熾烈な戦いの果てに・1
プロットなしの行き当たりばったりストーリーです。
ある程度、考えはありますがどうなるかは作者の私さえ知りません。
赤く愛しいスカーレット。
可憐でかわいらしいこの花を冠した部隊があった。
戦場に舞う華・女性だけで構成されたこの部隊は味方からは戦場の華と、敵からは魔女と恐れられる強さを持っていた。
大陸屈指の戦闘能力を誇るスカーレット隊には、男はいない。
決して彼女らに触れることは許されず、彼女らも引退するまで男と交わることは公式の場と戦場以外禁じられていた。
だから、その波乱を予想できたものは誰もいなかった。
アルストム王国・王国兵団、団長室。
俺、オルビス・スティングレーは団長であり友人でもあるザイン・ティルトーナと向かい合っていた。
ここに呼ばれた理由、それはザインからの相談ということだったのだが。
「俺の耳が狂ってないなら、スカーレット隊の隊長を俺にやれといったのか?」
「ああ。そうだ。お前にしか頼めない」
「なんで、俺なんだ」
ため息をつきながら渡された資料に目を落とす。
スカーレット隊。
王国兵団でも女性だけで構成され、団長と副団長以外の男性が兵舎に入ることさえ許されない場所だ。
女性寮当然、兵舎にさえ男性が入れない非常に厳しい部隊だ。
王国兵団の女性兵なら誰でも憧れる場所で、隊長さえ女性なのだが。
「兵団での方針が変わったからだ。
五百年続いて来た女性だけの部隊だから当然、反対意見も多かったのだが」
ザインが珍しくため息をつく。
まあ俺の前だけだが、それでもこいつがため息をつくときは大抵、碌なことじゃない。
「女王陛下か?」
「ああ、陛下の方針だ」
その言葉を聞いて俺も盛大にため息をついた。
「あのお転婆娘は、女王になってもお転婆か」
実は女王陛下、リムル・アルストムは俺たちの幼馴染なのだ。
ザインのティルトーナ家は代々王国に仕えてきた名家。
そして俺のスティングレー家は代々王国兵団の参謀にして王国屈指の魔導士の家系だ。
俺の父親がリムルの魔法の師で、ザインの父親が剣と体術の師。
ついでにリムルと同い年の俺とザインが一緒に訓練相手だったのだ。
だから昔から馴染み深く、なおかつ男二人が友人だったからかなのか、性格なのか、とてもお転婆だった。
しかも、生きるのに男も女も平等だというのがリムルの考え方。
代々王国の女児を護衛・教育してきたスカーレット隊すら手を焼かせ、なおかつ女性らしくという言葉に人一倍反感を持っていたのだ。
「仕方ないだろう。あのリムルだ。男性優位というのは当然嫌うが、だからと言って女性を特別扱いするのも嫌う性格だからな」
お手上げたといった風に言うザイル。
「で、なんで俺なんだ?」
「スカーレット隊の隊長が一つ条件を付けてきた」
「条件?」
条件と聞いて俺は本当に嫌な予感しかしなかった。
「ああ、団長と副団長以外で彼女に勝てる男性をよこせとのことだ」
「ということは?」
「スカーレット隊の隊長になるために、彼女と決闘をしてもらいたい」
やはり碌なことではなかった。
スカーレット隊の隊長、レイナは男嫌いで有名な女性だ。
しかも訓練で相手の腕の一本も折る程に気性が激しく、しかし可憐さも備え女性らしさも忘れない性格。
その強さはスカーレット隊歴代最強とさえ言われる程だった。
「決闘ね。俺を指名して来た理由は誰もその決闘を受けたがらないからか」
「当たり前だ。この決闘はどちらかが戦闘不能になるまでだからな」
腕を折られるだけならいいが、男として使い物にならなくなる恐れさえあると言うことか。
「戦闘不能ね。そう聞いたら誰もやりたがらないだろうさ。俺もだけどな」
「ああ、お前にしか頼めない。レイナに勝てそうな男もお前以外俺も考えられないしな」
「ちなみに断ったら?」
断るつもりはなかったが念のために聞いてみた。
しかし聞くんじゃなかったと思った。
「リムルがお前が万一、断るようなら今度こそ婿にすると言っていたそうだ」
「なんでそうなるんだよ」
頭を抱えながらそう言うと、ザイルもため息をつきながら言ってきた。
「俺とお前くらいだ。彼女と対等に話せるのはな。で、俺はすでに結婚してる」
「独身だから俺が選ばれたということか」
ああ、と答えたザイルが本当に申し訳なさそうに言う。
本当に断れないなと俺は思った。
だが俺は知らなかった。
この決闘がある二つの理由で仕組まれていたことだったことに。