井戸
「メイ、家作りはどうする? 誰かに頼むか? それとも俺達で作ってみるか?」
「そうねぇ、私達って魔石を食べるくらいしかすること無いし、暇つぶしに作ってみるのも良いかもしれないわよね。」
「よし、なら俺達の愛の巣を自分たちで作るか!」
「うん♪」
そうと決まれば、まずはあの土地を何とかしないとな。
更地にすることから始めるとしよう。
さっそく我が家予定地へと戻ってきた。
「まずは、この壊れかけの家をバラすか。」
壊れかけていたからか、少し力を入れるだけで、家はバラバラになってしまった。
とりあえず部材等として使えるかもしれないし、指輪にしまっておくことにした。
指輪のお蔭で、アッサリと更地にすることが出来た。
「さて、どんな家にする?」
「そうねぇ、食事は必要ないけど、趣味として作っても良いし、台所はとりあえず欲しいかな。
寝室と、一人になりたいことも有るかもしれないから、個室も必要よね。
後、絶対忘れてはいけないのがお風呂! こればっかりは絶対作るんだから!!」
「子供部屋とかは良いのか?」
「それも考えたけど、私、子供を産めないから…」
「まだ確定した訳じゃないだろ? とりあえず2部屋ほど作っておいて、生まれるまでは客間として使えば良いじゃん。」
俺がそう言うと、メイは嬉しそうな顔をした。
「そうね!」
「だったら、後は間取りだな。」
俺はメイとあーだこーだと間取りを決めて行った。
6畳の個室が4つ、8畳と1畳半の衣装部屋が隣接している寝室に、ダイニングキッチンにリビング。
そして、お風呂とトイレ、玄関を作った。
この世界は湯あみや寝る以外に靴を脱ぐ習慣は無いのだが、俺とメイの中では家の中では靴を脱ぐと言うイメージが有ったので、玄関と言われるものを作ったのだ。
え? トイレ? 確かに俺達には必要無いのだが、一応客が来たときに無いのも困るので一応用意した。
「こんなもんかな?」
「うん、良いんじゃない?」
間取りが決まったので、建設予定地に、間取りに合わせた部屋の角の位置に合わせて棒を立てて行った。
これでだいたいの家の大きさが分かるようになった。
家の位置や部屋の位置が決まったので、次はお風呂と台所の位置に合わせて井戸を掘ることにした。
とは言っても掘るための道具は無いので、とりあえず手で掘ってみることにした。
サクッ…サクサクサクサク…
最初堅そうな地面だったのだが、見た目と違って柔らかかったのでサクサク掘れたのはラッキーだ。
直径1m程の穴をどんどん掘っていくことにした。
指輪に土を入れて行けるので、いちいち外に持ち出す必要が無いのは楽で良かった。
サクサクサクサクサクサクサクサクサク…カツン!
10m程掘った所で岩っぽい物に突き当たった。
コンコンと叩いてみたら、ボロボロと崩れたので、どうやら岩じゃなくて土の塊だったみたいだ。
厚めの土の塊を崩していくと、水が染み出してきた。
「お、地下水発見!」
さらに3mほど掘り進めた。深さはこんなもので良いだろう。
後は、下から岩を重ねて行き、井戸の壁を作って井戸は完成した。
後は水を汲むための手段だが、後回しで良いかな。
「メイ、台所用の井戸が出来たぞ。」
「ご苦労様。じゃあ、私は井戸の水を汲むための方法を街へ行って探してくるわね。」
「悪いな。」
「任せて♪」
「じゃあ、俺は次はお風呂用の井戸を掘ることにするわ。」
「期待してるわよ、あ・な・た♪」
「おう。」
メイの応援を受けてやる気が出た俺は、再び井戸を掘るために頑張るのだった。
サクサクサクサクサクサクサクサクサク…
サクサクサクサクサクサクサクサクサク…カツン!
「おっ! さっきと同じだ! ならこの下に水が有るかな?」
コンコンと叩いて土の塊を崩していくと、先ほどと同様に水が染み出てきた。
「よし!」
ふと、頭の中に天啓が舞い降りた。『温泉を掘り当てるべし』とのことだ。
温泉って何だ? 言葉からすると温かい泉なんだが、もっと掘れば出てくるものなのかな?
まぁ、出なかったら埋め戻せば良いんだし、掘ってみるか。
サクサクサクサクサクサクサクサクサク…
サクサクサクサクサクサクサクサクサク…
サクサクサクサクサクサクサクサクサク…
サクサクサクサクサクサクサクサクサク…
サクサクサクサクサクサクサクサクサク…
サクサクサクサクサクサクサクサクサク…
サクサクサクサクサクサクサクサクサク…
サクサクサクサクサクサクサクサクサク…ゴゴゴゴゴッ
「ん? 地震か?」
そんなことを思った瞬間、足元から水が噴き出してきた!
俺は水と一緒に打ち上げられてしまった!!
「うひょおおおお~~~!!」
空高く舞い上がった俺は、そのまま今度は地面に向けて加速していく…
「あ、これは死んだな。」
前落ちた時は軽いガイコツだったが、今は肉まで付いた重い体だ。
おそらく助からないだろう。
「メイ。君を残して死ぬ俺を許してくれ。」
ドカッ!
俺は地面に激突した…




