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俺と女傑と可憐な華と  作者: Kazuya2009
第1部・4.可憐な華は毒を制す
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可憐な華は毒を制す・12

 爆発を抜け、百を超える炎の弾丸が俺目がけて襲い掛かる。

 さすがだ。俺がこの爆発を抜けてくるのさえ読んでいたとは。

 だが!

「まだまだ甘い! “アブソリュート・フィールド”!」

 薄暗い膜が俺を包む。膜は空間をずらした絶対防御領域と外との境界だ。

 炎の弾が絶対防御領域の膜に阻まれて、俺に当たることなく小規模な爆発を起こす。

 俺はそのまま魔法を維持しつつ、地面に着地。エルリスを追撃するべく地を蹴った。

 十数メートル離れていた間が一瞬で詰まる。

 なおも炎の弾丸は降り続くなか、エルリスは不敵な笑みを浮かべて俺に向けて右手を翳す。

「あぁはははぁ! 掛かりぃましたぁわねぇ! “アブソリュート・ガード”!」

「な!」

 エルリスは二年前には使う事のなかった絶対防御の魔法を使ったのだ。しかも、それだけじゃないアブソリュート・フィールドにアブソリュート・ガードをぶつけて来たのだ。

「こんなぁ事がぁ出来るのぉ、あなぁたは知ってぇましぃたかぁ?」

 薄暗い膜と薄暗い障壁が重なった瞬間。

「しまった!」

 絶対の防御力を誇るアブソリュート・フィールドがアブソリュート・ガードの空間干渉によって打ち消されたのだ。

 聞いたことはあった。

 アブソリュート系の魔法は絶対の防御を誇るが、同じ特性のもので干渉することが出来るという事を。

 今までアブソリュート系の防御魔法を使う相手と俺は出くわしたことがない。

 たぶん運が良かったのだろう。

 だが俺と敵対する相手はどうだ?

 こちらは絶対的な防御力誇り、ただ暴力の限りを尽くすだけだ。

 対策の一つや二つも考えるだろう。もっとも、今まで俺を前にして逃げられた人間はエルリスを除くと皆無だった。

 それよりアブソリュート・フィールドを打ち消されたという事は。

 次の瞬間、俺は背中に強烈な衝撃と痛み、灼熱と表現してもいい熱さが襲い掛かった。

「うがぁぁぁっ!」

 口から苦痛の声が漏れる。

 久しぶりだった。こんな痛みを味わったのは父親から指導を受けていた時、以来だ。

 幸い、致命傷ではなかった。これくらいなら意識を失うことはない。

 だが、はっきり言って完全な不意な衝撃だった。

 地面に叩きつけられて、その衝撃で右腕に痺れているのかまともに動かない。

「くっそ……。やりやがったな」

 何とか左腕を使って立ち上がるとエルリスを睨みつける。

「気持ちぃいいぃですぅわぁ! あなぁたをぉ見下ろぉすというぅことがぁ!」

 なるほどな。こっちは気分が悪い。

 だが、これで分かった。これが彼女の奥の手なのだろう。

 つまりアブソリュート系防御に頼らなければいいだけの事だ。

「は! 見事だと褒めてやるよ。だが、やっぱりまだまだ詰めが甘いな」

 右腕を抑えながらでは強がりとも見えるが。

「なぁんでぇすってぇ!!」

 俺の挑発に声を荒らげるエルリス。

 本当に詰めが甘い。俺を倒したいなら優位な立場を味わうのではなく、一気に畳みかけるべきだったのだ。

 魔薬の影響だからハイな状態で緻密さが薄れている証拠だ。

 ならエルリスに勝ち目はない。

「俺を殺りたいなら、見下している時間はなかったはずだぞ? それともまだ勝てるとでも思ってるのか?」

 挑発にエルリスの顔が醜くゆがむ。

「そのぉ余裕なぁ態度がぁいつぅまでぇ出来まぁすかねぇ! “ライト・ブラスト”!」

 エルリスの周りに光弾がいくつか生まれたと思った瞬間、光弾は炸裂するように俺に向かってくる。

「“ガード・シールド”」

 襲い掛かる光弾に対して、俺はカード・シールドを多重展開させてそれらを受け流す。

 まともに受けたのではガード・シールドでは防ぎ切れない。

 なら受け流せばいいのだ。

「こんな程度じゃ俺は倒せないぞ! “ライト・ブラスト”!」

 今度は俺がエルリスと同様の魔法を使う。

 しかしその数は約二百だ。

「なぁ、なんでぇすぅ!? そのぉでたぁらめぇな数はぁ!?」

 無数にも見える光弾にエルリスから笑顔が消えた。

「絶対防御で防いでもいいが、俺にした事は当然俺にだって出来るわけだ。それが何を意味するか分かるよな?」

「オぉルぅビぃスぅー!」

 悔しそうに俺を睨みつけるエルリス。

 だが、同じことは二度は通じないし、相手にも同様の事が出来ることを見せている以上もうエルリスは詰んだも当然だった。

「終わりだ。エルリス・アルファート」

 二百の光弾を一気にエルリスに向けて撃ち放つのだった。 

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