アキコさんと深夜くん
こちらは今までの話より少し前の時系列の話になります。
若干のホラー要素を入れる予定ですが、書いてる本人がビビりで、あの深夜くんを中心にした話なのでホラーはきっとクラッシュされます。
『ねえ、知ってる?』
『なにが?』
『空き教室のアキコさんの事!』
『ああ。それなら知ってるよ。うちの学校の七不思議だっけ。どこかの空き教室にいるらしいっていう、自殺した女の子の幽霊でしょ? それにしても、空き教室のアキコさんだなんて出来過ぎな名前だよね。で、アキコさんがどうしたの?』
『アキコさんね…………本当にいるらしいよ!』
「ここかあ」
深夜は立ち入り禁止と張り紙がされた教室の前で立ち止まる。彼は張り紙を一瞥したが、それをなかったことにして扉に手をかけ、横にスライドさせる。扉はなんの引っかかりもなく、スムーズに開いた。
「あれ? 開いちゃった。折角マスターキーパクって来たのになあ」
残念な事に、彼の問題発言に突っ込みを入れる者は傍にいなかった。
「まあいいや。お邪魔しまーす」
深夜は取り敢えず考える事を止め、教室の中に足を踏み入れる。
「へえ、意外と綺麗。これなら直ぐ使えるかな」
空き教室は深夜の言う通り、人の使っていた気配がかなり薄れているのにもかかわらず、かなり綺麗な状態だった。だが、寒すぎる。今の季節は春。外も春らしいぽかぽかと暖かい陽気だ。それなのに嫌な寒さが教室を支配している。しかし、深夜はそれに気付かない。
深夜は気付くべきだったのだ。この教室の寒さに。
そして彼は知るべきだったのだ。教室を立ち入り禁止にしている意味を。
深夜の死角にある教室の隅で黒いもやが蠢いた。




