この世界から、「お弁当とかに入ってる緑の草みたいな奴」が全て消え去ってしまいました。
世界から「お弁当とかに入ってる草みたいな奴」が無くなった。
とある連盟が、「バランの重要さ」というものを議論し、いらないものだと決定したのだ。
正式にはバランという名前だが、首をかしげる人もいるだろうからあえてこの名を使った。
だがいちいち「お弁当とかに入ってる(以下略)」というのも面倒なのでバランと統一させてもらうこととする。
こんなものが消えようが消えないが、どうでもいいと思うかもしれないが、これがないとお弁当の見栄えがあまりよくない。
案の定というべきか、バランごときが消えたところで動揺することも、何かが困ることもなかった。挙げ句の果てに
「バランってなに?」
というものが出てくるほどだった。
「いただきまーす!!」
少年たちはそう言いお弁当をあける。半分には茶色やオレンジのおかず達がぎっしりと詰まっていて、もう半分にはキラキラと宝石のように光るお米に梅干しが1つ乗っかっていた。
「おお、お前の豪華じゃん」
「だろ??」
友達にそれを見せびらかし嬉しそうな表情をする。そのお弁当にはもちろん、バランは入ってなかった。
「そ〜いえば前まで、緑の草みたいなやつ入ってたよな?」
ふと、一人がそんなことを訪ねた。だが他の奴はさぞどうでも良さそうな顔でこう言い放った。
「あんなもんあってもなくても同じだろ」
「それもそうだな」
お弁当に視線を戻し、ウィンナーを1つすくい上げると口の中に放り込んだ。そしてそれをとても嬉しそうな表情で咀嚼した。
そう、あの人が来るまでは。
それは突然だった。上空に現れた謎の円盤。周りには黄色いランプが装飾されていて、チカチカと点灯したり消えたりをくり返している。
そこから現れたのは紫の宇宙人。人のような容姿だが違うのは触覚が付いている。
代表で男が出てきてその不気味な宇宙人に語りかけはじめた。
「えー、なんの御用でしょう?」
「ア....ア.....日本語ワカル....」
その宇宙人はぎこちない口調で喋り始める。それを見ていた周りの観衆はざわめきはじめた。
「バラン...バランヲ...我々ハ、バラン星人。我ガ星デハ、バランをトッテモ愛シ、集メテイル。バランヲ...我ガ愛シノバランヲ....!」
「バランとはお弁当に入ってるあれですか?それならもうこの星にはそんな不要なものありません」
「ナイ...!ナイ...!ナイ..!」
それを聞くと荒ぶったように同じことを繰り返す。
「ナイ...!バランガナイ...!バランガナイ星...要ラナイ!!」
怒りをあらわにしたその宇宙人は戻ろうとする。代表で出てきた男は慌ててそれを呼び止めた。
「バランなら!バランなら今すぐ用意します!今すぐ!!」
「ソウカ...ソウカ...」
落ち着いた様子でそう呟く宇宙人にはすでに怒りの表情はなかった。
「おい!今すぐにバランをこのお方に!」
バランは急速で作られた。非の打ち所がないギザギザは芸術品と言っても過言ではなかった。
「バラン...!バラン...!」
宇宙人は嬉しそうな表情で戻って行く。謎の円盤は浮き、まるで瞬間移動するかのような移動で星に消えていった。
円盤の去ったあとは、いつも通りの星々が広がっていた。
「バランは重要なものだということがわかった。これからはバランを大切にしよう」
「そうだな」
その日、バランを祀る祠が建てられ、この日を「バランの日」とすることとなった。
「っていう話を書こうと思うんだが」
原稿を持った男は友人にそう持ちかけた。だが友人はどうでもいいような表情で
「ふーん」
とだけ言った。