迫る陰謀・3
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ノラスティス公爵は俺達と向かい合う形でソファーに座る。
白髪の入った髪をした初老の男性で、凛々しい顔立ちに穏やかな表情をしている。
貴族らしい礼服を着て、腰には短剣を携えていた。
彼もまた数少ない短剣使いで、腕でも一流だと聞く。
俺が王国兵団に上がる前に一度、訓練で手合わせしてもらったことがあったがザイルの父親から学んだ技の悉くを打ち破られた覚えがある。
若いころは王国兵団副団長にして先代国王の相談役でもあったと聞く。
頭は切れて軍師としても一流だったそうだ。
「久しいな、オルビス」
「ええ。俺が王国兵団の入団試験を受けた時くらいですか。それでレイナの事をなぜ公爵が?」
「彼女の父親とは古くからの友でな」
「それは初耳ですね」
ちらりとナーシャを見ると、事情を知っているらしく小さくうなずく。
レイナの父親もノラスティス公爵と同時期で王国兵団で部隊を複数まとめる中隊長をしていたと聞いている。
剣術に優れ、剣豪として名を馳せていた。
間違っていなければレイナの父親は俺が子供の頃にあった東の隣国ラスタート帝国の侵略を防ぐべく出兵し帰らぬ人になっているはず。
その時についた敵からの称号が風の悪魔だ。
入団してからの武勇伝でしか聞いていないが、人の目で動きをとらえることが出来ない動きで敵を切り伏せていったという。
恐らくレイナと戦った時の動きに近いものなのだ。
「レイナの父親はラスタートの防衛で亡くなったと聞いてますが……。もしかして父親の死と関係が?」
「そうだ。私も報告でしか知らぬのだがな? 反国王派の人間の手引きで不意打ちを受けたらしい。手薄になっている陣だったそうだが」
レイナがスカーレット隊入ったのは父親の死に関係する貴族の情報を得るためか。
だから今、レイナは必死なんだな。
「当時の反国王派、少なくとも実行犯は捕まえているんですよね?」
「もちろんだ。もっとも最後の最後まで口を割らずに自害されたのだがな」
全くもって厄介な連中よと、ぼやくノラスティス公爵。
反国王派は国内貴族の半数はいると言われているが、表立って反国王派を表明しているのはだいたい中堅貴族だ。
表明しておらず反国王派に属する貴族は正確には把握しきれていないと聞いている。
「レイナについては大体察しがつきました。それでノラスティス公爵、スカーレット隊の任務についてお聞きしたいのですが?」
「いいだろう。お前の事だ、危険すぎると言いたのだろう?」
「お分かりでしたか。まあ、危険すぎると言うのもそうですが、スカーレット隊でなければならないのでしょうか? 確かに忠誠心は国内一だと思いますが。やはりこれもレイナが関係しているのですか?」
「ああ。さっきの話を聞けば、なぜスカーレット隊なのかも察しがつくと思うがの」
確かにノラスティス公爵の言うとおりだ。
レイナがスカーレット隊に入った目的が父親の敵討ち探しなら今の状況はレイナにとって叶ったりだろう。
「そもそも、なぜリムルがお前さんをスカーレット隊の隊長にしたか分かるだろうに」
「そうでしたね……」
リムルの事をよく知りリムルの事を考えられる人間。
親しい人間でないと今のポジションは務まらない。
裏切りの可能性をわずかでも減らしたいからこその人選だった。
「お前さんの不満は恐らくこれで解消したのではないかな?」
「そうですね」
ちらっとナーシャを見れば笑顔で頷かれた。
なるほど。結局俺に懸かっているという事だな。
俺が望む望まずは関係なく、すでに動き始めた新生スカーレット隊の命運を預かってしまったというわけだ。
「いい加減、お前さんも覚悟を決める時だ。もう魔導士隊の部隊長なんかで満足されてはかなわんからな」
こちらもお見通しだったか。
魔導士隊の部隊長で一生を終えるには周りが許すわけがなかった。
「父さんはこの件には?」
「関わっておらんよ。伝えてはいるがな」
父さんが関わっていないならいいか。
あの人は俺が平穏気ままに生きようとする俺に良く喝を入れに来るくらいだったからな。
さて、不満は解消とは行かないがやらなければならない事は山積みだ。
「ノラスティス公爵、ひとまずやるべき事を一つ一つ片づけなければならないので、ここら辺で俺は失礼しますよ。ナーシャ」
「はい。隊長、行きましょうか」
「ああ」
ソファーから立ち上がるとノラスティス公爵が一声かけてきた。
「オルビス。出来るだけの情報はこちらで調べる。だからリムルを頼んだぞ?」
ノラスティス公爵はノラスティス公爵で動き回っているのだろう。
「分かりました。あいつのためにも一肌脱ぎますよ」
俺はそういうとナーシャと共にノラスティス公爵邸を後にする。
2018/09/04:誤字修正