安らぎ
「はい、不眠ちゃん私特製ホットミルクですよ」
不眠の目の前にホットミルクが入ったマグカップがコトリと置かれる。マグカップからはほかほかと湯気が立っている。
「ありがと」
不眠はホットミルクを一口飲む。蜂蜜でも入れてあるのか、仄かな甘さが口の中に広がる。
「美味しいですか?」
「うん。とっても美味しい」
「それはよかったのです」
ミルクは柔らかく微笑む。
「それにしてもさあ、もうすぐ冬休みだよねえ。皆なにか予定……あっ、コーヒーごめんね?」
深夜の口元が馬鹿にしたように歪められる。
「おい深夜……俺に予定がないって言いてえ……あっ…………」
額に青筋を立てたコーヒーだったが、頭の中に冬休みの予定を思い出そうとした途端、黙り込んでしまう。
「え、えっとコーヒーくん!! それでは皆で初詣に行きましょう!! 私もお正月は予定が無いのですよ」
そんなコーヒーの様子を流石に見かねたのか、ミルクがそう提案する。ミルクの優しさにコーヒーの目頭が少し熱くなる。
「ああ。行くか、初詣」
「不眠ちゃんは……あ」
不眠の顔を覗き込んだミルクはとても嬉しそうに微笑む。
「寝たか」
「はい」
不眠はいつの間にか寝ていた。
「今度は何徹目だったわけ?」
「四徹目だったのです」
「それであんだけ派手に動けてたのかよ……」
コーヒーが有り得ないといった顔で不眠を見る。だが、彼の目には確かに安心した色が映っていた。
「不眠ちゃん、おやすみなさい」
不眠の前の空になったマグカップを回収しながらミルクはそう囁いた。




