家で豪遊してます。」
「噂通りだな。」
「お恥ずかしい限りです。」
龍儀とマックスが話あっている時、ズロックが話に割り込んできた。
「僕はあのデーリッヒって人、嫌いです。下品だし、村の女性達をいやらしい目で見てたり、ちょっかいかけたりしてたし、下品だし、図々しいです。」
「下品2回言ったぞ。」
「言い返す言葉もありません。」
マックスはズロックの発言にばつが悪そうに顔を背けた。
「そういえば、いつから被害が?」
「2年前からです。」
「2年前に何があった?」
「2年前といえば、確かこの山に資源確保のために大伐採が行われた時期ですね。」
「本当か、マックス。」
「はい、あそこを見てください。あの辺り一面伐採されて木がなくなっています。」
マックスが指す方向を見ると確かに山の大部分が伐採されて地面が剥き出しになっていた。
「それが原因の可能性があるかもな。」
「そ、それとその頃から村人が度々行方不明になる事件が。」
「ズロック、その事件の依頼は?」
「出しました。けど、やってきた冒険者も行方不明になって最近は・・・」
下を向いて項垂れるズロック。
「じゃあ、そっちの調査もしないとな。」
「ほ、本当ですか!」
「あぁ、その事件と今回の事件は同一犯の可能性があるからな。それに、調べて損はない。」
「あ、ありがとうございます!よかった、龍儀さんがいい人で。」
「え・・・」
「だって龍儀さんの顔、怖すぎて悪い人に見えちゃいました。」
「僕も最初はヤバい人だと思いました。」
「実は僕もです。」
「おい、お前ら・・・」
ズロックに続いてグレン、マックスと龍儀の顔に対する感想を述べ、「あはは」と笑った。
(そういえば、龍儀さんは最高位回復魔法をもっているのになんで自分に使わないんだろう?)
龍儀の顔に疑問をもったグレンだった。
「なぁ、この足跡はいつ付いた?」
「今朝見た時にはありました。」
「じゃあ、行くか。」
「「「えっ」」」
「足跡たどれば、犯人が見つかるだろ。」
「そうですけど、大丈夫ですか?」
「まぁ、一応足跡をつけるだけだ。」
「わ、わかりました。行きましょう。」
そう言って龍儀達は足跡を追って行った。その後ろをつける者達と共に。
足跡を追っている途中、龍儀が立ち止まり
「こそこそ隠れてないで出てこい。」
と振り返ると、茂みの奥からデーリッヒ達が現れた。
「隠れるとは失敬な。俺達はただクエストをクリアするために手伝ってやろうとしただけだぜ。」
「一切調査しなかったくせによく言う。それに、手伝うつもりなら堂々とついてこい。」
龍儀の挑発に乗らず、デーリッヒは笑いながら近づいた。
「人には役割がある。俺達はモンスターを倒す。君達は調査をする。これでいいだろ。さぁ、後は俺達に任せるんだな。」
不信感をもつ龍儀を抜き、デーリッヒ達は足跡が続いている洞窟にたどり着いた。
「この中に今回の討伐対象のモンスターがいるんだな?」
「あくまで、俺の予想だがな。」
「まぁいいや。さっさと終わらせるぞ!」
デーリッヒの合図でセインフィーネのメンバー達は洞窟に入って行った。
「悪手だな。」
「え・・・?」
「相手が何かわからない状態で突っ込んで行くのはかなり危険だ。」
龍儀がグレンに説明していると、洞窟に突入したメンバーの悲鳴が聞こえた。
「な・・・何ですか、今の声。」
「あ、やっぱり。」
驚くグレン、無言で身構えるマックス、刀を抜く龍儀、そしてデーリッヒは、
「くそ、使えねぇ奴らだ。」
悪態をついていた。
「そう言うなら、あんたが行けばよかったんじゃないか。」
「あぁ、そうするさ。出てこい!雑魚モンスター!てめぇはこのデーリッヒ様が直々に殺してやる!」
デーリッヒの挑発にのったのか洞窟の奥からモンスターが出てきた。そのモンスターは爬虫類みたいな見た目だが、3本爪の足は筋肉質で身体中に鱗があり、太いしっぽに鋭いキバが生え揃った口は突入したメンバーの上半身を容易く噛み砕いた。その姿はまさしく、
「ド、ドラゴン!」
「う、嘘だろ。なんでドラゴンがこんなところに。」
「グレン、鑑定。」
「え、あっはい。鑑定。」
驚くマックスや怯えるデーリッヒ達をよそに龍儀はグレンに鑑定の指示をだした。
《フォールドラゴン Lv87》
HP 9870/9870 MP 1269/1269
AT 2109 DF 963 SP 258
アビリティ[無し]
「わーぉ、絶望的なレベル差だな。」
「これはさすがに龍儀さんでも勝ち目ないと思います。」
「俺もそう思う。」
龍儀とフォールドラゴンのレベル差は3倍。しかも、ドラゴンのHPやMPが全く減ってないことから突入部隊を魔法を使わず無傷で壊滅させたことがわかる。
「ひ、ひぃぃぃ!」
完全に戦意消失したデーリッヒは我先にと逃げ出した。他のメンバーもデーリッヒに続いて逃げ出し、残ったのは龍儀、グレン、マックス、そして木陰に隠れていたズロックのみだった。
「さて、どうするか。」
ドラゴンを見ていた龍儀はドラゴンのキバに鶏の羽が挟まっているのを見た。
「どうやら、あいつが今回の討伐対象。家畜や人を襲った犯人だな。歯に鶏の羽が挟まってるし、足跡とも合致する。」
龍儀の発言にドラゴンを見たグレン達はこのドラゴンが依頼のモンスターだと確信したが圧倒的に強いドラゴンにどうするか迷っていた。
「とにかく、ここは退いて増援を呼びましょう。ドラゴン討伐は難易度Cのクエストです。今の僕達では敵いません。」
マックスの提案にのった龍儀達は撤退しようとした瞬間、フォールドラゴンは口を開けズロックのいる木陰に火炎を吐いた。
「ズロック!」
間一髪でズロックを助けた龍儀はフォールドラゴンから距離をとり、グレン達と合流し、木陰に隠れて様子を見た。
「どうやら、逃がしてくれなさそうですね。」
「あぁ。」
「でも、どうして僕が真っ先に狙われたのでしょうか?」
「あいつを怒らすようなことをした?」
「しませんよ!」
「そういや、足跡を追っている間この山で動物を一匹も見なかったがどういうわけだ?」
「2年前の森林伐採で動物達の住家や食べ物がなくなって消えてしまったから・・・まさか、その復讐!」
「いや、どちらかというと飢えを凌ぐためにエサを探していたらあの村を見つけたってところだろ。」
龍儀の言う通り、山の森林を伐採したことにより、そこに住んでいた草食動物が山から離れ、その動物を食べてひっそりと暮らしていたフォールドラゴンがエサを求めた結果起きた悲劇だった。
「じゃあ。」
「あぁ、完全に俺達人間が原因だ。」
「それじゃあ、ズロック君が狙われたのは。」
「あの村の住人だから、好物だからじゃないか。」
「そんなぁ~。」
(完全に日本でいうところの熊だな。)
実際、エサを求めて山から人里に熊が現れる事例があるが、それとは比べものにならないぐらいの被害をフォールドラゴンはだしていた。
そう話している龍儀達をフォールドラゴンはただ見ていた。その目には憎しみや復讐心はなかった。ただ、生きることだけを望んでいる目だった。
龍儀は一旦、目を閉じた後、息を整え、フォールドラゴンの前に現れた。
「!」
「龍儀さん!」
「ズロック、お前は村に戻ってこのことをみんなに伝えろ。早く!」
龍儀の圧におされたズロックはそのまま村に戻って行った。ズロックを見送った龍儀の両隣にグレンとマックスが並んだ。
「龍儀さん、一人で戦おうとしないでください。僕もセインフィーネの一員として汚名返上させていただきます。」
「僕もただ見ているだけは嫌なんです。もう、あの時のような何もできない自分は卒業したいです。」
「あぁ、わかった。それじゃあ、行くぞ!」
「「はい!」」
3人はそれぞれ武器をとり、フォールドラゴンに向かった。
「グレン、常に鑑定を使ってあいつの状態を調べろ!」
「はい!」
「マックスは攻撃を続けて隙を作ってくれ!」
「はい!」
3人はフォールドラゴンの周りを回りながら噛みつきなどの攻撃を避け続けた。すると、フォールドラゴンは後ろに下がり火炎を吐いた。狙われた龍儀とグレンは間一髪でそれを避ける。
「グレン!鑑定は。」
「はい!」
《フォールドラゴン Lv87》
HP 9240/9870 MP 1269/1269
AT 2109 DF 963 SP 258
アビリティ[無し]
「MPが減ってない・・・あれ魔法じゃないのか。」
「ドラゴンの多くは喉の奥に炎を作る器官があり、そこから炎を吐くため、MPは消費しないんです。」
「マジか!」
ドラゴンの体の構造に龍儀が驚いていると、フォールドラゴンは大きく口を開けた。
「まさか!」
龍儀の予想通り、フォールドラゴンは技を放った。
《ストームブレス》
口から放たれた広範囲の竜巻は龍儀に狙いを定めたが、龍儀の前に出たマックスは両手を前にかざした。
《ストームウォール》
マックスの前に円形の風の壁が現れ、ストームブレスを相殺した。
「ありがとう、助かった。」
「いえいえ。」
二人はフォールドラゴンから距離をとった後、マックスは《ストームランス》、グレンは《フレイムカッター》、龍儀は銃撃で攻撃したがフォールドラゴンに手応えはなかった。
「グレン、お前そういうの出来たんだな。」
「は、はい!使えますよ。」
「それよりも龍儀さん。それ、なんですか?」
「ん?デザートイーグル。」
「な、何かかっこいい。」
フォールドラゴンの前に並んだ3人、フォールドラゴンは並んだ瞬間を待ってたかのように地面をおもいっきり叩いた。その瞬間、3人の下から木の根のようなものが出てきた。
《フォレストバインド》
地面から出たそれは3人が反応する前に拘束した。
「な・・・」
「しまった!」
縛られて身動きとれずもがく二人、しかし、龍儀に絡みついた触手はみるみるうちに光の粒子となって消えていった。驚くグレン達、警戒するフォールドラゴン、その瞬間を見逃さず二人の拘束している触手を斬り、解放した。
「龍儀さん、今のは?」
「もしかして、アビリティ[自由]・・・」
「あぁ、やっと役にたった。」
龍儀達は体勢を直しつつ、フォールドラゴンから距離をとった。
「マックス、ドラゴンに弱点はあるか?」
「えぇっと、ドラゴンは体のほとんどを硬い鱗で覆っていて攻撃を寄せ付けないけど、お腹や関節には鱗がないのでそこを狙えばなんとか。」
「なるほど、鱗がないところを狙えと。」
「はい。」
それを聞いた龍儀はフォールドラゴンに刀と拳銃を向け走りだした。それと同時に二人も走りだし、フォールドラゴンの腹や関節に攻撃を始めた。
しかし、フォールドラゴンに効いてる素振りはなく龍儀にしっぽを振りかざした。
「!」
龍儀は気がつき避けようとするが間に合わず、しっぽが命中し木に叩きつけられた。龍儀の身体中から骨が折れる音がし、頭から血が流れた。
「龍儀さん!」
マックスが叫ぶと龍儀は口から血を吐きながら立ち、自分の胸に手をあてた。その直後、頭の傷が治り折れた骨が完治した。
「すごい・・・」
「さすが最高位回復魔法です。」
(ふぅ、内臓や骨も治ってよかった。)
龍儀は胸を触りながら安堵し、再びフォールドラゴンに刀と拳銃を向けた。フォールドラゴンも龍儀を睨み付け臨戦態勢をとった。
「龍儀さん、ダメです!鱗のないところもダメージが通ってません!」
叫ぶマックスだが、龍儀は冷静に刀を構えた。
「いや、充分だ。」
そういうと龍儀は拳銃を乱射しながらフォールドラゴンに向かった。フォールドラゴンも負けじと《ストームスピア》や火炎弾を連射した。それらを紙一重で避けつつ弾切れになった拳銃をフォールドラゴンの上に投げた。龍儀以外の全員が上を見た瞬間、龍儀は刀でフォールドラゴンの右目を刺した。目から血を流しながら暴れるフォールドラゴン。龍儀は刀を抜き、転がりながら離れた。目から血を流し倒れるフォールドラゴン、その光景を見ていた二人は言葉を失った。龍儀はゆっくりとフォールドラゴンに近づいた。
「ごめんな・・・」
((え・・・))
龍儀の一言に驚く二人。龍儀はそのまま話を続けた。
「人間に勝手に場所を奪われ、ただ生きたいと、生きようとしただけなのに、それすら奪われてしまうのだから。」
二人はその様子を黙って見ていた。涙を流しているフォールドラゴンに龍儀は優しく、どこか悲しげな表情で、
「安心してくれ。俺もいずれ、そっちに行く。だから、ゆっくり眠ってくれ。」
トドメを刺した。
フォールドラゴンは涙を流しながら光に包まれ、ラグビーボールぐらいの大きさの真っ赤な魔生石に変化していった。龍儀はその様子を涙を流しながら見ていた。
(龍儀さん・・・)
マックスは涙を流す龍儀に何か思うことがあるように微笑んだ。
「さぁ、帰るか。」
涙を拭いながら龍儀は帰り始めた。二人も黙って頷きながら龍儀の後をついていった。
村に着いた龍儀達は村の様子が少しおかしいことに気付いた。村人達が慌てて村長の家に集まっていったのでそのうちの一人に声をかけた。
「おい、どうした?」
「あ。りゅ、龍儀さん、大変です!ライカちゃんが!」
その一言に血相を変えた龍儀は人混みをのけながら村長の家に向かった。村長の家に入ると
全身に傷や痣を残し、虫の息の状態のライカがいた。
マックスのステータス
《マックス・ラハナイト Lv68》
HP 4930/4930 MP 800/800
AT 715 DF 555 SP 482
アビリティ[無し]




