迫る陰謀・8
リムルの真意を問う鋭い眼光に俺は頷きながら答える。
「そんな難しい話じゃないんだ。もし王国の繁栄を単に考えているなら今のままでもいいだろうなと思っていたんだ」
「じゃあ、もし新しい国のあり方を考えた場合は?」
腕を組みつつソファーの背もたれに寄りかかり、訪ねてくる。
「スカーレット隊だけ、もっと言えば今の体制のままじゃ絶対に厳しいだろうと考えてる」
「それはどうして?」
「そもそも新しい国のあり方をどういう方向に持っていくかで全く進め方も体制の引き方も変わるということさ」
つまり貴族支配を辞めるとあれば国内の領土の管理の仕方から政治体制も変わる。帝国的な支配なら王族が国のトップであるのは変わらないが地方の政治はどうするのか?南の方の国では民衆を主役に置くとあるが、その場合どのように民衆に政治に関わらせるかで取るべき体制は全く違う。
リムルはレイナ、ノラスティス公爵だけでは当然無理。俺やスカーレット隊がいても同じだ。協力を取るべき人間が多くなる。今いる反王国派のように抵抗勢力は否応なく現れるのだ。
だがリムルは国家繁栄だけを考えていたからこれらの覚悟は杞憂に終わったのだが。
それらの事を話すとリムルが意外そうな表情で俺を見ていた。
「あなたでも、そういう事は考えるのね。少し、見直したわ」
「あたしも驚きました」
女性二人から失礼な評価を受け、俺は苦笑いをする。
今まで平々凡々と過ごせたらと考える姿勢が祟っていたのは否めなかった。
「まあ、リムルの話を聞く分なら今の体制のままで良さそうだ。なら俺もその方向で覚悟を決めるだけだ」
「まだ覚悟出来てなかったの?」
半ば呆れたように言うリムル。
「危険な任務に対しての姿勢の覚悟さ。レイナの域にはまだ程遠いが、皆を絶対に一人残らず守りきる覚悟は固めるという事さ」
戦略として犠牲を出さない。これは最も難しい選択だ。むしろ戦略的に捨て駒を用意する方が楽だ。俺は捨て駒の選択をしたくなかったからこそ今回、前回の任務をやらせたくなかったのた。
だからと言って守り切るのも難しい。単に俺の覚悟不足ということになるんだが。
守り切ると覚悟を決めてしまえば後は、実践あるのみなのだ。
「あなたの話はそれで終わりでいいのかしら?」
「ああ。俺のやるべき事を明確にしたかったんだ」
目的は果たせた。もう迷わない。
いかに難しい任務であろうとやり切る、そして誰一人犠牲を出さない。
「いい顔になって来たわね。ついでにわたしとの結婚も覚悟を決めちゃいなさいよ」
「お前な……」
「ふふふ、でも期待して待ってるわよ」
全く、この女王様は。
しかし、俺自身の中で決着付けないといけない事がある。
俺の中の問題も、解決しないとダメだな。
「あたしは愛人希望ですので、いつでも声を掛けてくださいね?」
「おいおい、ナーシャまでからかうなよ」
リムルと言いナーシャと言い、俺の周りの女性は戦いだけじゃなくて恋愛事情まで強い精神の持ち主だな。
まずは目の前のやるべき事を整理して行くか。