宿屋
その後、俺達は宿屋を探すことにした。
大通りに面した宿屋を見つけたので入ってみることにした。
「いらっしゃいませ、食事でしょうか? それともお泊りでしょうか?」
「宿泊で。」
「宿泊はお一人様銀貨1枚となります。個室をご希望でしょうか?」
「いや、2人部屋で頼む。」
「では、銀貨2枚になります。」
俺は銀貨2枚を支払った。
「2階の3番目の部屋がお客様の部屋になります。
お食事は1階の奥が食堂となっておりまして、直接料金を支払って下さい。」
「わかった。」
「何かご不明な点がありましたら、こちらまでお問合せ下さい。
それではごゆっくりどうぞ。」
カウンターを離れ、一度部屋へ行ってみることにした。
部屋は6畳ほどの広さで、ベットが2つと、テーブルと椅子が2脚有るだけのシンプルな部屋だった。
ふと、メイの方を見ると、そわそわして落ち着かない感じだった。
「緊張しているのか?」
「あ、当たり前じゃない! そういうシュウはどうなのよ!」
「俺? 俺はそうでも無いかな?」
「それって、私じゃ緊張する相手にもならないってこと!?」
「何でそんな発想になるんだよ…逆だ逆!
心から信頼してて、安心できるメイと一緒に居るんだ。
緊張する方が失礼ってもんだろ?」
「そ、そうかな? えへへっ♪」
俺がそんなことを言うと、メイも落ち着いたみたいだ。
「どうする? 飯でも食べてみるか?」
「私達ってご飯食べられる物なの?」
「さあ? 興味が有るなら食べてみるか?
ダメだったら残せば良いし。」
「うん♪」
俺達は食堂へ向かい、空いている席に着いた。
「とりあえず生中1つね。」
「私はカシスオレンジで。」
「お客様、大変申し訳ないのですが、それって何でしょうか?」
「あれ? 生中? 何だっけ?」
「私も何も頼んでおいてアレだけど、カシスオレンジって何?」
「私に言われましても…」
「あ、ごめん、えっと、お酒って何が有る?」
「エール、またはハチミツ酒ですね。」
「じゃあ、エールで。メイは?」
「私はハチミツ酒で。」
「畏まりました。お食事は如何なされます?」
「何が有るの?」
「日替わりディナー、もしくは単品で何かになります。メニューをご確認下さい。」
テーブルに置いてあった紙がそうか。
「どうする?」
「何でも良いよ~」
「じゃあ、日替わりを2つお願いします。」
「日替わりが2つ、エールが1つ、ハチミツ酒が1つで宜しいですね?」
「はい。」
「では、先払いで銅貨2枚と鉄貨80枚になります。」
俺は銅貨3枚で支払い、鉄貨20枚のお釣りを貰った。
結構小銭が多くて邪魔くさいな、仕方ないけど。
「では、少々お待ちください。」
店員がそう言って離れて行った。
俺はふと疑問に思ったことを聞いてみた。
「なぁ、俺の知識にお酒は20歳からってのが有るんだが、メイって18歳なんだろ? 飲んでも良いのか?」
「ん~わかんないけど、あそこので飲んでる子って、私より年下だよね? でも飲んでるし、大丈夫じゃないの?
店員も頼んでも何も言ってこなかったじゃない。」
確かに向こうに居るのは15~6歳くらいに見える。なら大丈夫か。
「お先にエールとハチミツ酒をお持ちしました。」
そう言って、店員がエールとハチミツ酒をテーブルに置いて行った。
「じゃあ、夫婦になった記念と、俺達のこれからを祝って乾杯~!」
「か、乾杯!」
コツンとグラスを合わせてからエールを頂いてみた。
ごきゅ、ごきゅ、ごきゅ…ぷはぁ!
「ビールと違って常温で酸味も有るけど、これはこれで旨いな。
ん? ビール? 何だか忘れては駄目な物の気がするんだが、はて?」
「美味しい~! 甘くてゴクゴク飲めちゃうよ!」
どうやら俺達は飲み食いに関しては問題無さそうだ。
後は飲んだ後がどうなるかだな。
「お食事をお持ちしました。ごゆっくりどうぞ。」
「お、来た来た!」
「美味しそう~!」
持って来て貰った食事は、パンとステーキだ。
良い匂いが漂ってきていて旨そうだ。
「「いただきます!」」
俺達は手を合わせて食べることにした。
あれ? 今無意識にやった行動だが、何かの儀式だろうか? メイも不思議そうな顔をしている。
「今のって何だろうね?」
「わからん、無意識だったからな。でも、やっぱり俺とメイは同じところから来たっぽいよな。」
「そうだね、何か嬉しいかも。」
何だかんだで同郷だと分かると、親近感も沸くだろうし、俺も同意見だ。
どれ、温かい内に食べるとするか。
ぱくり…うん、旨い!
牛でも無く、豚でも無い、鳥とも違うこの肉は何て表現して良い物か、でも旨いからどうでも良いか。
だが、これだとご飯が欲しくなるな…ご飯? 何だ? そう言えば前にもご飯って言葉を思い出したな。
「美味しいね~、ご飯が欲しいかも~ってあれ?」
「俺も今同じこと考えてた。」
「あはははっ、同じだね~」
「そうだな。」
さっきから色々と微妙に過去を思い出しながらだが、俺達は楽しく食事をするのだった。




