お買い物
「うわっ、眩しい!」
久々にダンジョンを出たメイはそんなことを言っている。
一応外に出ても問題は無さそうだが、俺の見えない所で異常が有るかもしれないし、聞いてみることにした。
「確認するけど、日の光を浴びても問題無いよな?」
「問題無いけど、どうしたのよ?」
「いやさ、俺達って一応元スケルトンのアンデットだろ?
アンデットって日光が弱点かもしれないしさ。」
「ちょっと、今それを言う!? もし死んじゃってたらどうするのよ!!」
「俺と同じだったら問題無いと思ったんだよ、実際大丈夫だったろ?」
「…まあいいわ。次からは大事なことは事前に言いなさいよね!」
「へいへい。」
「ったく、で、これから何処に行くのよ。」
「まずは買い物かな。メイが着ている服って俺が適当に買ってきた物だからサイズとか合わないだろ?」
「まぁね。着れない訳じゃないけど、合ってはいないわね。」
「だから、メイの服を買いに行こうかと。」
「ホント! 好きなの買っても良い?」
突然メイが目を輝かせながら聞いてきた。
「構わないけど、限度ってのも有るぞ?」
「分かってるって、嬉しいな~♪」
喜んでいるメイを見ていたら、値段なんかどうでも良い気がしてきた。
ま、本人が良いと思う物を買ってあげるとしよう。
「いらっしゃいませ。」
お店に入ると店員が出迎えてくれた。
「あの、この子に必要な物を一式を買いたいのですが。
何が必要かは、話し合って下さい。」
「畏まりました。ご予算はお幾らでしょうか?」
「特に決めてませんのでお任せします。
ただ、限度が有りますので、買う前に値段だけは教えてください。」
「畏まりました。では、こちらへいらして下さい。」
「じゃあ行ってくるわね。」
「おう。」
待っている間に自分の服も買い帰ることにした。
いい加減ボロボロになってきたからな。
動きやすそうな服とズボン、下着を購入。ついでに着替えて古いのはボロボロ過ぎて買い取れないとのことだったので処分してもらうことにした。
値段は銀貨2枚だった。
・・・・
あれからずいぶんと時間が経過したが、メイはまだ戻ってこなかった。
ふと、頭の中に『女性の買い物に文句を言うとロクなことが起きないので我慢すべし』との啓示が有ったので、じっと我慢の子である。
「おまたせ~」
ようやく戻ってきたみたいだ。
顔を上げると、青いワンピースに白い帽子をかぶり、腰には可愛いポーチが装着されていた。
そして、女性らしい可愛らしいデザインの皮手袋と皮のブーツを履いていた。
「おお、可愛い! 凄く似合っているぞ。」
俺が素直に感想を言うと、
「そ、そうかな? えへへっ♪
じゃなかった。と、当然じゃない!」
何か偉そうにしているが嬉しそうだ。だが…
「その服装でダンジョン入るのか?」
「そうよ、悪い?」
「本人が良いなら良いけどね。ちなみに幾ら?」
俺が値段を聞くと、スススと店員が近寄ってきて、耳元で値段を教えてくれた。
「全て当店お勧めの品でございまして、少々お高くなってしまいましたが、勉強させて頂いて銀貨30枚となります。」
俺の服の15倍ってことは結構高い物みたいだが、許容範囲だな。
「じゃあ、それで。」
俺は財布から銀貨30枚を取り出し、支払った。
一切のためらいも無く支払ったことにビックリしていたが、上客と判断したみたいで、良い笑顔で受け取ってくれた。
「確かに、良い商売をさせて頂きました。」
「また来るよ。」
「またのお越しをお待ちしております。」
俺達は店を後にした。
「あ、あの。」
「何だ?」
「選んでおいて今更なんだけど、この服って高かったよね? お金とか大丈夫なの?」
「まぁ、俺達は睡眠とか食事とか必要無いからな、服とか装備くらいにしかお金使わないし、メイが喜んでくれる顔が見られるんだったら安いもんだ。」
俺がそう言うと、メイの顔が真っ赤に染まった。
「ふ、ふん。一応お礼を言っておくわ。
あ、ありがとう。」
「どー致しまして。」
俺は素直にメイの感謝を受け取ることにした。
ワンピース姿でダンジョン…シュールだ。




