可憐な華と波乱の朝
ちょっと息抜き程度のショートストーリーです。
レイナが寝ぼけてオルビスのベッドに。
さて、オルビスの運命はいかに!?(笑)
なぜ、こんな事になっている?
確か昨日の夜は書類を片付けて、各分隊からの定時報告で隊員たちの状況を確認した後、軽くお酒を飲んで寝ただけだ。
寝る寸前まで、俺は確かに部屋で一人だったはず。
そう。確かに一人だったはずだ。
「だと、言うのにこの状況はどうなっているんだ……」
ベッドの上で右側を向くと、ネグリジェを着たレイナが俺の腕をしっかりとホールドしていた。
右腕には二つの豊かで柔らかい感触、手はやはり柔らかく白磁のような肌の腿に挟まれていたのだ。
俺が連れ込んだ?
冗談は良してくれ、確かに寝る寸前まで俺は一人だった。
じゃあ、レイナが寝ぼけて?
それしか考えつかない。
「う……ん……」
レイナの甘い吐息が顔にかかる。
やめてくれ、俺から理性を奪おうとしないでくれ……。
内なる凶暴な野獣が目を覚ましてしまうじゃないか。
「パパぁ……」
さらにレイナは寝ぼけて俺の腕に抱き着く力を強める。
く、まずい! レイナの顔が俺の顔にかなり近い!
一歩間違えれば唇が俺の頬に当たるくらいの距離だ。
え? 天国じゃないかって?
状況が合意の上なら天国だろうさ。
だが、今の状況は違う。
くっ、考えろ!
いいか、落ち着け。ここは戦場だ。敵に囲まれて脱出しなけばならない状況だ。
人質が取られて救出して逃げなければならない。
どうする?
まずは相手の守備に隙が出来るのを待たねば……。
するとふと腿の力がわずかに緩む。
チャンスだ!
兵の一人をまず、敵の監獄から救出!
だが、状況は悪い。本体が敵の主力に囲まれて身動きが出来ん。
「ん……?」
手をなんと退けることはできたが、レイナが何か物足りなさそうに俺の手を求め追撃しようと体を更に縮めてきた。
「っく……」
捕まる訳にはいかず、相手の動きをよく見て挟まれないように気を付ける。
次の瞬間、腕の方の力が緩まる。
この機会を逃すわけには!
「のわ!?」
だが、右腕を離したレイナは俺に覆いかぶさるように腹に圧し掛かってきた。
もう完全に抱き枕状態と言えよう。
「どうすんだよ、これ……」
もはや敵地からの脱出を諦めて俺は天井を仰ぐ。
こんなところ誰かに見られでも……。
突然、部屋のドアがノックもなしに明け開かれた。
振り向くと、女性らしいシルエットが見える。
「隊長ー こっちにレイナさん……、あ、やっぱりいましたか」
ナーシャが寝起きの状態で俺のところにやってきた。
しかもレイナ同様にネグリジェではないか。
「お、おい、ナーシャ。なんて格好で男の部屋に」
「え? まあ気にしないで下さい。わたしと隊長の仲じゃないですか」
少し恥じらうように言いながら、ベッドの横まで来るとレイナを起こし始める。
「起こすのか?」
「当然です」
そういうとナーシャはレイナの頬を軽く叩いた。
「レイナさん、起きてください。ここ隊長の部屋ですよ?」
頬を叩いたくらいでは起きないと見たのか、今度は乱暴にレイナの体を揺らしながら起こそうとするナーシャ。
この光景に俺はようやく合点がいった。
「初めて知ったが、これがレイナの?」
「はい……。レイナさん時々、トイレの帰りに寝ぼけて誰かの部屋に行っちゃっうんです」
以前、ナーシャから聞いたことがあった。
レイナはちょっと寝ぼけるくせがあるんですよ、と。
しかし、これは。
「ふふふ、隊長には刺激が強かったみたいですね……」
ナーシャは俺のある部分に視線を送りながら顔を少し赤くしながらもまるで、子供のいたずらを見つけたように笑いながら言う。
くそ、なんてところを部下に見られてんだ俺は。
「隊長、みんなにはこの事、内緒にしておいてあげるから安心してくださいね?」
何かを企んでいるナーシャの笑顔を見ながら、俺には女難の相がきっとあるのだろうと肩を落とすのであった。