ペアリング
朝になり、目が覚めた。
目が覚めたと言うことは寝ることが出来たと言うことだ。
と言うことは、食欲、性欲、睡眠欲と言う、人間三大欲求は全て満たすことが出来ることが確定したのだった。
隣を見ると、腕枕でメイが寝ている。朝チュンだ。
朝チュン? どういった意味だ? 朝は分かるがチュンの意味が分からない。
きっとチュンチュン(謎)した次の朝のことを差すのだろう。
これで俺もとうとう嫁さん持ちか。
前世(?)で結婚していたのかは記憶が無いので知らないが、何となくだが居なかったのではないのかと思う。
そう考えると、初めての相手がメイで良かったと思った。
そんなことを考えていたら、メイも目を覚ましたみたいだ。
「お、おはよう。」
昨日のことを思い出しのか、恥ずかしそうにしている。
「おはよう、今日も可愛いよ。」
「あぅ…」
照れているメイも可愛いな。
「さて、着替えるか。」
俺は起き上がり、軽く体を拭いてから着替えた。
メイも体を拭いて、昨日洗濯しておいた下着を着けていた。
もう見られるのは諦めたみたいだ。いや、もしかしたら行為をしたことで慣れたのかもしれない。
それにしても白い下着って、清楚な感じのメイのイメージにピッタリだ。
それを見た俺のマイサンが、自己主張をしてきたみたいだが、自粛させることにした。
「朝飯食べるか?」
「そうね、暫く食べなくなるんだろうし、食べても良いんじゃない?」
「そうしようか。」
俺達は食堂へ行き、朝食を食べることにした。
今日の朝食は、パンに目玉焼き、サラダとスープだ。
まぁ、朝食だし、こんなもんか。
可も無く不可も無い朝食を食べ終えた俺達は、宿を出た。
「それで、今日はどうするの?」
「どこか行きたいところとかって有る?」
「ん~」
メイが何かを考えている。そして思いついたらしく言ってきた。
「ねぇ、お揃いの指輪を買わない?」
「指輪? どうして?」
「分かんないけど、結婚したらそうしなければ行けないと思ったのよ。
ねぇ、良いでしょ?」
「そうだな、じゃあ買いに行こうか。」
「うん♪」
とりあえず何処で指輪を売っているのか分からなかったため、武器屋で行ってみることにした。
「すいませ~ん。」
「いらっしゃいませ。ん? 前にも来たこと有ったな、確かマジックワンドを買った…」
「覚えていてくれたんですね。」
「まぁ、あの値段をポンと買ってったからな。で、今日はどうした?」
「お揃いの指輪を探しているんですけれど、何処で売っているのか分からなくて、ここに来てみました。」
「若いカップルがそんな感じのことやっていたが、お前さんもそんな感じか?」
「そうですね。」
「かー!! こちとら独り身だってのに、羨ましい限りだなぁ~」
「まぁまぁ、それで何処で売ってますか?」
「ダンジョンから出たマジックアイテムで良いならウチにも有るが。」
「どんなのですか?」
「ちょっと待ってろ。」
店員が金庫みたいな入れ物から箱を取り出してきた。
中には複数の指輪が収められていた。
「綺麗~!!」
メイの目がキラキラしている。
「どうだ? 買って行くか?」
「お勧めって有ります?」
「そうだなぁ、おっ、これなんかどうだ?」
店員が指差したのは、シンプルで何の飾りも無いシルバーのリングが2つ有った。
だけど、何となく今の俺達にはぴったりな物な感じがする。
「これは?」
「こいつはな、物が収納できるマジックアイテムだ。」
「おお!」
物が収納出来るってことは、いちいち背負って運ばなくても大丈夫ってことか?
そう考えると物凄く便利なんじゃないか?
「しかも、この2つのリングは、同じ場所に収納されるらしくてな、お互い共有の物を入れて運ぶのにはちょうど良いんだ。」
「え、これ良いじゃない! シュウ、これにしようよ!!」
「うん、俺も良いと思った。」
じゃあ、買いますと言おうとした所で、
「だがな、これには欠点も有ってな、大して物が入れられないんだわな、これが。」
「そうなんですか?」
「ああ、コイツはな、1つが装備者の体力、もう1つが魔力の量に依存して、入れられる量が決まるみたいなんだ。
騎士団長みたいな人や、魔導士みたいな人じゃないと、とてもじゃ無いと使えたもんじゃないみたいだぞ。」
「例えば、その騎士団長と魔導士のカップルが居たとして、そいつらがリングを付けたとしたら、どのくらいの物が入るんですか?」
一瞬中年の男性と、初老の男性がイチャイチャしている光景が浮かんだが、見なかったことにしょう…
「そうだなぁ、実際試したことは無いから分からないが、そのリュックの中身くらいは入るんじゃないのかな?」
「普通の人だと?」
「ま、小銭程度なら入るだろう。」
「そうなんですね。」
少しがっかりしたが、もともと同じリングを買いに来たのが目的だし、まあいいか。
「それでも良いです。もともと同じ指輪が欲しかっただけだし、問題無いです。」
「そうか、ならこいつは金貨2枚って所だな。」
「え? そんなに安いんですか? マジックアイテムですよね?」
「無限に入る物だったら値段なんか付かないだろうが、さっきも言ったが小銭程度しか入らないからな。そんなもんだ。」
「わかりました。とりあえず買いますので、宜しくお願いします。」
俺は金貨2枚を取り出して支払った。
「まいど!」
指輪を受け取った俺は。
「ほら、メイ、手を出して。」
「う、うん。」
メイが左手をおずおずと出してきた。
俺はメイの薬指にリングをハメてあげた。何となくこの指が良いと思ったからだ。
メイは指にハマったリングを嬉しそうに見ていた。
俺も自分の手に嵌めようとしたら、メイに怒られた。
「何自分でやろうとしているのよ! ほら、貸しなさい!」
指輪を奪われ、同じ様に俺の左手の薬指にリングをハメられた。
「ありがとな。」
「これで私とシュウは、ずっと一緒ね♪」
「ああ。」
「なぁ、独り身である俺に、こんなものを見せつけられて、泣いても良いか?」
店員がそんなことを言ってきた。
俺も人前でそんなことされたら泣く自信があるな。正直悪いことをしたかもしれない。
「わ、悪い。」
「ほれ、もう買う物が無いなら行った行った!」
俺達は武器屋を追い出されてしまった。




