黒色と桜色の共闘
龍儀は森の中を歩いていた。すると後ろから一人のダークエルフが近づいてきた。
「龍儀さん、僕を覚えていますか?」
「・・・あぁ、あの時睨みながら弓矢を構えてたダークエルフか。」
「はい。フラガです。龍儀さん、僕がこの森を案内しますよ。もちろん、長老から許可はもらっています。」
「それはありがたい。頼む。」
「はい。」
龍儀はフラガと共に森を歩いていった。太陽が沈みそうになる頃、龍儀とフラガはやっと森を抜けた。
「ありがとう。君はすぐ里に戻った方がいい。後は俺がなんとかする。」
「わかりました。」
龍儀はそのままカメリアスガルドが陣地へ向かっていった。フラガはその姿を短剣を持って睨んでいた。
陣地に着くとマドリーが演説を行っていた。
「諸君らの行動は女神様が見てくれている!諸君らの行動は正しいと、100年続く我がカメリアスガルド公国の行いは正しいと!それを愚鈍なネクヴァスのバカ共に見せつけてやろうではないか!」
歓声をあげる兵士と冒険者達、龍儀はその中にマドリーを睨んでいるライカ達を見つけた。演説が終わり、自分たちのテントに戻るライカ達に龍儀は声をかけた。
「ライカ、グレン、ルリカ、ディーネ。」
「「「「!?」」」」
「ただいま。」
龍儀の帰還に泣きながら駆け寄るライカ達。
「リューギ~!」
「龍儀さん!」
「龍儀!」
「お帰りなさい。」
「悪いな、心配かけた。」
泣いて抱きつくライカ達を撫でながら龍儀は少し笑った。
「本当に心配かけたわね。みんな、あなたが居なくて元気がなかったのよ。」
「本当に悪かった。みんな、少し話がしたい。いいか?」
「うん!」
龍儀はテントに入り、龍儀がいなくなってからのカメリアスガルドの動向を聞いた。どうやら、カメリアスガルドの兵士達はネクヴァスの軍隊だけでなく他に何かを探している様子だったという。
「なるほど、これで合点がいった。」
「リューギ!あのマドリーって奴、ひどいんだよ!」
「そうよ!ライカ達から聞いてあいつのとこにいったら「奴は影響力がデカい。俺の立場がくわれる前に消さなきゃな。」なんて言ってたのよ!」
「そんなの今はどうでもいい。それより、俺はダークエルフの里にいった。」
「え、ダークエルフ?」
「あぁ、どうやらこの戦争の目的は領土というよりダークエルフ狩りのようだ。」
「そんなの非道だよ!」
「そうね。そもそも奴隷はブルームスフィア連盟国憲法で禁止されてるわ。」
「その真実を今から確かめに行く。」
「だったら、私も行くわ。」
「いや、お前達はここで待機して欲しい。もし、俺に何かあったらすぐここを離れてくれ。」
「ちょっと、何かって何!」
「頼む。」
「・・・わかったよ、リューギ。でも、信じてるよ。また戻ってくると。」
「あぁ、信じてくれ。」
そう言って龍儀はテントを出た。それをドーベルは裏から聞いていた。
(ダークエルフだと・・・)
マドリーがいるテント内
「誰だね。」
「私ですよ、マドリー騎攻将。」
「な・・・」
「どうしました?亡霊を見たような顔をしてますよ。」
「い、いや~良かった。君のような優秀な人材を失うわけにはいかなかったからね。生きてて嬉しいよ。」
とぼけながら席を立ち近寄るマドリーに龍儀は本題に入った。
「そんなことは今さらどうでもいい。実は、ダークエルフの集落に行きましてねぇ。」
その一言に顔色を変えるマドリー。
「素晴らしい!さすがだよ。それで?」
「どこで手に入れたんですか、この情報?」
「何の話だ?」
「ダークエルフの目撃情報は一つだけ。それをカメリアスガルドとネクヴァスに提供した奴がいるはずだ。誰だ?」
「ふん!なるほど。確かになぜネクヴァスがダークエルフを知っているのか気になってたが、どうでもいい。そうだなぁ、見たことない仮面を付けていたぐらい。そうだ、それと君と似た服を着ていたよ。」
「なるほど。で、ダークエルフをどうする気だ?」
「もちろん、その集落を占領しダークエルフ達を捕まえる。」
「奴隷か。」
「人聞きの悪い。資源だよ。」
「資源?」
「そうだ、ダークエルフは普通のエルフより強靭でな、様々な実験に使えるのだよ。それにそういうのが好きなマニアも大勢いるからな。」
「要するに実験動物か。奴隷よりひでぇな。」
「知ったところでどうするつもりだ?まさか、俺に歯向かおうと?止めときな。お前一人で国と戦うつもりか?お前は俺の命令通りに動けばいいんだよ。」
ニヤリと笑うマドリー。その時、透明化魔法で隠れていたフラガがマドリーの腹を短剣で刺した。
「お前らのせいで!」
「がっ、はっ!」
血を吐くマドリーは雷の剣を作り、フラガを振り払う。後ろに避けた後もう一度刺そうとするフラガを龍儀が止める。
「何故止める!」
「バカか、お前。」
「ふざけるな!そいつらが僕達の平和を荒らしたんだぞ!」
「その平和が今まで保たれたのはお前らが被害者で居続けたからだ。それをお前がこいつを刺すことで報復という大義名分をもってお前の故郷を蹂躙するぞ!」
「ぐ、それでも・・・」
「ぐははははは、もう遅い。今からカメリアスガルド公国は犯罪者である貴様とその一族を逮捕という名目でダークエルフの集落を攻めよう!」
苦虫を噛んだように睨んだフラガだがマドリーは笑い続けている。龍儀はマドリーの腹に手をかざし、傷を治した。
「龍儀さん・・・何を。」
「おぉ!素晴らしい。さすが、最高位回復魔法。さて、まずはお前からだ。」
傷が治ったマドリーはフラガに詰め寄るが突如、龍儀が後ろからマドリーを刺した。驚くマドリーとフラガ。
「な・・・何を。」
「これであいつが犯罪者だという証拠は消えた。今あるのは俺が殺した証拠だけだ。」
「貴様!裏切るのか。」
「やっと覚悟が決まった。殺しの責任を負う覚悟が。」
刀を抜いた龍儀は振り返るマドリーを正面から斬り捨てた。その様子をただ見ていたフラガに龍儀が歩み寄った。
「予定変更だ。フラガ、お前は森に戻れ。後でハイエルフを連れた人達がくるから里に案内してくれ。」
「龍儀さんは?」
「俺は確かめたいことがある。頼んだぞ。」
「はい。」
再び透明化したフラガを見送り龍儀はテントから出た。テントを出てすぐ兵士達に見つかった。返り血のついた龍儀を見て不審に思った兵士の一人が龍儀に近づいた。
「おい、マドリー様のテントで何があった?」
「いろいろあった。」
「は?」
「悪いな。」
そう言って龍儀は兵士達を気絶させた。そのままライカ達のいるテントに向かった。
「リューギ!」
「どうしたんですか、その血。」
「いろいろあってな。今から森に向かってくれ。森に行くとダークエルフの少年がいるからついて行ってくれ。」
「確かに約束通り戻ってくれたけど面倒事も連れてきたわね。」
「頼んだぞ。」
「わかったわよ。ほんと、あんたといると退屈しないわねぇ。」
「龍儀さんは?」
「安心しろ。すぐ戻る。」
そう言って龍儀はテントから出た。その後を追うようにライカ達もテントを出て森に向かっていった。マドリー殺害がばれたようで兵士達が大騒ぎしている。龍儀を見つけた兵士が仲間を呼びながら迫ってきた。
「いたぞ!」
「貴様!何故、マドリー騎攻将を!」
迫ってくる兵士達に龍儀は刀を抜いて迎えうった。兵士達の武器を破壊しながら森の方へ行く龍儀。兵士の一人が剣で斬ろうとするのを刀で受け止める。
「なぁ、ダークエルフがこの森にいるって噂、知ってるか。」
「噂ぐらいなら聞いたがそれがどうした!」
つばぜり合いを制し兵士の一人を刀の峰で気絶させたところで冒険者達も龍儀の目の前に現れた。
「おい、どういうことだ!」
「囮にされた腹いせか?」
「それ、いただき。そういうことにしてくれ。」
「はぁ?」
冒険者達の魔法攻撃も避けながら龍儀は森の中を進む。森を進み続けると誰も追わなくなった。龍儀はそのまま森を進み、ネクヴァスの軍隊がいる陣地へたどり着いた。
ネクヴァス陣地のテント内、そこにはリーダーらしき男と全裸で天井から垂れている鎖に両手を繋がれたリチェリアがいた。
「まったく、お前が居ながら私の部隊が壊滅したうえにその下手人をみすみす逃すとは。私は少し君を過大評価していたのかもしれないねぇ。」
男はリチェリアの身体中を触りながら話を続けた。
「それにしても素晴らしい恩恵の組み合わせだ。この美しい身体を永遠に保てるのだから。しかも、処女!戦う力がなくなっても君は愛されるだろう。」
「愛・・・なんて、嘘でしょ。今まで私に近づいた人は恩恵の力かこの体目的しかいなかったわ。哀しいことにね。」
「なら、私が愛してやろうではないか。私の妻になれば何不自由ない暮らしができる。」
「結局、あなたも私が一番欲しいのが何なのかわからないのね。」
「何だ?何が欲しい?金か、男か、力か、称号か、権力か、王の座か?」
「そんなものいるわけない。」
リチェリアの身体を男が堪能している時、入口から兵士が慌てて入ってきた。
「なんだ!入る時は声をかけろと言っただろ!」
「申し訳ありません!シオマ将軍、我が陣地にカメリアスガルドの傭兵が奇襲を仕掛けてきました!」
「なにぃ~!相手は何人だ!?」
「一人です!」
「なら問題ないだろう。」
「それが、ダークエルフの里でボロク将軍の部隊を壊滅させた男のようで我々では歯が立ちません!」
「なにぃ!」
(龍儀・・・)
「仕方ない。リチェリア、リベンジだ。その男を殺してこい。」
鎖を解かれたリチェリアはすぐに着替え、龍儀のもとに向かった。
100は超える兵士に対し龍儀は一人で戦っていた。剣や槍、魔法攻撃を避けながら暴れる龍儀に成す術なく倒される兵士達。そこに、リチェリアが着いた。
「おぉ!リチェリアが来てくれた!」
「最強の傭兵!これで勝てる!」
喜ぶ兵士達を他所にリチェリアは龍儀の前に出た。
「やっと来た。」
「何しに来たの?」
「決着をつけに。」
「そう・・・」
戦場が静寂に包まれた瞬間、同時に二人は飛び出しつばぜり合いになった。互いに喋ることなく斬り合い始めた。周りの兵士達はただ見ているしかできなかった。
「そろそろだな。リチェリア、着いて来い!」
「!?」
龍儀は後ろの兵士達を蹴散らし、森の中に入った。リチェリアも後を追い森に入った。
森を走る龍儀と追うリチェリア。二人が走っているとあの時リチェリアの着替えを手伝った女性と猿を肩に乗せた左頬にビンタの痕がある男性の二人のダークエルフが声をかけた。
「こっちよ。」
「着いて来い。」
言われるままに着いて行く龍儀。リチェリアは何かを感じとったようで黙って龍儀達に着いて行った。
ダークエルフの里に着くとライカ達とルドルフ達がいた。ちなみに、ルドルフ含むダークエルフの男たちの頬にはビンタの痕があった。
「本当にダークエルフの里があったのね。」
「あぁ。」
「あの、龍儀さん。後ろの人は?」
「なんか、すごい格好ね。」
「・・・リチェリア・アブロッサム。傭兵よ。」
「まさか、ネクヴァスの!」
「待って、待って。リチェリアさんは大丈夫よ!」
警戒するディーネ達にダークエルフの女性は弁解した。龍儀はライカ達の方に行こうとすると後ろから物音がした。龍儀達が警戒して見ると茂みからドーベルが出てきた。
「待て!待ってくれ!俺は仲間だ!なぁ、龍儀。」
「今のところはな。」
「今のところって・・・」
「でも、何でここが?着けられた気配はなかったのに。」
「俺の恩恵はな、[超嗅]っていってな、嗅覚が100倍になるだ。だから、龍儀の匂いを辿ってきたってわけだ。」
「ストーキングにぴったりの恩恵ね。」
「ちょっと待ってくれよ。」
ジト目で見る女性陣にドーベルは必死に弁解した。
「見てたぜ、龍儀。まさか、一人でネクヴァスの軍隊を相手取るとはな。」
「おい。」
「リューギ!そんな危険なことしてたのか?」
「本当に心配ね。」
「悪かった。こっちもやることがあってな。」
「そのやることが私をここに連れてくこと?」
「あぁ、そうだ。お前もこの戦争に反対なんだろ。」
「えぇ、そうよ。」
「それにしてもまさか、伝説の傭兵がこんな可憐な嬢ちゃんとはな。」
「伝説?そうなのか?」
「さぁ?そんなものに興味なかったから。」
「伝説の傭兵。今まで一度も傷を受けることなく100年以上戦い続けたって伝説だからどんな化け物なのかと思ってたぜ。」
「ひゃ、100年!」
「もう300年以上は戦っているわ。」
「「「えぇ~!」」」
「龍儀さん、そんな人と互角だったんですか!?」
「いや、互角というより防戦一方だったけどな。」
「なぁ、鑑定していいか?」
「いいわよ。」
「おぅ!・・・嘘、だろぉ。」
龍儀達がドーベルの反応が気になり、リチェリアのステータスを見てみた。
《リチェリア・アブロッサム Lv999》
HP 99999/99999 MP 9999/9999
AT 9999 DF 9999 SP 9999
アビリティ[加護]
この体はあらゆるものでも傷をつけることはできず、あらゆる病に侵されることはない
アビリティ[純潔]
処女である限り不老不死
「「「「・・・」」」」
その場にいた全員が言葉を失った。
「龍儀さん、どうやって戦ったんですか?」
「俺にもわからん。今生きてるのが奇跡だな。」
「あの時は手加減してたから。」
「納得・・・することにしよう。」
「で、でも味方なら心強いわね。」
「えぇ、任せて。」
「こんな心強い任せてはさすがの俺も初めてだ。」
味方になったリチェリアがおもむろに森の方へ向かった。
「どこへ行く気だ?」
「わかったでしょ、私の強さ。私一人でネクヴァスもカメリアスガルドも相手するわ。だから、ここで待ってて。」
「おいおい、いくら強くても相手は国。しかも、二つ。さすがに無理だろ。」
「そうだな。だから、俺も行く。」
「そういうことじゃねぇよ!」
「リューギ!」
「大丈夫だ。それに、来るなとは言わねぇ。ただ、生きててくれ。」
「龍儀さん・・・」
龍儀はそのままリチェリアの隣に立った。
「あなた、死ぬ気?」
「そうだな。だから、死ぬ前に一つ言わせてくれ。」
「何かしら?」
「俺と家族にならないか?」
「えっ・・・」
「悪いな。これが人生初の告白だ。下手なのはご愛嬌ってことで許してくれ。」
「・・・ううん。今までで一番嬉しい告白ね。」
こうして、クスクス笑いながら2国相手に共闘する二人だった。
「さすがにあん中には入れねぇなぁ。」
顔を真っ赤にしたライカとグレンの頭を抑えながらドーベルはボソッと呟いた。




