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ギガフロート建設計画跡地攻防戦

 爆風が舞った。


 織姫の肩部に搭載されたミサイルポッドの誘導装置が、前面に展開されるクシュラの一体一体を正確に落とし、殺していく光景を端目に入れながら、鳴海ミズホは『スミレ!』と短く声を出す。


 声に呼応するように、戦闘機形態で空を駆けていた乱菊が、両翼に搭載されたビームブレイドを稼働させ、駆け抜けると同時に二体のクシュラを焼き切った。


二機は合流。ギガフロートの上空で織姫が背部ビーム砲を展開すると、背中合わせに人型形態へと変形した乱菊が、レーザーサーベル二式を二丁掴んで、近づいてくるクシュラを切り落としていく。



 動きには、一片の迷いも無い。



しばし迎撃活動を繰り広げていると、RVセンサーにてクシュラが一切いなくなった事を確認し、今度は衛星通信とのコンタクトを取る。


 AD兵器に搭載できるセンサーには限界がある。監視衛星からの情報を用いて、クシュラがいない事を再確認をし――二機はそこで、武器を収めた。



「状況終了」


『あっけなかったねー。スミレ、幾つ落とした?』


「十二体」


『あ、アタシ十五体! アタシの勝ち~♪』



 きゃっきゃっと喜ぶミズホの声を右耳から左耳に受け流し、通信を取る。



「これより帰投せり」


『無視!?』


『お待ちください』



 スミレの声に反論する、睦の声が聞こえた。少しだけ離れた海域で足を止めている【ひとひら】からの通信だ。スミレとミズホは、続く言葉を待つ。



『作戦区域へ急速接近する、一機のAD兵器反応有り――識別信号【アンノウン】』



 案内を聞いて、スミレが少しだけ緩めていた操縦桿を掴む手を、再び緊張させた。



「――【奴】が来たか!」


『スミレ、上!』



 ミズホの声に反応しながら、スミレがメインカメラを機体上方に向けると、紺色の機体色をしたAD兵器が、手に持つサブマシンガンユニットの引き金を引いた。


発砲、正確な射撃により放たれ、ばら撒かれた銃弾を、ギガフロートに向けて降下しながら避け切った乱菊と、謎の機体に向けてレーザーサーベル二式を構えて突撃する織姫。


 レーザーサーベルが振り切られるが、光刃を掌に搭載されたビームマニピュレーターで受け止めた謎の機体。接触回線にて、ミズホの声が届けられる。



『アンタ、一体何なのよ!』


『マリナはどこだ』



 ドスの効いた、だが静かな男の声だった。スミレは、ミズホの機体から無線通信にて届く声から放たれる名を聞いた。



『マリナはどこだ。どこにいる』


『はっ、知らないよ。どのマリナ? 今時そんな名前、日本にゃありふれてて、わかんないってーの! 日本語分かる!? ドーユーアンダスタンッ!?』



 レーザーサーベルとビームマニピュレーターが弾き合い、少しだけ距離の取られた二機の間に、乱菊が割って入る。



「ここ最近、度々アタシたちの作戦に割って入って、同じことばかり尋ねて……何の理由があるかは分からないが、もう少し堅実的な話し合いを持つ気は無いか? アンノウン」


『マリナ――アリスの遺産、マリナはどこだ』



 話し合いに応じるつもりは無いようだが、今の言葉で、今までには無い情報を出してきたアンノウン。スミレはハッと意識をそちらに向けて、問いかける。



「今、確かにアリスの遺産と言ったな」


『……喋りすぎたか』



 紺色の機体は、背部スラスターを吹かしながら空を駆けて、空域を離脱した。距離が離れすぎた事もあり、後の行動を知る事も出来ない。



『何なのよアイツ! 意味わかんない事ばーっか言って!』


「いや、奴は真里菜を【アリスの遺産】と言った。その意味を、アタシたちは知っている」


『……てことは、やっぱアイツが狙ってるのって』


「ああ――おそらくな」



 その言葉を最後に。いつの間にか近くまで来ていた【ひとひら】の甲板へ二機は着艦し、作戦は終わりを告げた。



**



「バルド、焦っちゃダメだよ。マリナはきっと、手に入る」



 紺色の機体――その機体を操縦する『二人』のパイロットがいた。


 前面操縦桿を握りしめる、厳つい表情とそのがっしりとした体つきが印象強い、アメリカ系の顔立ちをした男――バルドと呼ばれた男は「すまなかった、ソウキ」と一言謝罪の言葉を口にした。



「ううん。バルドがボクの為に、戦ってくれているんだから。ボクは、バルドの事を、サポートしなきゃならないんだ」



 ソウキと呼ばれた少年は、後部座席にあるシステム管轄席に腰かけて、柔らかな表情にニッコリと笑みを浮かべる。


 まだ十代程度だろう程幼く、女の子と見紛うほどの中性的な顔つきをした顔立ちと、黒い短髪が印象強い、アジア系の少年だった。


少年はバルドの頭を撫で、バルドもそれを拒否しない。


 二人は自身の機体――【エネル】の操縦を自動操縦システムに切り替え、少しだけ眠りにつく事にした。


ソウキは、バルドの膝に腰かけて、バルドはそんなソウキを抱きしめた。



二人の寝顔は、とても安らかな表情をしていた。

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