サプライズパーティー
来週のボクの誕生日を祝うためのサプライズパーティーが開かれるらしい。
たまたま耳にしただけなので嘘かとも思ったが意識して周りを見ていると、その日の約束を一方的に反故にされたり、友達全員がせわしなく動き回っていたり、ボクをどこか誘導的に行動させたりしているのがよくわかった。
そして誕生日当日の夕方、友達の誘導に乗せられる自然な形で寮の自分の部屋でボクは待たされることになった。
適当に時間をつぶしていると、入り口の扉がノックされた。
準備ができたということだろう。
「開いてるよー」
というボクの返事の途中で部屋の扉が激しく蹴り開けられた。
大きな音を立てて扉が壁へとぶつかる。
間髪いれずに黒い目だし帽をかぶった三人の男が飛び込んできた。
三人は一直線にボクへ向かってくる。
ボクは驚いたふうに三人を見ながら一切抵抗しなかった。
両手首を縛り、両足を縛り、猿轡をかませ、目隠しをする。
ボクを横倒しにして足からすっぽりと布袋で包み込んだ。
最後の仕上げにボクの頭の上にある布袋の口を縛った。
無駄のない連携が取れた動きだった。
――なるほど、こういうサプライズか。
ふたりの男がボクを担ぎ、もう一人が誘導しているのだと思われる。
真っ暗なので周りの様子は確認できない。
そうして、部屋を出て、寮を出て、車の後部座席へ放り込まれた。
ボクの扱いが乱暴すぎる気がしたが、猿轡のため文句を言うこともできない。
そんな不満を気にすることもなく四人を乗せた車は走り出した。
車を発進させて一時間以上たつが車内では音楽もかけず、誰一人なにも話さない。
――たいした徹底振りだ。
そんな感心もすぐに消え、あとには退屈だけが残った。
心地よくゆれる車内で睡魔に勝てず、そのまま眠り込んでしまった。
どれほどの時間が経ったかはわからない。
激しい振動で目が覚めた。悪路で車が大きく揺れているのだ。
揺れが収まったかと思うと、一分足らずで車が止まった。
車のドアが開けられ、足と頭を抱えられたボクはふたたび運び出された。
すこし歩いた先で、二、三度の振り子運動ののちに、ボクは乱暴に地面へ放り投げだされる。
男たちの立ち位置と投げ落とされた場所に落差があるように感じた。
多分だが、自分の周りに土が多くあることから、地面の掘られた穴に落とされたのだと思う。
穴の中にいるボクになにかが降りかかってくる。
土だろう。
ザクッジャッ、ザクッジャッ――
スコップで土をすくい、土をボクへかける。
その音だけがリズミカルに響いていた。
命の危険を感じさせ、怯え泣き喚くボクを完全に埋め、少ししたら掘り起こし、それでサプライズとでもいうのだろう。
男たちの期待にこたえるべく、ボクは喚きながら身をよじる。
わざとらしい抵抗もむなしく、完全に土へ埋められてしまった。
袋越しに自身にかかる土の重さを感じる。意外と重い、身動きひとつ取れない。
「イェーイ、サプラーイズ」
そう言う幾人もの人間の声が土の上から聞こえる。聞き覚えのある友達の声だ。
クラッカーの破裂音、友人たちの歩き回る振動、重低音を響かせるスピーカー、土の中へ手に取るように伝わってくる。
派手なパーティーが始まった。
そして、一時間以上が過ぎた。
ボクの上で盛大なサプライズパーティーはまだ続いている。