決心
次の交渉が3日後と分かり龍儀達はその時まで休むことになった。
一回目の交渉が終わった夜
「龍儀、少しいいかな。」
「なんだ?」
龍儀はモルガンに連れられ、海辺を歩いていた。
「龍儀、君には礼を言わないといけない。」
「礼?」
「あぁ、ネクヴァスとカメリアスガルドの戦争を止めてくれた。私はこの町が好きだ。ずっとこの町で育ってきた。その町が戦争に巻き込まれないように私なりに努力していた。その時に君が止めてくれた。私では出来なかった方法で。ありがとう。」
「いや、俺は俺の目的のためにやったことだ。」
「でも、結果的に君は私を含め、多くの人達を救った。」
モルガンは龍儀に自分の思いを伝え、礼を言っていた。
「それと、もう1つ言っておくことがある。」
「なんだ。」
「それは・・・」
モルガンと別れ宿屋に戻す途中、龍儀は体育座りで項垂れているライカを見つけた。龍儀は隣に座り、ライカに声をかけた。
「どうした、ライカ。」
「リューギ、あたし・・・弱い。誰も守れなかった。」
「ライカ・・・」
「あたし、ライオットと戦った時にあいつにやられて思い出しちゃったんだ。ヘイサゼオンでひどい目にあったこと。それが海賊と戦う時にまた、思い出して恐くなった。あたし、痛い思いをしたくないと思っちゃったんだ。リューギは凄いよね。どんだけ傷ついても戦えるんだから。」
ライカの告白に龍儀は少し考えた後、そっとライカの頭に手を置いた。
「ライカ、俺だって痛いのはいやだな。」
「え?」
「俺が傷だらけになっても戦うのはそれ以上失いたくないものを守るためだ。」
「リューギ。」
「それに、ライカは誰も守れないわけじゃない。ヘイサゼオンで初めてクエストした時も体を張ってグレンを守ってくれただろ。」
「あの時は痛い思いをしたことなかったし、体が勝手に動いちゃっただけだよ。」
「最初はそんなのでいい。きっかけなんてそんな些細なものだ。後はそのきっかけをどうするかだ。大丈夫だ、ライカ。お前はまだ守れるものを失ってはいない。お前はこれから強くなれる。」
「リューギ。でも、ノリオおじいちゃんが。」
「その通りじゃ。」
龍儀とライカのところにノリオが近づいてきた。
「ライカちゃんはしっかり儂を守ってくれたじゃろ。だから、大丈夫。今、問題なのはぎっくり腰じゃ。」
「いや、大丈夫じゃねぇだろ。」
「ははは。だから、自分に自信を持て。恐いや痛いなんぞ、経験で克服できる。これから学べばよい。」
「・・・うん!ありがとう!」
ライカは立ち上がり、その場を去った。
「さすが、年寄り。こういうのは上手だな。」
「これも経験から学ぶものじゃ。学ぶは若い者の特権じゃ。お主もいろいろ経験したんじゃろ。」
「あぁ、いいことも悪いことも楽しいことも悲しいことも経験した。だから、今は守りたいもののために戦える。」
「ほぅ、なかなか達観しとるのぉ。」
「まぁな。・・・ん?」
二人が話していると次はリチェリアが近づいてきた。
「お、じゃあ儂は帰るとするか。」
そう言ってノリオは去り、リチェリアが龍儀の隣に座った。
「ありがとう、また救われたわ。」
「いきなりどうした?」
「あなたがあの時言ってくれた言葉が嬉しかった。私は無敵じゃない。最強の傭兵も私のステータスを見た人が勝手に付けたもの。・・・私、何百回も戦争に参加した。そして、勝つこともあれば負けることもあった。負けたら、拷問や処刑が待っていた。でも、ギロチンの刃は私の首を切ることはなく、どれだけ首を吊られてもしまることはなく、業火に燃やされても私の体は焼けることはなかった。・・・私、寂しかった。信用できる人なんていないまま時を過ごした。でもね、あの時、龍儀が家族になろうって言ってくれたのが、普通の女の子と言ってくれたのが嬉しかった。あなたからいろんなことを学べたわ。あなたの剣術やもし武器がない時の戦い方とか。」
「あれ?俺、戦い方しか教えてない。」
「うふふ、もちろん他にも教えてもらった。でも、あなたの隣で戦いたいからこっちの方を覚えちゃった。」
「マジか。」
二人が話合っている後ろでひっそりとグレンは聞いていた。そして、何かを決心したのか近くにいたラッガーに声をかけた。
「ラッガーさん!」
「ん?」
「お願いがあります!・・・」
そして、約束の日
海賊達を乗せた船には、モルガン、トルクラ、リーフ、リチェリア、龍儀が乗っていた。
約束の場所に行くと2隻の船が止まっていた。近づいて見るとそのうちの一隻にギルガザムネやザンツァーを含めた海賊達、もう一隻には目隠しをされたディーネ達がいた。
「約束通り海賊達を全員連れてきた。そちらも約束通り、全員連れてきたんだろうな。」
「安心しろ!人質は全員いる。仲間を全員、この船に乗せたらこっちの船をそっちに送る。両方が人質交換をしたら交渉は終了。それでいいな!」
「かまわない!」
モルガン達は海賊をギルガザムネがいる船に乗せた。その後、海賊達はディーネ達を乗せた船から離れていった。
「仲間は全員いる。交渉成立だ!人質全員解放する。」
そして、そのまま海賊達は去った。モルガン達はディーネ達の縄や首輪を外した。
「大丈夫か?キラリネ。」
「えぇ、私達は全員無事よ。でも、ごめんなさい。大した情報は得られなかったわ。」
「そうか。でも、それでいい。君達が無事で良かった。」
「えぇ、得られた情報は海賊の構成人数、幹部の名前と趣味、好きな食べ物、将来の夢ぐらいよ。」
「かなり凄い情報を手に入れているんだが!」
「本当に凄かったわよ、キラリネさん。あの状況で海賊達と会話して手に入れたんだから。」
「どんな会話をしたら、将来の夢が出てくるんだ?」
「でも、船長のことやどこにいるのかまでは分からなかったわ。」
「それは、大丈夫。私が分かる。」
「え?」
「話は後だ。みんな、これから反撃に出る。まずは、帰って体を休めてくれ。」
モルガン達を乗せた船は港町ナクトリアに戻った。




