華の主と可憐な華たち・4
今日は親睦会代わりに、第二分隊に対して訓練を付けるという事でスカーレット訓練場へやって来ていた。
俺はハンデとして絶対防御系の魔法と魔法の同時展開なしの条件を付ける。
訓練自体は第二分隊の隊員と一対一の模擬戦形式で俺が彼女らの批評を行うわけだ。
模擬戦の先陣は言うまでもなく、分隊長のモニカである。
赤いショートヘア、女性としての完成された色気を放つ。街中で会えば声を掛けたくなる魅力を持っていた。
スカーレット隊の訓練着は本来、訓練するために丈夫でかつ戦闘に特化しており体にフィットし動きやすい。上から胸当てを付けているとはいえ魅力的なプロポーションを惜しげもなくさらしていた。
モニカはニコニコとしながらダガーを二本腰にさして合図を待つ。
「いつでもいいぞ」
対する俺も短剣を二本を抜くと構えを取った。
「それじゃ、遠慮なく行くわ」
笑顔のまま、地を蹴るとモニカは一気に俺へと迫る。
一直線に来たと思ったら直前で俺の右側に回り込む。
良いフェイントだった。俺もこのまま突進してくるのではと思ったくらいだったからだ。
フェイントを付けて斬りかかって来る。
俺が剣で受けようとした瞬間に再びモニカはさらに右側に回り込むと、もう片方のダガーで俺の首筋を狙ってきた。
確実に俺が剣で受けるの想定しての動きとしか言えない。
もちろん黙って受ける訳もなく。
「ガード・シールド」
首筋にだけ光の盾が現れ獲物を狙う牙から守って見せた。
「並の相手なら今ので終わってる。大した腕だな」
「そういう隊長も平気で防いじゃうんじゃ、嫌みにしか聞こえないわよ?」
「批評しろといったのは君達だぞ?」
「それもそうね」
ふふと笑いながら、モニカのダガーは俺の腹部に襲い掛かる。もっとも警戒はしていた。彼女の手を掴むと捻り挙げて、その場に押さえつける。
「油断も隙もあったもんじゃないな」
「女の子を押さえ付けて言う言葉? でも、優しくしてくれるならこのままわたし、何されてもいいわ」
さりげなくとんでもない事を口にするモニカの頭を叩きながら、年下もいるんだからやめろと言いつつ俺は小さくため息を付くのだった。
しかしモニカの戦い方はそのまま暗殺任務に向くことがわかった。女好きな貴族などを始末するときには彼女の力は非常に役に立つ。
その後、他の隊員達とも手合わせをし終わると批評に入る。
目の前には早く批評をもらいたいのか、皆がうずうずしているように見えた。
「まず、モニカだな。動きは申し分ない。また平静を装い、殺気も出さずに攻撃出来る君は混戦時や移動中の暗殺に向く。はっきり言って純粋な殺しなら君はスカーレット隊で右に出るものはいないだろう」
モニカは笑顔のまま頷いて答える。
正直、警戒心を最大にしてなければやられていたのは俺だ。
「次にユフル」
「わたしですね」
嬉々として返事をしたのはユフル・ガスタンド。
モニカ程ではないが、こちらも女性としての魅力が際立つ。ダークブラウンのセミロングは毛先も整い綺麗である。風に揺れる彼女の髪は一枚の絵画になりそうなくらいだ。
「君の魔法と体術を組み合わせたスペル・アーツは見事なものだ。瞬発力はモニカに負けじ劣らず。手足を魔力強化することで素手で得物と渡り合える君は護衛に向く。剣を構えるなど動作が不要な分、奇襲から守るのに向くだろう」
「ありがとうございます! 隊長はしっかり見ていてくれて嬉しいです!」
モニカとはまた違った笑顔の魅力で好感が持てる子だと感じた。この好感は護衛としての信頼感も得やすい。
批評は続いていく。