両親
続きをどうぞ。
天文七年 九月
吉弘達は夜襲により、長島の一向一揆を打ち破り長島を手中に収めた。
日守城 物見櫓
夜にこっそりと部屋を抜け出し物見櫓に行こうとすると、母が待ち構えていた。どうやら俺の行動はお見通しらしい。母はしょうがないわねって顔をして。台所でわざわざ火を起こし、おにぎりと、味噌汁を作ってくれた。おにぎりと、竹筒に味噌汁を入れて、物見櫓に登った。物見の兵士にはおにぎりと味噌汁をお裾分けして黙っててもらった。
長島の方を見ていると遠くに灯りが見えていた。物見の兵士が言うには、火攻めを行っているようだ。史実より早すぎる侵攻だから敵がどのくらいなのか分からない。
現代では、両親とは疎遠で、子供の時はいい思い出が無く心のどこかで母と親父を一歩引いて見ていた自分がいた。
親父が出陣すると分かった時は、どうか無事に帰ってきて欲しと本気で願った。中身は違う人間だが、今は大切な俺の親父だし母もそうだ。二人の自慢の息子になるように生きなくては。
しばらく見ていたが母が心配しそうなので戻ることにした。物見の兵に戻る事を伝え、お礼を言っといた。
物見櫓の兵士
子の刻、物見櫓に1人の男児が登ってきた。その方は阪井様の嫡男である熊丸様だった。熊丸様は私におにぎりと味噌汁を渡して、これで父上には黙っててほしいとお願いしてきた。熱い味噌汁が冷えた身体に染みる。若様に視線を向けると、若様はずっと長島のほうを見ており、阪井様の事が心配なのだろう。長島の方が明るくなった、長島攻めが始まったのだろう。火攻めをしているのか一段と明るい所がある。あの辺りは確か願證寺があったはずだ。熊丸様が帰ると伝えてきた、お礼も言ってくれ将来使える主が熊丸様みたいな方で安心した。
朝になり、母に親父からの知らせは来たのかと聞いたが、まだ来ていないとの事。物見櫓に登り早く知らせが来ないかと一刻くらい待っていると、早馬が城門に入ってきた。すぐに、早馬のところへ知らせを聞きに行った。
早馬に乗っていた兵士
「熊丸様、お味方の勝利で御座います‼︎」『父上は何処だ』『殿は長島を落としたあと周辺の占領に向かっておりまする』「よかったー父上が無事で」
周りの兵達は味方の勝利と聞いて湧き上がっている。俺も親父が無事だと分かったの稽古部屋で木刀を握り稽古を始めた。この稽古だがかなり難しい、今俺が握ってる木刀は脇差くらいの長さだけど今の自分には重いので構えるとどうしてもバランスを取る為にふらついてしまう。練習は何度もしているから短い時間は構えられるけど、長い時間だと厳しい。
刀の使い方が逆なのも驚いた。右利きなのに、刀を打つのは左手で右手は添えて刀がブレないようにするので意識していてもかなり難しい。
昼飯を食べ寺へと向かう事にした。
寺に行くと和尚が話しかけてきた『熊丸殿おめでとうございます。阪井様が長島を落としたそうですね』『ええ、長島を落とし、いまは周辺の占領に向かっているみたいです』『そうですか、では熊丸殿、本日は和歌を作りましょう』(和歌か、現代で習った事無いなぁ)有名な和歌を和尚が読み今度は自分達で和歌を詠むことになった。
結構自信作だったけど和尚は微妙そうな顔をしていた。
城に戻ると親父が帰って来たとの事で、俺は一目散に親父の元へと行った。『父上‼︎おめでとうございます、無事で良かったです』『おー熊丸‼︎帰ったぞ』と言い親父に抱き上げられた。親父は汗臭くて鼻が曲がりそうだったが本当に生きて帰ってくれてほんとによかった。
「父上、戦はどうでしたか?」『ああ、大変だったよ』とだけ言い身体を洗いに行ってしまった。
親父を見送ると一久が此方にやって来て『若様、稽古しっかりとやりましたか?』『やりましたよ一久さん』『では確認しましょう』といい稽古部屋へと引きずられて行った。一久は戦の疲れも見せずみっちりと稽古をやらされた。
稽古から帰ると、評定の間で大宴会が開からており外では、兵士に酒が配られどんちゃん騒ぎをしていた。俺は酒は飲めないけど出てきた料理はご馳走ばかりでどれから食べようか迷ってしまう。美味しいご馳走に、舌鼓を打った。
ご馳走を食べお腹いっぱいになったので俺はすぐに寝てしまったが、大人達は遅くまで宴会をやっていたみたい。
本当に親父が無事でよかった。
ありがとうございました
次回は14日に投稿します