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俺と女傑と可憐な華と  作者: Kazuya2009
第1部・4.可憐な華は毒を制す
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可憐な華は毒を制す・13

 放ったライト・ブラストは無情にもエルリスに襲いかかり、彼女の張った障壁を貫いた。

 防ぐ術を失ったエルリスは完全に沈黙する。

 無理もない。二百の光弾だ。凌ぎきるのは至難の技と言って過言じゃない。

 最も、殺すつもりはなく捕縛する事が俺の中では目的だったのだが上手くライト・ブラストを制御しきれたようだ。

 意識だけを奪い、俺は彼女を拘束する。

 彼女には聞きたいことがあるのだ。

 魔薬の事、首謀者の事、二年前の事。

 ここで会ったのが偶然だったとは言え、拘束できたのはとても大きい。

 まずは魔薬をエルリスの体から抜くのが先だろう。今の状態ではとてもまともな会話は出来ないだろうから。

 エルリスが拘束されたのを見た他の兵達は蜘蛛の子が散るように逃げていく。

 逃げる兵士をユフル、復帰したレイナ、敵を殲滅して合流したセシル、パトリシアが追撃していく。

 とりあえず無事に襲撃から防衛することが出来たようで一安心だ。

 拘束したエルリスを抱きかかえながら、俺は屋敷の方まで戻ってきた。

 追撃は皆に任せてトルファとリーナが一休みをしている。

「トルファ、ガード・フィールドの展開、お疲れ様。リーナも治療よく頑張った」

 抱えていたエルリスを館の壁に寄りかけながら二人を労う。

「隊長、来てくれて助かりました」 

「ホントですわ。オルビス兄様、よくこちらが危ないとお気づきになりましたね?」

「実はな」

 二人に事の経緯を話をするとなるほど、と納得したようだった。

「確かに、キーマス伯爵は女性となると、とてもだらしなくまた無節操になりますね。それ以外は事前の情報とは一致せずはっきり言って混乱しました」

「ええ。オルビス兄様がキーマス伯爵の周辺に怪しいところがないか探るようにと指示を出されなければ、ここまで準備も出来ませんでしたわ」

 最初の報告の時に出した指示が功をなしたか。

 だが、それでも腑に落ちない部分が多いが。

「キーマル伯爵の襲撃はいきなりか?」

「いきなりと言えばいきなりでしたが、あれだけの部隊です。さすがにこちらも気が付きましたよ」

 トルファが苦笑いをしながら言う。

 どうやら襲撃自体は急だったようだが準備する時間はわずかとはいえあったようだ。

「一先ず襲撃の防衛は成功だな。レイナ達が戻り次第、王都に戻るぞ」

 俺の言葉に二人は頷いて答える。

 レイナ達が戻ってきたのはその十分程度経過してからだった。


 帰りのために手配した馬車で揺られながら俺たちは王都へと向かっていた。

 手綱を握るレイナの隣に俺は座り風景を眺めながらキーマス伯爵の事を思い出す。

 襲撃鎮圧後、キーマス伯爵と会話する機会があった。少なくとも俺と話をしている間は事前情報とは違い紳士的で誠実だったのだ。

 話の最中、隣にいるレイナが気になるのか、ちらちらと見ることがあったのは、まあ噂通りだからだったのだろう。

 一応、俺が聞いていた内容でレイナ達を内偵させていた事を話したが冷静だった。

 またノラスティス公爵がキーマス伯爵の情報をこちらに流していたと言ったら、納得した顔で頷いていた。ノラスティス公爵は国のために様々なことを考えて行動をしていることから、反乱等はないはずだと語る。自分が利用されたことについても以前、ノラスティス公爵に協力を惜しまないことを彼に伝えていたためだろうとの事だった。

「オルビスさん?」

 今回の事件に思いを巡らせているとレイナが声をかけてきた。

「レイナ、なんだ?」

「オルビスさん。ごめんなさい。実は今回の事について大体の事はリムル様に聞いていました」

 小声で俺にしか聞こえないように言う。

「そうか」

 済まなそうに謝ってくるレイナに今回の流れの全てに納得がいった。

 スカーレット隊に男性の隊長を入れること。

 キーマス伯爵への内偵のこと。

 それによる男性耐性の訓練のこと。

 どれを取ってもレイナがすでに承知済みの事ばかりだった。

 最初の件からリムルの計画として挙がっていたのだろう。

 逆に俺はリムルに試された形になったと考えてもいい。

「驚かないんですか?」

 レイナが不思議そうに俺の顔を見る。

「いや、むしろ全てに納得行ったよ。じゃあ、ノラスティス公爵の事も分かっているんだな?」

「ええ……。実は反国王派の動きがここ最近活発になっていると聞いてまして」

「そのための新生スカーレット隊か」

 無言でレイナは頷いた。どうやら俺の予想は大体当たっていみたいだ。

 リムルとノラスティス公爵に一杯食わされたな。

 リムルは女王の風格が備わってきている上に、国難を上手く乗り越えるために様々なことに覚悟を決めていると見た。

 全く、この国の女性たちの肝の強さには頭が下がる。

 落ち行く夕日を眺めながらアルストム王国の命運をすでに託されていると感じずにはいられなかった。

ここまでの中では長い章になりましたが、これで「可憐な華は毒を制す」は完となります。

一先ず、ここで一区切りです。

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