表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/19

第十一話。お仕置き後の雑談タイム。

「そして。最後にこれは」

 

 大きく飛びのいた竜凰りゅうおうは空中で制止。

 その位置関係は、ちょうど男冒険者とブルカーニュ(彼女)

 直線で結ぶ配置になっている。

 

「畜生今度はなんだっ」

 すっかり戦意を喪失している中くらいの男は、

 ただやけくそ気味に悪態をつくことしかせず。

 

「もう『実はわたしが魔王でした。死になさい』でも

『今から世界を一息で焼き尽くします』でも

なんでもこいってんだっ!」

 

 小さな男も、やはりやけくそで叫び散らす。

 

「俺の命もここまでか……」

 しかし背の高い男だけは、諦めた様子で両腕を広げている。

 

 

「これは。不要な戦いを強いられたわたしたちモンスター(住民)と」

 竜凰の色がまたかわって行く。

 

「な……なんだと?!」

「お、おいマジかよ?!」

「美しい……」

 

「これは、まさか。我が家に言い伝わっていた……

空駆ける美しき虹色の竜っ!?」

 

 冒険者たち全員が驚愕する中、虹色の輝きと化した竜凰は、

 再び大きく翼を広げた。

 

 

「この。山の怒りですっ!!」

 

 濃さを増した輝きは、そのまま自身の姿を象った光の本流となり、

 人間たちにその力を思い知らせるように これまでの二つからすれば、

 遅すぎるほどに緩慢に迫る。

 

 

「なんだこりゃっ!?」

 

 見えない壁とぶつかったその竜凰型の光は、

「ぐ、うごけないっ!」

 

 押しあうことで、人間たちに踏ん張る以外の行動を

 許さないほどの圧力を放っている。

 

「この光に呑まれるなら、死しても……」

 ミシミシと音がする。

 それに驚愕したのは、今虹色の竜の光とせめぎ合っている

 結界を作り出したその人。

 

「なんて力っ、護星纏命陣ごせいてんめいじんが悲鳴を上げてっ!」

 言った直後、バリンとガラスが砕けるような綺麗にして脅威の音がする。

 

 

「くっ、だめっ。今から強化しようにもまにあわないっ!」

 もう一度砕ける音。

 

「うわあーっ!」

 上ずった、恐怖に怯えた中くらいの男の情けない声に、

 

「ぐおあっっ!」

 覚悟を決めていたような背の低い男の声と、

 

「さらば、わが現世」

 満ち足りたような背の高い男の声が唱和。

 

 

「まさか、こんなに強いなんて……!」

 そこでまた砕ける音がし、

「きゃあっっ!」

 ついに女冒険者すらも弾き飛ばして、その光は地面に激突。

 

 

 ーー辺りを真っ白に塗り替えた。

 

 

「やりすぎちゃいました」

 白い光が収まると、ゆるさんが地面から顔だけを出していた。

 

 周囲を塗りつぶすほどの魔力の爆発が起きた。

 しかし地形が変化したり大穴が開いたりと言った、

 劇的な変化は起きていない。

 

 変化と言えば、いくつかあった岩から丸みが消えて、

 墓石のような形と艶の物ができあがっていることと、

 

 岩が砕けたのか砂利が散乱して、

 土の道の上に砂利道が一層増えたこと。

 

 それと穏やかだった川の流れが、

 轟轟と音を立てるほどに、激しくなっていることぐらいの物である。

 

 

「これが、空駆ける美しき虹色の竜の力ですか」

 

 ザクザクと砂利を踏みしめて、

 自分についた埃を気にすることなく歩み寄って来る女冒険者は、

 感心したような声でそう言った。

 

「あ、あのぉ……お仲間さんたちは?」

 ものすごく遠慮がちに尋ねるゆるさん。

「ああ、それだったらほら」

 そう言って左手で背後を示す。ゆるさんが目と耳を向けると。

 

 

「魔王怖い魔王怖い魔王怖い」

「モウオシオキハヤメテクダサイ」

「ああ、虹色の光でなにもみえない」

 

「あ……あの。大丈夫なんですか? あの人間たち?」

 

 未だに軽傷を付けずに呼ぶゆるさん。

 彼女がいかに彼等を嫌っているのかがわかり、

 女冒険者は苦笑いした。

 

「自信と心は傷付いたでしょうけど、発狂ってほどじゃないですから大丈夫でしょう」

 てきとうに言ってるように聞こえる女冒険者の声色に、

 ゆるさんはごめんなさいやりすぎましたの声と同時に身を縮めた。

 

 

「ところで虹竜こうりゅうさん?」

 

「ブルカーニュ、もしくはゆるさんでおねがいします。

なんか、その呼び方すごく似合わないので」

 

 控えめに言うと、女冒険者は

 ゆるさんがこう名乗ったのを聞いたエルと同じように、軽く吹き出した。

 

 そして、

「わかりましたゆるさん」

 と笑いを残した声で頷いた。

 

 

「それで、ゆるさん。どうして足元にいるんですか?」

 女冒険者の言うとおり。

 現在ゆるさんは、彼女の足元に顔だけが見えている状態になっているのだ。

 

「反省中です」

 しょんぼり答えると、ゆるさん後ろの面々から

 クスクスと笑いが起こった。

 

 

 正面にいる女冒険者からは見えないが、背後と上からは

 どういう状況かが丸見えである。

 

 ゆるさんこと竜凰ブルカーニュは、虹色の竜の光が爆発し

 周囲が白くなっている間に落下するように着地し、

 

 自ら入るための穴を抉り出していたようで、

 そこに入っているのだった。

 

 

 答えの意味が掴めなかったか、女冒険者はしゃがみこんだ。

 そして「え?」と笑いながら驚いた。

 

 

「穴があったら入りたいとは言うけど。ほんとに孔に入ってるなんて」

 そこから暫く、女冒険者は笑い続けた。体中を赤黒から赤に染めたゆるさんは、

 楽しげに笑う人間さんから隠れるように、顔も孔に引っ込めてしまった。

 

 

「はーい、出て着ましょうねぇ」

 笑いが収まって。体を前に倒しながら言うと、

 女冒険者は穴に腕を突っ込んだ。

 

「はなしてください!」

 くぐもった悲鳴が聞こえた。

 

「ジタバタしないでください」

 抱きかかえた穴の中の、

 とても今しがた虹色に輝いていた威厳ある存在には見えない竜に、

 女冒険者はあやすように言った。

 

「よいしょっ」

 持ち上げると思った以上の重量だったのか、僅かにふらつく。

 

「やぁあぁ!!」

 一方持ち上げられた側は、四本の足に加えて

 翼すらもバタバタさせて暴れている。

 

「駄々をこねるちっちゃい子みたいな声出さないっ!」

 力を込めて後ろに倒れ込む形で引っ張り上げる。

 

 

「ぅぅぅ……」

「ふぅ。恥ずかしがってる時間長すぎですよ」

 そのまま抱きかかえた状態で、女冒険者は疲労の色を言葉に乗せた。

 

 

「ひどいじゃないですか」

 女冒険者のお腹に手 前足を置く位置で体勢を落ち着けたゆるさんは、

 そう抗議の声を上げる。

 

「こっちとしてはお話ししたかったので

強硬手段に出させていただきました」

「そうなんですか?」

 

「はい。あの、ちょっと、下 足の方に行ってくれませんか?

起き上がれないので」

 言われてゆるさん、ちょこちょこと後ろに下がる。

 

 ゆるさんの顔が腰の辺りについたところで、

 ゆるりと女冒険者は体を起こした。

 

「あの、人間さん」

「なんですか?」

 一瞬考えるような表情で間を置いてから、女冒険者は返した。

 

「今気が付いたんですけど」

 今の顔はなんだろうと思いながらも、

 気が付いたことを伝えるゆるさん。

 

「どうして顔の下に二つ、山があるんですか?

エルさんにはないのに」

「山? ……ああ」

 

 なにを言ってるのかわからなかったようで僅かに眉根を寄せた後、

 答えが出たとばかり頷いた女冒険者。

 

「ここは胸ですよ」

 ツンツンと己の左の山をつつきながら、示して答えた。

 その衝撃で彼女の豊満なそれがふよふよとたわむ。

 

 

「え? 胸なんですか?」

 

「はい。大きさは人それぞれです。そしてわたしの胸が

大人の男性の手にも余ることは、、わたしが護星纏命陣ごせいてんめいじん

使うことができる理由でもあります」

 

「……胸が山になってることと、さっきの魔法が関係あるんですか?」

 理解できないと首をかしげるゆるさんに、女冒険者はええと頷く。

 

 

「女性の体付きは、すなわち魔力を操れる力の大きさを表しています。

胸やお尻が大きければ大きいほど、強大な力を扱うことができるんですね。

わたしみたいに魔法に関してばっかり力を入れてると、

重たくて大変なんですけど」

 

 苦笑する女冒険者は、

「どうもこの現象は人間に限ったことみたいですが。ひょっとしたら人型のモンスターにも

あてはまるかもしれないですけどね」

 と推測を交えて続けた。

 

 

「面白いですね、そのお話」

 興味深いと言う声色で返したブルカーニュ。

 

 それに答えるように、上空から「えええっ!?」と言う

 困惑した少女の叫びが聞こえて、一人と一匹はそちらを見た。

 

 すると、

 

「ちょっとまってっ! それ、ほんとの話っ?!」

 と言う声を伴って、少しも高度を下げていないにも関わらず

 声の主(ぬし(が、なんとビユウンの上から飛び降りてきたのである。

 

 そのあまりにも無茶な行動に、二人は思わず目を閉じた。

 

 

 ズドンッ!

 

 

 激しい音と土埃を伴って、むせかえった声を無事の知らせに

 それは着地した。

 

 

 

 派手にむせている元気な声を聞いて、

 一人と一匹は安堵して目を開いたのだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。


関連作品。

異世界転生2D6(ツーディーシックス)
同じ世界の作品、2D6の後半にクロスオーバーする。


小説家になろう 勝手にランキング
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ