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素材


俺は冒険者ギルドまで戻ってきた。

両開きの扉を開けて中へと入る。


ざわっ!


何か注目されたが、ジャック先輩の御蔭で誰も俺に突っかかる人は居なくなったのは有難かった。

いつかお礼をしなくてはな。

さっそく窓口に並ぶことにした…と思ったら皆さん順番を譲ってくれた。

みんな優しいな、新人にこんなにも優しくしてくれるんだもんな。

俺も新人が来たときは優しくしてあげようと思った。


「ヘレンさん、こんにちは。」


「え? えと、シュウさん?

 何でスケルトンを背負っているんですか?」


「え? 素材を買い取ってもらおうと思ったので持ってきたのですが。」


コイツはガイコツじゃなくてスケルトンだったのか。1つ勉強になったな。

それはさておき。


「あー」


何だ? この可哀相な物を見た様な視線は…


「シュウさん、大変言いにくいのですが、スケルトンは魔石以外は買い取ることが出来ません。」


「そうなんですか?」


「はい。」


「えっと、コレどうしましょう?」


「ダンジョン内に放置して頂ければ、1日で消えますよ。」


「あ、はい。」


要はダンジョンに捨ててこいと言うことか。仕方ないな。


「お騒がせしました。これ捨ててきますね。」


「はい。またのご利用をお待ちしております。」


俺は再びスケルトンを背負い、冒険者ギルドを後にしたのだった。

ダンジョンに帰る前に、使い物にならなくなった剣も処分していくか…

冒険者ギルドのすぐ隣に武器屋が有ったので行ってみることにした。


「すいませ~ん。」


「いらっしゃいませええぇぇぇ~~!?」


「やたらと元気の良い店員さんですね。」


「違う! 驚いたんだ! 何でスケルトンなんか背負ってるんだよ!」


「あ、これですか? 素材を売りに行ったのですが、スケルトンは買い取ってないみたいでして…」


「そりゃそうだ。逆に売れると思って持って行く行動力に驚きだ。

 そんなことも知らないって、お前、新人か?」


「ええ、今日登録しました。」


「なるほどな、それで此処へは武器を探しに来たって訳か。」


「いえ、どちらかと言うと売りにでしょうか?」


「家もスケルトンは要らんぞ?」


「これは街中に捨てる訳にも行かないのでしょうがなくです。

 売るのはこれです。」


俺は折れたロングソードをカウンターに出した。


「あー折れちゃたのか、これだと素材にしかならな…ん?」


店員がマジマジと折れた剣を観察している。


「おい、これどうやったんだ?

 尋常じゃない力で折られているぞ?」


「そうなんですか? 拾った物なんですけど、試しに素振りをしてみたらポキッっと折れちゃったんですよ。

 どうやら不良品だったみたいで…」


「う~ん…」


店主は何か納得いかない感じで剣を見ていた。


「まあいい、それでこれは売るのか?

 まぁ、鉄の素材だけなので銅貨2枚って所だな。」


「治すことは出来ないんですか?」


「これをか? 買った方が安いぞ?」


「あ、そうなんですか。なら売るで良いです。」


「よし、契約成立だな。ほら銅貨2枚だ。」


俺はお金を受け取り、財布へと閉まった。


「それで、新しい武器は買って行くのか?」


「幾らですか?」


「このロングソードと同等品なら金貨2枚だな。」


「お金が足り無いです。」


「…参考にだが、幾ら持ってる?」


「えっと、銀貨1枚、銅貨15枚、鉄貨30枚ですね。」


「世の中にはな、人間諦めも肝心って言葉が有ってな。」


「売れる物が無いってことですね。良く分ります。」


「こっちも商売だからな。」


「まぁ、そこまで困ってないので、お金が貯まったら来ますよ。」


「そうか、まあ頑張れよ。」


「はい。」


俺は武器屋を出でダンジョンに向かうのだった。


骨は売れませんでした。

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