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昇格した


案内されたのは会議室でも使われるような小部屋だった。


「そちらの席に座ってください。」


俺はアイナさんの対面の席へと座ることにした。


「それで、ここに俺を呼んだ理由って何でしょうか?」


「まず確認したいのですが、シュウ様のランクは何でしょうか?」


「ランク? 確か最近登録したばっかりだから、鉄ですよ。」


「最近…ですか? おかしいですね、ここ半年は新しく登録された方は居なかったと記憶していたのですが…」


「そうなんですか? でも、俺登録してから冒険者ギルドに来たのって登録した時を含めて4回目ですよ?」


「確認してきますので少々お待ちいただいて宜しいですか?」


「はい。」


アイナさんは部屋を出て行った。

それにしてもあんな態度を取られたとすると不安になって来たな。

もしかして、俺は光の速度に近い亜高速移動をしていて、浦島効果に陥ったのかもしれない。


「ははっ、そんな馬鹿な話は無いな。」


さすがにそれは有り得ないだろう。おそらく冒険者ギルドで勘違いをしているだけなのだろう。あれ? 亜高速ってなんだ? それに浦島効果ってどういった効果なんだ? 相変わらず意味が分からない言葉が出るな…

そんなことを考えていると、アイナさんが戻ってきた。


「えっと、大変申し訳無いのですが、シュウ様が冒険者ギルドへ来たのは4回目で合っては居たのですが、登録は9ヵ月前となっております。」


「はい?」


「ですから9ヵ月前です。」


「えっと?」


どうやら本当に浦島さんになっていたみたいだ。


「参考にですが、シュウ様は今まで何をやっていたのか教えて貰っても宜しいでしょうか?」


「ここに来た以外はダンジョンに居たけど? あっ、武器屋にも2回ほど行ったかも。」


「それだけですか?」


「はい。」


「そうですか…」


アイナさんは少し考えていたが、考えがまとまったみたいなので質問してきた。


「シュウ様は、スケルトンソルジャーをソロで倒したで間違い無いでしょうか?」


「剣を持ったスケルトンだよね? 倒したよ。」


「ですよね、そうじゃなければ、あの剣の数に説明が付きませんからね…」


「ちなみに何本有ったんですか?」


「数えて無かったのですか?」


「途中から面倒になっちゃって。てへっ♪」


「可愛く言っても駄目ですよ? 数を誤魔化されたらどうするんですか?」


「その時はその時かな、でも信用ってそういう物でしょ?」


アイナさんはため息をついた。


「シュウ様は何も考えてないのか、しっかりと考えているのか分からなくなってきました。

 良いでしょう。持ち込んだ剣の数は346本でしたよ。」


「おー、思ってた以上に多かった。」


「すべて買い取りで宜しいでしょうか?」


「はい。」


「では、金貨だと多いので白金貨3枚と、金貨46枚となります。

 お受け取り下さい。」


どうやらすでに清算していたらしく、お金も持って来てくれていたみたいだ。

俺はお金を受け取った。財布がお金でジャラジャラだ。


「ありがとうございます。」


「それで、シュウ様にお伝えしなければならないのですが。」


「何でしょう?」


「シュウ様はすでにスケルトンソルジャーをソロで倒しています。

 実はスケルトンソルジャーをPT等の集団でも構いませんでしたが、倒すことが出来たら銅級に昇格出来るんですよ。」


「ほうほう?」


「実は前回来られた時には、すでに条件を満たしていたのですが、家の職員の手違いで昇格できませんでした。

 申し訳ありません。」


多分怒らせてしまったせいで、忘れてしまったのだろう。


「なので、シュウ様のギルドランクを更新したいのですが、宜しいでしょうか?」


「あ、はい。」


「それでは、ギルドカードをお預かり致します。」


俺はカードを渡した。


「では、手続きを致しますので、窓口の方へ行きましょう。」


アイナさんが部屋を出たので着いて行くことにした。

窓口で、俺のカードを機械に通し、操作をする。

ガシャコン! とカードが排出された。


「はい、昇格致しました。

 これでシュウ様は銅級となりました。おめでとうございます。」


俺は銅色のカードを受け取った。

カードは色が変わった以外、特に何も変化は無かった。


「これで以上となります。

 何がありましたら受付の方へ質問して下さい。」


「はい。」


「それでは、私、アイナが対応させて頂きました。

 またのご利用をお待ちしております。」


とりあえず予定外で昇格してしまったが、悪いことでも無いので素直に喜ぼうと思う。

用事も済んだことだし、俺は冒険者ギルドを後にした。


お金持ちになりました。

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