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俺と女傑と可憐な華と  作者: Kazuya2009
第1部・4.可憐な華は毒を制す
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可憐な華は毒を制す・11

 敵と対峙しながら、俺たちは膠着状態に入った。

 パトリシアの一撃がここまでの道を開いたのが影響しているようだ。

 唯一、エルリスは俺を殺したくてうずうずしているだろうと思われるが。

 とりあえず状況を確認だ。俺は小声でユフルに問いかける。

「キーマス伯爵は無事なのか?」

「あのエロ伯爵ならピンピンしてますよ。何事もなければ館の地下通路から街の東側にある私兵の詰所へ避難出来ている頃だと思います」

 エロ伯爵と来たか。ユフルも小声だというのに若干の怒気が含まれてるのが分かる。

 女癖の噂だけは真実らしい。

「あと敵の規模は分かるか?」

「わたしが分かる範囲だと約五百くらいです。わたし達で、すでに二百くらいは片付けてますが。あの魔導士が来てから形成が逆転してます」

「なるほどな……」

 残りは約三百。エルリスを俺が抑えられればユフルと私兵だけで持つだろう。

 リリナが治療に当たっている兵士が回復すれば戦線に復帰できるだろうし、レイナもそのうち戦線に戻れるはずだ。

 あと数時間から半日もあれば切り抜けれる。

「俺がエルリス。あの魔導士を抑える。ユフルはこのまま守備しつつ治療の終わった兵士、レイナらと合流して一先ず撤退まで追い込んでくれ。撤退しないようなら殲滅して構わない。あとからセシルとパトリシアも来るだろうから大丈夫だろう」

 セシルとパトリシアが相手してたのは大体二個小隊程度。

 あの勢いならそう時間も掛からず片付けてきそうだ。

「なぁにぃ、こそこそぉ話をしてるんですぅ!?」

 エルリスがイラついたように声を張り上げた。

 しかし、こんな変なしゃべり方をする奴だったか?

 性格が変わったのか?

「すまんな。ちょっと内緒話だ」

「気にぃいりませんわねぇ!」

 目も正常に思えない。

 となると、魔薬か?

「悪い悪い、あんたは俺とやりたんいんだろ?」

 小声でユフルにあとは任せたと告げると、俺は歩きながらエルリスの方へと歩いていく。


 エルリスに俺が来た時に手を出すなと言われているのか、さっきの奴らとは違い手柄を取りには来ない。

「随分と、ハイみたいだが魔薬か?」

 どう考えても異常だった。

「そうぅよぉ! あなたぁを殺すぅためにぃ使ったぁのぉ!」

 エルリスは叫びながら手の平を翳した。

「“エクスプロ―ド・ブリッド”!」

 直径が成人男性くらいの巨大な炎の玉が数個、エルリスの頭上に現れる。

 ここからでも、肌が焼けるような熱量だ。

 エルリスの近くにいた兵士たちが悲鳴を上げながら退避する。

 それもそうだ。この魔法は着弾と同時に周辺に爆発、炎をまき散らす無差別攻撃魔法だ。

 通常、単騎で敵集団に突っ込む場合や、先端を切り開くのに使用する。

 少なくともすぐ近くに味方がいる状況では使用しない。

「これをぉ、受けれるかしらぁ!? あなたがぁ避けれぇば後ろのぉ娘ぇたちは丸焦げぇよおぉ!」

 威力はガード・フィールドやガード・シールドを突き破るくらいだ。

 いかに多重展開してようとこの数のエクスプロ―ド・ブリッドを爆発させればただでは済まない。

 手を振り下ろすと、炎の玉は俺に向かって落ちてくる。

「エルリス、俺を舐めすぎだな。“ウォーター・ウォール”、“ウォーター・ジャベリン”、“エアー・ブラスト”」

「な!」

 エルリスの驚く声が聞こえる。

 ウォーター・ウォールが俺より後ろ、館の敷地と館の屋根までをも覆うくらいの水の壁を作る。

 普通ならせいぜい数人を守る程度の大きさだ。

 次に俺の頭上に迫る巨大な炎の玉を水の槍が全て貫き炎の威力を抑える、爆風は風の嵐が包み込んでその熱量による上昇気流で上空へと衝撃を逃がした。

 つまりエルリスの攻撃は「避ける」までもなかったのだ。

 俺の知っているエルリスはこんな粗い攻撃をしない。

 正確無比でかつ素早い魔法攻撃で確実にこちらの手を封じてくる。

 無発声発動こそ出来ないが、高速発声による連続攻撃こそが恐ろしいのだ。

 レイナやユフルだときついかも知れないが、俺ならこのくらいの攻撃は何でもない。

「どうした? こんな攻撃じゃ俺が倒せないのは知っているはずだよな?」

 わざと挑発しつつ、少しずつユフルたちから離れる。

 出来るだけ一対一に持ち込みたい。

「今度はこっちから行くぞ? “バースト・ファイア”!」

 バースト・ファイアを放つのと、エルリスが後ろに避けながらガード・シールドを張るのは、ほぼ同じだった。

 エルリスのいたところに炎が現れると爆発、炎上する。

 ガード・シールドを張って後ろに下がったエルリスはさらに下がりながら仕掛けてくる。

 水と電撃、そして炎の魔法を放ってきた。

 魔法自体は何でもない魔法だが、水と電撃に炎が加わることで一瞬にして爆発が起こる。

 俺はガード・シールドを前方に多重展開しながらその爆風の中を突っ込んだ。

 爆風の先に、笑顔で迎えるエルリスがいた。

 計算通りという笑みだ。

「さすがぁですねぇ! でもぉ、突っ込んでくるのもぉ読んでぇましたわよぉ!」

 爆風を抜けた先に百は下らない数の炎の弾が放たれていた。

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