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俺と女傑と可憐な華と  作者: Kazuya2009
第2部・1.迫る陰謀
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迫る陰謀・4

今回も遅くなりました。どうも最近、疲れが酷くて更新がおろそかに。

次回は出来るだけ早く出そうと思います!

 王国魔法研究所。

 国家単位での魔法研究を進める機関であり日々新しい魔法を開発し、他国で開発された魔法の解析や対抗策を考える場所だ。

 そして俺の父さんが所長を務める場所でもある。

 次期所長候補が俺だとかで勝手に期待をかけてくるのが正直困っているのだ。

 行けば早く昇進しろだの、それが嫌なら研究者としてここに来いとうるさいから正直来たくは無かったのだが……。

 これもスカーレット隊の任務を考えるとそうも行っていられないためここへ来た。

 受付では顔パス。

 廊下で人とすれ違えば、ようやく気持ちを固めたんですか?と聞かれる始末。

 所長室前の受付でも、笑顔で迎えらえた上にとうとう観念したんですか?だ。

 曖昧な笑顔を浮かべながら俺は所長室へと入っていく。

 入って一番印象的なのが大量な本だろう。

 棚にぎっしりと入った書物は魔導書や論文などが並んでいるのだ。

 その価値は場合によっては一国の存亡を左右させてしまう程である。

 魔導書に囲まれるような形で部屋の奥にある机で魔導書を読む父さんがいた。

 俺の姿を確認すると本を閉じて席を立ち、右手で応接用のソファーを勧めてきた。

 俺は応接用のソファーに座ると、テーブルを挟み向かい側に父さんが座る。

「オルビス。三年ぶりだな、お前が魔導士隊の隊長になって以来か」

「そうだな。ところで予め要件は手紙で送っておいたんだが、読んでは貰えたか?」

「ああ。お前もとうとう逃げられなくなったらしいな」

 にやけながら言う父さんの顔が妙に憎らしいが、事実だけに言い返せない。

「まあ、そんな複雑そうな顔をするな」

 どうやら知らぬ間に複雑な表情をしていたようだ。

「まず追跡魔法の方だったな」

 父さんはそういうと数枚の紙をテーブルに置いた。

「これは?」

「追跡魔法の論文だ。もちろん私が書いたものだ。お前の要求たとえ遠くにいても感知でき、かつ周りの魔導士に一切気が付かれない魔法があれば知りたいだっただろう」

「ああ」

 レイナ達を送り出すに当たってどこにいるかを常に把握できる魔法が必要だと考えた。

 危険すぎる上に、何かあった時に対処が遅れれば人命にかかわるからだ。 

「読めばわかるが、それは隠密性を持った追跡魔法だ。リムル嬢が女王陛下になった時にいち早くこの魔法の開発を頼まれたものだが、まさかこれをお前が一番最初に実戦で使うとはな」

「リムルが?」

「あの子は女王になった時からお前を中心とした部隊の構想をしていたんだが、その時に必要になると想定されることを話してくれてな? この魔法はその一つだ」

 なるほど、俺を結婚で脅してでも向かい入れたかったわけだ。

 しかし、これが一つというと。

「他にもあるのか?」

「今回はあと二つだ」

 そういうと論文だと思われる紙が数枚テーブルの上に置かれる。

「なんの魔法なんだ?」

「追跡魔法の応用で相手の生体情報を得られる魔法と、同様に応用で魔法をかけた相手と会話ができる魔法だ。もちろん両方とも隠密性を保ったまま常時使用できる」

 父さんは確かに研究好きだし、今までも数々の魔法の開発に携わってきたのは知っているが、これはもう天才の領域だろう。

「は? なんだよ、そのとんでもない魔法は?」

「追跡者、監視者の生死や危険な状況の察知、あとは敵地侵入時の隠密性を考えた対話手段を考慮した魔法だ。リムル嬢の考えを知れば知るほどこれらの魔法が必要だろうと思ってな。三つとも検証は済んでいるから安心して使え」

「……つくづく父さんは規格外な知識と技術の持ち主だな」

「ふふふ、父を舐めるなよ?」

「舐めたことないさ」

 疎ましくは思ったことあるが。

「で、最後のお前の要求だが、すでに完成済みだ」

 そういうと一枚の紙がテーブルに置かれた。

 最後の要求。

 これはエルリスが使った絶対防御中和を参考に絶対防御領域内からの攻撃を可能にできないかと考えて頼んだものなのだが、すでに完成していたとは。

「はっきり言えば、その魔法を使用できるようになるとアブソリュート系の魔法が無意味になってくる。いや、防御魔法そのものが意味がなくなると言っても過言じゃない」

「どういうことだ?」

「この魔法の本質は絶対防御領域を中和して使うわけではない。絶対防御領域外で魔法を発動させるものだ。どういうことか分かるか?」

 絶対防御領域外から魔法を発動する。

 絶対防御領域は空間をずらすことで魔法が届かなくなるからこそ“絶対防御”にふさわしい領域を実現した。逆を返せば空間をずらしているせいでこちらからの魔法も相手には届かないわけである。正確にはどこへ魔法がいくか想像もつかないわけだ。

 中和はそれを強制的に元の状態にすることで魔法を届かせることに成功した。

 しかし、父さんが出してきた魔法は違う。空間をずらしたままでその空間外から魔法を放つと言っているのだ。

 つまり……。

「魔法の遠隔発動か!」

「ご名答、この魔法は任意の場所から魔法を放つことが出来る。その気になれば山小屋から一国を消失させることさえ可能だ。しかも魔力痕跡なしに使用できる」

 魔法の遠隔発動自体は予め魔法の痕跡を付けておくことで行うことが出来るが、この場合は相手に魔法の痕跡も伝えることになってしまう。

 しかし、この魔法は危険すぎる。

「事の重要さが分かったか」

「分かったよ。切り札として出来るだけ使わないように心がけるさ」

「真意が伝わったならいい」

 父さんは安心したかのように言う。

 今後の事をいろいろ考えると先に貰った三つの魔法だけでどうにか運用出来ればいいが。

「さて、要件はこれで終わりだろう。お前に聞きたいことがあるんだがな?」

 父さんの声音が変わった。

 すごく嫌な予感がする。

「リムル嬢から話は聞いているが、レイラ嬢の事を結構気にかけているそうじゃないか。将来はリムル嬢とレイラ嬢の、どちらを選ぶ気だ?」

 嫌な予感は的中した。

 この親は、子供の色恋沙汰に興味津々なのだ。

 しまった。今回ばかりはこのことを念頭から忘れていた。

 この後、散々弄られたうえで開放されることになる。

 ちなみに俺がどちらを選ぶと言ったかはここでは言えない事である。

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