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俺と女傑と可憐な華と  作者: Kazuya2009
第2部・1.迫る陰謀
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迫る陰謀・9

 レイナ達がそれぞれ村に移住して一週間ほどが経過した。

 今のところ目立った動きもなく彼女からの定時連絡も全員問題なく来る。

 周辺に変わったこともなく、監視されているような雰囲気もないとの事だった。

 失踪の頻度は多いといえど、ここ二ヵ月程は無かったと報告は受けている。つまり事件が起きるにしてもあと数週間は大丈夫ではないかということだった。

 

 俺はと言うとレイナ達が囮として活動しているうちにスカーレット隊の新体制案を思案していた。

 これからの事を考えると少し体制に手を入れておくべきだと思ったからである。

 丁度、新体制案がまとまって来てある程度形に出来たのもあり、この日リムルの執務室へと向かった。

 この一週間、ナーシャにはリムルの警護について貰っているからだ。俺の考えた案をナーシャにも見て貰いある程度意見を貰いたいのである。

 執務室に到着するといつも通り、中に入った。

「あら、オルビスじゃない? どうかしたのかしら?」

 リムルは読んでいた資料を机に置いて俺の方を向く。

 遊びに来たわけではないのは分かっているのだろうが、心持ち少し嬉しそうだ。

 そうだな。スカーレット隊はリムルも大きく関わっている、彼女にも意見を貰おう。

「ちょっとスカーレット隊新体制案を持ってきたんでな、ナーシャに見て貰おうと思ってたんだが、リムルにも見て貰えるか?」

「スカーレット隊の新体制ですか?」

 ナーシャが意外そうに聞いてくる。

 すでに今までのスカーレット隊とは違う時点で十分体制は変わっていると考えるからだろう。

「新体制案ね。面白そうじゃない。せっかくだからお茶でも飲みながら話しましょう。ナーシャ、お願いできるかしら?」

「はい、かしこまりました」

 ナーシャが一礼をすると紅茶の用意を始める。

 リムルは俺に応接スペースへと促した。

 ソファーに座ると、リムルは嬉しそうに言う。

「オルビスが本気になって来て、わたしも嬉しいわ」

「まあ、今後の事を考えるともう逃げられないことを悟ったからな。なら少しでも前を向いた方がいいだろう?」

「いい心がけね。惚れ直したわ」

「おいおい、からかわないでくれ」

 照れくさそうに言うと、リムルは小さく笑う。

 紅茶を淹れてきたナーシャが応接スペースまで来ると俺たちのやり取りを微笑ましく見ていたのか、笑みを浮かべながら紅茶をテーブルに置いていく。

「お二人は本当に仲が良いですね。リムル様とここまで砕けて話すのはアルストム王国広しといえど、オルビス隊長くらいじゃないですか?」

 最後にナーシャが自分の紅茶を置いて俺の隣に座る。

 わずかに香水の香りが心地いい。

「俺は良く知らないが、どうなんだ?」 

「そうね。さすがにこう砕けて話せる相手といったらあなたとザイルくらいかしら。ただザイルはわたしとあなたとの事を意識してか一歩引くようになってしまったのだけれども」

 ザイル、何故一歩引く?

 俺とリムルに遠慮する必要はないだろうに。

「さて、揃ったところでこれを見て欲しい。大きく変わるのは副隊長を七名に増やして、ナーシャは俺専属になって貰いたいんだ。リムルの警護は副隊長二名での交代制、残り四名でスカーレット隊を運用してもらいたい。緊急時は俺も口を出すが基本は皆に任せられる部分を増やしたいと考えてる。レイナは言うまでもなく今まで通りだ。俺は逆に今まで以上にレイナ側の動きに合わせてノラスティス公爵や公爵以外の協力者と連携を取りたいと思う」

 最終的にはレイナの目的達成後、俺が実質的にレイナの役割を担えるようにするのが良いと考えた。

「オルビス隊長、実質分隊長と副分隊長を格上げするという事になりますが新たな副分隊長については?」

「そこは今の分隊長、副分隊長の意見を聞きたい。俺としてはこの体制にして副隊長は誰でも隊長補佐が出来る体制にしたいという事だ。あとは俺不在の時の意思決定も今まで以上に出来るようにしてもらいたい」

「分かりました。皆の意見も聞きたいところもあるので決定というわけには行かないと思いますが、大筋は良い考えだと思います。あたしから言えることは分隊の数を減らして分隊の規模を大きくしてもいいかもしれないと思います」

 分隊の規模を大きくか。

 今の分隊は六名ないし七名だが、三分隊くらいにすれば十名程度の分隊に出来る。

「分かった。その辺も考えてみよう。リムルはどうだ?」

「そうね……。悪くはないと思うわ。ただわたしの専属についてはあまり変えないで欲しいわね。ナーシャは今までも副隊長としてたまに顔を合わせてたから良いけど、他の人は緊張しちゃうんじゃないかしら?」

 なるほど。確かにそれはあり得る。

 ナーシャから引継ぎが終わるまではナーシャも居て貰わないとならないな。

「ありがとう、もう少し考えてみる余地はありそうだ」

「どういたしまして」

 ふふふと嬉しそうに笑うと紅茶を口に運ぶ。

 リムルの憂いしそうな表情を見ていると俺も嬉しくなる。

「他にも少しスカーレット隊強化にやりたいことがあってな」

 俺は今度は絶対防御系の魔法をスカーレット隊全員習得させる計画を話し始める。

 少しの間、リムルはリラックスしながら俺とナーシャの話を聞きながら時折、意見を述べてくれるのだった。

 

 この時はまだ気が付いていなかった。

 俺たち以上に反国王派の動きが活発だった事に。

 そして事件は意外なところから起きることになるのだった。

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