久々に
あの後は、まぁ、察してくれ。うん。
「家も完成したことだし、久しぶりにダンジョン行ってみるか?」
「そうだね~、魔石もご無沙汰だし、行こうよ!」
そうと決まれば即行動だ。
まずはお風呂に入ってから行くとしよう。
俺は寝室の扉を開けた。
「あれ?」
「どうしたの?」
「いや、家具を配置した時に一応掃除したよな?」
「うん。」
「何でこんなに埃っぽいんだ?」
「あれ? あ~本当だね。何でだろうね?」
「不思議だね。」
文句を言っても仕方が無いので、俺達は家の掃除と庭の草むしりを一通り行い、お風呂に入り体を綺麗にしてから出かけることにした。
さすがにお風呂ではしなかったよ? 本当だよ?
「さて、ダンジョンに行く前に、ここの管理をお願いしないとな。」
「だね~」
俺達は依頼をするために、冒険者ギルドへと行くことにした。
・・・・
冒険者ギルドへ到着したので中に入ることにした。
「「「「「お疲れ様でした~」」」」」
パチパチパチパチパチパチ…
「みんな、長い間ありがとうね~」
どうやらお別れ会をしているみたいだ。
誰が居なくなるんだろう…って、あれは…
「ロゼッタさん?」
仕事で疲れたんだろうか、少し老けた感じのロゼッタさんが、花束を持ってにこやかな笑顔で居た。
俺が声を出したため、こちらに気が付いたみたいだ。
「あら、シュウ様じゃないですか。お久しぶりですね。」
「え? 数日前に家を紹介してもらったばかりですよね?」
さすがに昨日一昨日では無いだろう。俺は空気を読む男である。
するとロゼッタさんが大きなため息を付いた。
「今更ながらヘレン先輩が言っていたことが良く分りましたよ。」
「何を!?」
良く分らないが、貶されたような気がする…
それにしてもヘレンさんか、今何しているんだろう?
「まぁ、私には関係無い話ですから、どうでも良いですけどね。」
ロゼッタさんは、とってもいい笑顔でそう言った。
「あ、あの、ロゼッタ副ギルド長? もしかして次って私なのでしょうか?」
そこに一人の女性が震えながら恐る恐る言ってきた。
「副ギルド長はケイト、あなたです。それに私はもう副ギルド長では有りませんよ♪
まぁ、頑張ってくださいね。あの時、部下に知らんぷりされたのはワスレテマセンカラネ!!」
「ひいいいいぃぃぃぃ~~~~!! ご、ごめんなさい~!!!」
新しく紹介(?)されたケイトさんは大泣きしていた。
女性だけの職場って大変なんだなぁ~
「何、無関係者ぶってるのよ、シュウのことで揉めてるみたいよ?」
「え? 何で? 俺関係ないじゃん。」
「…まあいいわ。」
メイは呆れた顔をした。
「それにしても、シュウ様って全く昔と変わらないですね。
もしかして種族はエルフですか? 耳は尖ってないみたいですけど。」
「う~ん、人族だと思っているんだけど、どうなんでしょうね? でも俺自身、前にロゼッタさんに会ってから2、3日しか経ってない感じなんだけどなぁ。」
「何か時間を飛び越えるアイテムとかが有るとかでしょうか?」
「さあ? 例の家を作ってから少し休憩して、家具を揃えてからこっちに来たんだよ? そんなアイテムなんて使った記憶が無いなぁ。」
「あの…シュウさんに売った家ですが、家が出来るまではあっという間で1ヵ月も掛かりませんでしたが、完成したのって確か5年前なのですが…」
「へっ?」
どうやら俺は、また浦島さんと一緒に遊んでいたみたいだ。
「まあいいわ、後はこの子に聞いてちょうだい。それじゃね~! おほほほほほっ!」
高笑いをしながらロゼッタさんは、冒険者ギルドを出て行った。
「ロゼッタ副ギルド長~!!」
ケイトさんが何かを掴むような感じに手を伸ばして叫んでいた。
ロゼッタさんが見えなくなると、ガックリと頭を下げて項垂れていた。
まぁ、がんばれ?
「あ、そうだ、忘れるところだった。
ちょっとお願いが有るんですが、良いでしょうか?」
俺がそう言うと、ケイトさんがビクッっと反応した。
ケイトさんが周りを見ると、他の受付嬢がサッっと目を逸らした。
「これがロゼッタ副ギルド長が感じていた物だったのね…」
ケイトさんはそう言って、涙をポロリと零したのだった。
「あの?」
「あ、はい。とりあえず、そこの窓口でお話を聞きますので。」
ケイトさんが示した窓口へと移動した。
「それで、何の御用でしょうか?」
「えっと、ダンジョンに行ってる間の家の管理をお願いしたいと思いまして。」
「わかりました。管理を行う場所と頻度はどのくらいに致しましょうか?」
「どのくらい変わるんでしょうか?」
「そうですね、家の周りだけで良いのならば、確認と清掃作業で1回銅貨50枚くらいですね。
家の中もとなりますと、銀貨1枚から5枚となります。」
「えっと、家の中の場合金額の差が有るのは何でですか?」
「家の広さはもちろんですが、口止め料も入っておりますね。」
なるほど、個人の家の中を勝手に言いふらさないための措置ってことね。
「分かりました。週1回、キチンとした管理でお願いします。」
「シュウ様の家の大きさはどのくらいでしょうか?」
「えっと、ダイニングキッチンが1部屋、リビングが1部屋、お風呂、トイレ、物置、後は個室が4部屋と、ドレッシングルーム付き寝室が1部屋ですね。」
「思ってた以上に広いみたいですね。でも、その広さなら銀貨2枚で充分ですね。」
「では、それでお願いします。」
「掃除をする際に、家の物を使うことに関しては?」
「あ、好きに使って頂いて構いませんよ。お風呂も良いです。」
「分かりました。ではその様に対応致します。
ちなみに期間は?」
「そんなに長く潜っているつもりはないんだけど、どうしようか?」
「ねぇ、シュウ。」
「何?」
「最低でも1年分は払っておいた方が良いと思うの。」
「そう?」
「うん。」
「ちなみに1年だと幾らかかるの?」
「1人契約の場合ですと、金貨1枚と銀貨20枚ですね。
人数を増やせば、より行き届いた管理をすることが可能です。」
「普通は何人で雇うの?」
「そうですね~、人にもよりますが2~3人でしょうか?」
えっと、3人だとして金貨3枚と銀貨60枚か、まあ何かに必要になるかもしれないのと、計算も面倒くさいし、
「とりあえずこれを預けておきます。雇う人数とかもそちらにお任せします。
足りなくなることは無いと思いますが、もし不足分が出た場合は、追加で払いますので、建て替えておいて下さい。」
俺はそう言って白金貨を渡した。
「え? こんなに!? 3人で雇ったとしても、えっと…単純に計算しても27年以上ですよ?」
「いや、そんなに潜らないから、余ったら返してもらうし。」
「そ、そうですよね。ビックリしました。」
「じゃあ、鍵も渡しておきますので、宜しくお願いします。」
「畏まりました。では、副ギルド長のケイトが承りました。
シュウ様、行ってらっしゃいませ。」
俺達が窓口を離れた時に、ケイトさんの独り言が聞えた。
「なんだ、気前も良いし、言葉使いも普通じゃない、何でロゼッタさんはあんな風に言ったんだろう?」
まぁ何にせよ、良い雰囲気で対応出来たみたいなので良かった。
俺達は冒険者ギルドを後にしたのだった。




