四文字 2
ある日の夜テレビを見てたら横でスマホをいじってたねぇちゃんが
「最近敵が強くってさ…攻撃があんまり効かないんだよね」って呟いた。
俺は若手お笑い芸人のつまんねぇ芸をみながら「それ、そろそろレベルアップするんじゃねぇ?」って答えたらねぇちゃんは「えっ!?するの!?あったかなレベルなんて…」って言いながらうーん、ってうなってた。ねぇちゃんは昔からゲームが苦手だ。
「強い武器とか手にいれてないんじゃねぇ?」というとねぇちゃんは驚きながら「武器も変えられるの?!」って言ってた。
フツー変えられるだろ。
何のゲームしてんのか知らねぇけど苦手なんだったら説明くらい読んでからやればいいのにって俺はいつも思う。
賑やかなテレビの中で芸人がボコッ!!っいいながら筋肉が膨れてるふりをしていた。「ほら、こいつだってレベルアップしてんじゃん」って指差して言ったら「筋肉はいらないなぁ…」ってねぇちゃんは嫌そうな顔でイエーイって叫んでる芸人を見た。
数日後ねぇちゃんは「したよ!レベルアップ!!!」って叫びながら帰ってきた。
ねぇちゃん、歩きスマホはしない方がいいぞ。
夏休みの終わりにねぇちゃんと縁側でアイス食ってたら「なんか、悪者だと思ってたのに悪者じゃなかったんだよね…なんであんなことしてるのかな…」って呟いてた。
「そういやつって悪者の親玉が父親だったりするんだよな」って俺がいうと「えっ!そんなことあるの!?」ってねぇちゃんは驚いてた。なんで驚くんだよ、ど定番だろ。
「ほ、ほかには?」って食いついてくるねぇちゃんに「生き別れた兄とか、悪者に体のっとられた母親とかも定番だよな」っていったら「あーーー!!!」っていって叫んで部屋にもどっていった。
ねぇちゃんの声でコオロギが鳴くのをやめたことに俺はなにより驚いた。
後日ねぇちゃんは「あんたの読み当たってたよ!」ってサムズアップしてきた。「でも、まだなんか裏がありそうなんだよね。」っていうから「一番悪いやつが鏡の奥にいたりすんだよな」って答えといた。ねぇちゃんは、そうかなぁ?って首をひねってた。
そういうもんなんだよ。
文化祭が終わった後の休みの日、のんびりと異議あり!!って叫ぶゲームをやっていたら!ねぇちゃんが「なんか謎がとけそうで解けないんだよね」って呟いた。「何か見落としてるみたいな…うーん」って唸るねぇちゃんに「案外そういうのって一番近くにいるやつがしってたりするんだよな」って適当に答えたら、ねぇちゃんは「えっ…じゃあ、あんた本当は何かしってんじゃないの!?」って俺の襟首を掴んできた。
ちげぇよ。
午後にねぇちゃんの部屋の前を通ったら「あんたが知ってることはわかってんのよ!さあ、洗いざらい全部吐きなさいよっ!」って言葉が聞こえてきた。気になって思わず開いてた襖の隙間からのぞいてみた。
ねぇちゃんはパステルカラーの猫のぬいぐるみに向かって叫んでた。
なんだ、練習か。
12月に入る前にねぇちゃんが「謎は解けたけど敵が強すぎる!!勝てる気がしない!!!」ってベッドに寝転んで雑誌を読んでる俺に叫んできた。
「武器が新しくなるんだろ?」って答えたら「ええ?それは夏前のことでしょ?ちゃんと考えてよ」って顰めっ面でいうから俺は、雑誌のクリスマス限定アイテムのページをねぇちゃんに向けて「クリスマス商戦だろ」って言っといた。
ねぇちゃんは「せちがらい世の中ね…」って遠い目をしていた。
クリスマスのあとにねぇちゃんの部屋に畳んだ洗濯物を持っていったら、机の上にファンシーなピンクと白のジュエリーケースが置いてあった。
誰からのプレゼントか知らねえけど趣味悪すぎだろ。思わず開けてみたら中にはこれまたチープなチャームがざらざらと入っていた。
いくらなんでもマジ趣味悪すぎだろ。