華の主と可憐な華たち・3
食堂には第一分隊の隊員、計五名が談笑しながら待っていた。
各々私服でいたり、制服だったりと色があるようだ。
俺が入ってくるのを見るなり皆、起立して敬礼をする。
隊員たち一人一人も本当にしっかりとした部隊だった。正直俺には勿体ないくらいである。
「皆、楽にしてくれ。前に言った通り、今日は無礼講だ。ざっくばらんに話したいことを話してほしい」
セルシアもそうだったように、皆困惑そうだ。
皆がセルシアを見て、セルシアが頷くとようやく納得したようだった。
「じゃあ、隊長。いきなり質問いいですかー」
いきなり質問は良いが、いきなり砕けた雰囲気になるのはトルファ。
明るく陽気で第一分隊のムードメーカだ。
トルファは確か、平民の出なのだが住んでいた村が野党に襲われ彼女自身は奴隷に。
レイナに保護されて、以降スカーレット隊で面倒を見ていたら彼女の希望もあり隊員になったそうだ。
「トルファか。なんでもいいぞ」
「隊長は、女王陛下と恋仲って本当ですか?」
「……。っておい! 本当にいきなりだな!」
「だってなんでも良いって隊長が言ったんですよ~」
にやけながら退路を塞ぎに来るか。いい度胸だトルファは。
まあ確かになんでもと言ったから答えないわけにもいかない。
この質問自体はいつかは来ると予想はしていたのだ。
ナーシャに説明する必要もあったからその時にしたい気分もあるのだが。まあ、いい。
「他言無用で頼むぞ? 俺とリムルは恋人同士であっている」
黄色い歓声が食堂内を包み込んだ。
だがそれだけじゃない。中には畏怖とも呼べるような視線を俺に向けている人間もいる。
「という事は、次期国王陛下でしょうか」
畏怖の視線を送っていたココル・ユートニスが恐る恐る質問してきた。
金髪のショートカット。小さく可愛らしい小動物を思わせるような子だ。まだ十五歳で、トルファより一つ下だ。一応年齢制限がないスカーレット隊だが、実質彼女が最年少だろう。
ココルの発言で黄色い歓声は一気に静まった。
「そこについては何とも言えない。確かに結婚となれば国王という可能性もゼロではないが、俺は国王なんてごめんだ。結婚してもリムルに女王として君臨してもらいたいと思ってるんだ」
「なんで国王になりたくないの?」
黒のセミロングの先をいじりながらアネス・ルサージは質問をしてきた。
彼女の家系、ルサージは国内では屈指の弓の名家。
最初の演習で俺に矢を放ったのも彼女だ。
「アネスは女王になってみたいか?」
「あたしは嫌ね。さすがに女王陛下って器じゃないもの」
間髪入れずに返答をするアネス。なかなかに反応が早い。
「俺も同じだよ」
「納得」
「あの隊長。その……。女王陛下とは寝たんですか?」
これまたストレートな質問をしてくるのは顔を真っ赤にするメル・シュノアール。
おさげが可愛らしく少しおどおどした子だ。
質問は大胆だがこればかりは答えるわけには行かない。
「悪いが、それは女王陛下の許可なく言えないな」
「残念ですが、仕方ないですね」
潔く引いてくれて助かる。
しかし、寝たかどうかが聞けないことに気を落とされるのは複雑な気分だ。
「まあ。女王陛下のことは答えられないこともある。そこは察してくれ」
その後は俺とリムルの幼い頃やリムルのどこを好きになったのかなどの質問攻めに合いつつも、皆と結構打ち解けることが出来たのであった。