迫る陰謀・7
家庭の事情もあり、更新が遅れて申し訳ありませんでした。
おとりの人選メンバー承認から一週間後、レイナ含め計六名は反国王派貴族の治める領土の村へと派遣されていった。
出発までの一週間で遠隔会話魔法を習得してもらい、俺は六名に追跡魔法と生体確認魔法を施した。
これで俺が六名全員の安否と居場所を突き止めることが出来る。
追跡魔法、生体確認魔法の利点は魔力で繋がっているが魔法を使っている感覚がほとんどない事だ。
普通魔法を起動したら自身で制御する必要があるのだが、この魔法は発動後効力が勝手に継続するのだ。使用する魔力も少なく目印を付けた相手さえいれば意識しなくとも継続的に追えるようになっていた。更に追跡している相手を思い浮かべるだけで相手がどこにいるかが分かるから恐れ入る。
六名が発った事で実質的に作戦の開始となった。
俺は全員を見送った後、ナーシャと共にリムルのところへと行く。
ナーシャはレイナが発った事でリムルの警護に、俺は彼女に一つ確認したいことがあったからだ。
「隊長、リムル様に確認したいこととは?」
王宮の廊下を歩きながら聞いてくるナーシャに俺は一つの懸念を口にする。
「国の将来をどう考えているのかを確認したいんだ」
「国の将来ですか?」
「ああ。詳しくはリムルと一緒に聞いてくれ」
ナーシャは頷く。
国の将来についてリムルがどう考えているか。
これはエルリスと対峙したことで気になり始めたことでもある。
エルリスは元々貴族支配の世の中を嫌っていたのだ。二年前の反乱は小規模だったが、要は彼女がしたいことは国を壊すことだ。
つまりエルリスは貴族支配の無い国づくりをしようと考えている。それがどういったものなのかは知識の中でしか俺は知らないが。
リムルがそこも踏まえて国のあり方をどう考えているのか。
リムルの考え次第では俺も今後の身の振り方を考えなければならない。
国王執務室前まで来ると、いつも通り親衛隊が入り口で立っていた。
敬礼し、面会に来たことを伝えるとそのまま通される。
中に入るとリムルが俺に笑顔を向けて迎えてくれた。
「あなたから来るという事は、何かあるのね?」
「分かるか?」
「ええ。だってこれでも自分の夫にしたいと思う男性なのよ?」
いつにも増して上機嫌で言う。
全く、こっちはこれから少し重い話をしようと思うのに毒気が抜かれる。
重苦しい空気になるよりはいいか。
リムルが立ち上がると、部屋の奥にある応接スペースを指す。
ソファに座ると、俺が話し始める前にナーシャが突然質問をしだした。
「あ、あのリムル様、一つだけお聞きしてもいいですか?」
「ええ、いいわよ?」
「そ、その……。隊長がもし国王になったら公妾がいてもよろしいですか?」
「え?」
顔を赤くしながら言うナーシャに俺は一瞬固まる。
公妾がいてもいい。それはつまり愛人がいていいかという意味だ。
いや、言いたいことは分かる。先代国王は硬派でリムルの母親以外、傍に置かなかったが先々代は数人愛人がいたらしいのだ。
リムルは俺の事を好きだと言ってくれているし、結婚も前提でいるわけだが。
「ナーシャ、彼の公妾は何人くらいになる予定なの?」
「へ?」
これまたリムルも変なことを質問する。
スカーレット隊の中で話もあるのだろうが、これは一体?
「少なく見積もってもわたしを含めて四人はいると思います。見込みだと最大で八人くらいは」
「まあ、いいわ。そのくらいなら」
「お、おい! 何なんだよ? 急に公妾とか言い出したかと思えば人数まで!」
男としては嬉しくなくはないがこうも勝手に話が進むのはどうも気持ちが悪い。
だが、俺の疑問に女性二人はジト目で俺を見るとため息をついた。
「オルビス。あなたは何も考えなくていいのよ。その時が来たら悩みなさいな」
「は?」
「隊長、鈍いと後で辛いですよ?」
「おい?」
何んだか良く分からないが物凄く失礼な話をされたような気がした。
「あ、隊長。もうわたしの質問は終わりなのでどうぞ」
「え? あ、ああ……」
調子が狂うな。
いや待てよ? そうか、国の将来を考えるならそのことも考えなければならないのか?
いやいや。俺が聞きたいのはそんな事じゃない。
「じゃあ、気を取り直して」
軽く咳払いをして気を取り直す。
「リムルは今後、国をどうしたいと考えているんだ?」
「それはどういう意味で聞いてるの?」
リムルの眼光が鋭く俺を射抜く。
核心を付いた質問だったか。
「そうだな。リムルがこれからやろうとしている事は、単に反国王派の監視だけなのか? 王国の繁栄だけを考えているのか? 例えば新しい国の形を考えるとかそういう事は考えていたりはしないのか?」
もし単に国の繁栄しか考えていないならいいのだが。
「面白いことを聞くのね? それはエルリスと言う反乱分子の考えに同調しようとしてるのかしら?」
エルリスの名前が出てきたことを考えると彼女の考え方をリムルは知っていることになる。
口調とは裏腹にリムルの眼光は真意を確かめようと更に鋭く俺を射抜くのであった。