乱獲
あれから俺とメイは地下2階で剣持ちと盾持ちスケルトンを狩りまくる日々を過ごした。
どれだけ食べても飽きないし、ドロップアイテムも指輪で運べるため、俺達はこの階ですっと滞在していたのだった。
「ねぇ、シュウ。」
「何だ?」
「そろそろ一度街に戻ってみない?」
「どうして?」
すると、メイはモジモジして何か言いにくそうに恥ずかしがっていた。
「?」
「相変わらず鈍いんだから~ 少しは察しなさいよ!」
メイがワンピースの脇の下を見せると、布が擦れた御蔭で穴が空いていた。
ふと、自分の服装も確認すると、膝に穴が空いていたり、服が擦れる場所は薄くなって透き通っていたりした。
「気が付かなくてゴメンよ。新しい服とか買わないとな。」
「どうせ指輪に入るんだし、予備も含めて沢山買っておきましょうよ。」
「そうだな。じゃあ街に帰ろうか。」
「うん♪」
俺達は久々に街へ帰ることを決めたのだった。
・・・・
「眩しい~!」
「そうか?」
「もう…シュウってホント周りのことを気にしないんだから…」
「じゃあ、服屋に行くか。」
「待って! 一度指輪の中身を整理した方が良いんじゃない?」
「そうだな、持ってても邪魔なだけだし、お金に換えちゃおうか。」
「うん♪ これで好きなだけ服が買える~♪」
俺達は冒険者ギルドへとやってきた。
両開きの扉を開けて中へと入る。
相変わらずここは変わらないな。
「えっと、ロゼッタさんは…っと。」
受付嬢を見てみたが、それらしき人は…あれ?
「どうしたのよ。」
「いや、知り合いの所に並ぼうと思ったんだけど、ロゼッタさんもエリーさんも見当たらなくて。」
「居ないなら仕方ないじゃない、ほら、並ぶよ~」
「へいへい。」
とりあえず空いている列に並ぶことにした。
「本日は、どの様な御用でしょうか?」
「ダンジョンのドロップ品を売りたいのですが。」
「分かりました。それでは査定致しますので、ここへ出して頂いて宜しいでしょうか?」
「はい。」
俺は指輪から剣と盾を取り出した。
ガラガラガラガラガラガラガラガラ…
「えっ?」
ガラガラガラガラガラガラガラガラ…
「ちょ、ちょっと!?」
ガラガラガラガラガラガラガラガラ…
「・・・・」
ガラガラガラガラガラガラガラガラ…
「これで全部ですね。」
「・・・・」
「あれ? もしも~し!」
「・・・・」
「シュウ、この人気絶してるわよ。」
「えっ?」
メイに言われて気が付いた。この人白目で気絶していた。
しかもあんぐりと開けた口からはよだれを垂らしていて…可愛い顔なのに残念な人だ。
そんなことを考えていたら、横から声を掛けられた。
「あ、あの、買取でしょうか?」
「はい。えっと…あれ? ロゼッタさん?」
妙齢な女性になってはいたが、何と無く面影が有った。
「は、はい。私は副ギルド長のロゼッタですが、何処かでお会いしたこと有りました…あっ!」
ロゼッタさんは、そこまで言うと、ブルブルと震えて涙顔になった。
「ぎ、ギルド長~!! た、助けて下さい~!!」
「何故!?」
「多分、以前のトラウマでも思い出したんじゃないのかな?」
メイが呆れ顔でそう言ってきた。失礼な。
それにしてもロゼッタさんは副ギルド長か、随分出世したもんだ。性格は変わらないみたいだが…
「部下が失礼したね。私はここのギルド長をしている、ゴーバンだ。宜しく。」
「は、はぁ、俺はシュウ、こっちはメイ。宜しく。」
「メイです。宜しくお願いします。」
「それにしても凄い量だな、どうやって運んだんだ?」
「この指輪で運びました。」
「ん? それって確か…いや、こんなに運べるはずが無いな、と言うことは違う魔道具か!?」
いや、多分考えているので合ってると思います。言わないけど。
「そんなもんです。で、買取良いでしょうか?」
「あ、ああ、すまんね。係の者が対応するから、少し私の部屋に来て貰えないかな。」
「どうする?」
「行くしかないでしょ。」
「だよな。」
俺達はギルド長の部屋へと行くことになった。




