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俺と女傑と可憐な華と  作者: Kazuya2009
第1部・4.可憐な華は毒を制す
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可憐な華は毒を制す・6

 王都までは何事無く戻って来れた。

 リリナにはクレアを除いた皆と兵舎の方へ向かうよう指示を出した。

 もしナーシャが兵舎にいれば事情を話して貰うが、基本的にすぐにでも動けるように準備をするように言ってある。

 俺とクレアはリムルの所へと向かった。

 宮中の中は特別な動きはない。廊下ですれ違う兵士も俺を見て、普通に敬礼する程度だ。つまりまだ何も事は起きていない事が分かる。

 女王陛下の執務室に到着すると、ノックをした。

 部屋のノックを二回とワンテンポ遅れて一回行う。いつものノックだ。

 一瞬が間が置き、ドアが開いた。

「オルビス隊長!? どうなさったんですか!?」

 出てきたのはナーシャだった。

 俺を驚いた表情で見る。それは当たり前だろう。本来なら北西部国境警備大隊にいるはずなのだから。

「緊急事態で戻ってきた。入るぞ」

 俺とクレアが中に入ると、リムルが神妙な顔で俺たちを見ていた。

「オルビス。貴方がここにいるっていう事は何かあったのね?」

「キーマス伯爵の最初の報告が来たんだがな?」

 事情を話し始めると、リムルの顔が徐々に難しいものに変わっていく。

 無理もない。黒だと思っていた相手が白だというのだ。

 ナーシャは驚いた表情で聞いていたのだが、リムルは表情こそ難しそうにしていたが冷静だった。

 更にリムルから想定外の言葉を放つ。

「やっぱりなのね」

 想定していたのか?

 どういう事だ? キーマス伯爵が反乱分子じゃないかという事じゃなかったのか?

「リムル、説明してくれるんだろうな?」

「ええ。私自身で各貴族の評判を集めているのは知ってるわね?」

「ああ」

 リムルは自分で、と言っても一応信頼できる筋から情報を集めているのだ。

 だからこそ隠密行動などを取らせられるようにスカーレット隊の役目も変えたくらいだ。

 俺はてっきり、評判を集めた結果でキーマス伯爵を捕縛するつもりだと思っていたのだが。

「実はキーマス伯爵については、女癖が悪い以外は悪い情報はなかったのよ。だけど、ここ半年の情報がどうも反乱でもするんじゃないかって思うような報告ばかりが上がってきたの。でも、急に態度を変えたり反旗を翻すにしても不自然でしょ?」

 確かにリムルの言うとおりだ。

 俺とクレアが聞いた話は、事前にリムルから聞かされた情報の真逆だった。

 反乱側にさえ話し合いをしに行っていたくらいの人間が、いきなり国に反旗を翻すというのは不自然だ。

 事前情報が悪い情報を与えられた俺たちだからこそ、尚更違和感を覚えたわけだ。

「じゃあ、リムルは知ってて俺たちをキーマス伯爵のところへ行かせたのか?」

「真意を確かめるためにね。本当なら対応する必要があるし、違うなら情報元を追及する必要があるわ」

「なるほどな。で、情報の出どころは?」

「ノラスティス公爵よ」

「なんだって!?」

 ノラスティス公爵と言えば、アルストム王国の重鎮中の重鎮。

 代々王国に仕えて、アルストム王国の政治も担っているのだ。

 温厚な性格で反国王派、国王派問わず信望を集めている。

 リムルも信頼する貴族の一人なのだが。

「まさか、ノラスティス公爵が出どころとはな」

「隊長、発言していい?」

 黙って聞いていたクレアが俺の裾を引っ張って俺に尋ねる。

 クレアは頭が切れるし何か感づいているのかもな。

「リムル。クレアが意見があるみたいなんだが」

「いいわ。話して」

「ノラスティス公爵が反乱を考えている可能性がある」

 クレアの発言はある意味で予想通りだった。それはリムルもそのようで頷く。

「わたしもそれは考えたわ。確証が持てないから動かなかったのだけれど……」

「ノラスティス公爵はどうされるのですか?」

 今度はナーシャが質問をする。

 最もな質問だ。

 リムルもこれには困っているようだ。

 正直、相手が大きすぎる節がある。場合によっては対立する恐れがあるのだから。

「もうこれで調査の必要はないだろうな。クレア、先に戻ってリリナ達に待機を伝えてくれ」

「分かった」

 クレアは一礼をすると部屋から出て行った。

「リムル、一つ嫌な予感がするから俺だけ向こうに戻ろうと思う」

「分かったわ」

「ナーシャ」

「はい!」

「俺が戻る間、リムルの周辺の警備強化と、ノラスティス公爵の動きを調べてくれ」

「分かりました!」

 もしかしたらノラスティス公爵も嵌められているんじゃないか?

 そう考えたがさすがに確証がなかった。

 ただノラスティス公爵が黒幕でなくても、まだこの問題は解決していないのだけは確かだ。

 スカーレット隊が分裂している今、何かを仕掛けて来てもおかしくはない。

 もう一波乱ありそうだと俺は感じていた。

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